イギリス軍に納品された『レマニア』ミリタリーウォッチのそれぞれのモデルの見分け方
動画でイギリス軍に納品された『レマニアのクロノグラフ』の違いをご覧になる方はこちらから↓
レマニア ミリタリーウォッチのモデルの見分け方
レマニア社が、イギリス軍に向けて納品したモデルは全部でサードシリーズまであります。
共通点は、2時位置にプッシュボタンがあることと、全てのムーブメントは15CHT(Cal/2220)の堅牢で力強さを感じることのできるムーブメントが搭載されていることです。
しかし、これはぱっと見ではわからない部分であり、外観を見ただけではファーストからサードまでの違いを区別するのは、レマニアマニアくらいしかできないと思います。
ですので、今日のこの動画ではそんなファーストからサードまでのデザインの違いとレア度と共に解説して参ります。
ファーストだけの説明をしても、分かりにくいと思いますのでセカンドと比較をしながら見てみましょう。
レマニア ファーストとセカンドの違い
今左にあるのが、ファーストです。
右にあるのが、セカンドですね。
基本スペックも見てみましょう。
ファーストモデル
納品期間 約1940年〜
サイズ 38.5mm
セカンドモデルの特徴
納品期間 約1950年〜
サイズ 38mm
まずはファーストモデルの特徴ですが、ファーストはロゴとブロードアローの入ってないデザインだということです。
ブロードアローとは、矢印のマークのことで6時の位置に入ってるものですね。
これは、イギリス軍所有という意味になります。
文字盤は白(80年前の時計なので、ほとんどがアイボリーに変色しています)
また、6時位置の夜光塗料なのですが、数字の6の上に塗料が乗っかっています。
これはミスではなく、ファーストモデルの特徴ですね。
この夜光塗料はラジウムが使われています。
では、セカンドをみてみましょう。
セカンドになると、ロゴとブロードアローのマークが入ります。
また、文字盤の色がブラックに進化します。
夜光塗料も、ラジウムからトリチウムに交換されトリチウムを表す丸Tのマークが
LEMANIAのロゴの下に入ってきます。
ラジウムからトリチウムに交換されてるのは、放射能物質の量の違いです。
ラジウムの方が、放出量が多いためにシリーズ2からは、トリチウムに変更されたということですね。
では、裏蓋をみていきましょう。
レマニア イギリス軍に支給された軍事時計の裏蓋の刻印
レマニアのクロノグラフは、空軍と海軍、海軍の中の潜水艦乗務員に支給されました。
それぞれの刻印の意味を見ていきましょう。
空軍を表すものは、AMか6B/551
海軍を表すものは、HS↑9か0552
潜水艦乗務員を表すものは、0552/924-3312
になります。
H.Sブロードアローマーク9というのは、海軍で使用されていた古いコード「(Hydrographic Service)」ハイドログラフィック・サービス(海軍水路部という意味であり)その頭文字をとったものです。
AMはAir Militaryエアーミリタリー「空軍からの依頼の品」という意味でありその頭文字をとったものです。
この英文の頭文字コードは、イギリスがNATOに加盟したのと同時に途廃止され、それ以降はNATOコードで管理されていくことになります。
それが、6Bとか0552とかですね。
それではまた、ファーストとセカンドの裏蓋を見比べてみましょう。
どちらもスクリューバックですが、ファーストの方は側面を掴むタイプです。
セカンドになると、溝にスクリューオープナーを入れれるタイプになっております。
ここまでが『ファースト』と『セカンド』の比較になります。
レマニア セカンドモデルとサードモデルの違い
ここからは、セカンドとサードの比較をみていきましょう。
セカンドモデルの特徴
納品期間 約1950年〜
サイズ 38mm
サードモデルの特徴
納品期間 約1960年〜
サイズ 40mm
今左側にセカンドモデルがあり、右側にサードモデルがあります。
右側にサードモデルが映ってるんですがサードモデルは、アシンメトリーに代わりリューズガード、プッシャーガードが入ってます。
おそらく、実際に現場で使用していた隊員達からの要望で、故障が多いことからガードが搭載されたのではないかと推測しております。
文字盤を比較すると、セカンドは全てが同じ大きさの数字であったのに対して、サードになると12と6だけの数字が大きく表示され、他の数字は小さくなっておりまた視認性の向上に繋がっております。
LEMANIAのロゴも太字ロゴから、スタイリッシュな細字ロゴに変更され印刷技術が向上してるのが分かります。
また、ブロードアローのマークの下に『インカブロック』のロゴが追加で入るようになります。
サイズが2mm大きくなりましたが、ガードがついたことによるサイズアップのため、文字盤だけで見ればセカンドの方が大きいです。
裏蓋はセカンドからサードに移行する際には、大きな変更点は見当たりませんのでここでは割愛させて頂きます。
レマニア イギリス軍向け『空軍・海軍』と潜水艦乗務員の違い
ではここからは、空軍、海軍、潜水艦乗務員時計の見分け方について解説をして参ります。
空軍用、海軍用は先ほど説明した下記図をご覧頂き、それに当てはめれば分かります。
空軍を表すものは、AMと6B/551
海軍を表すものは、HS↑9と0552
ここで潜水艦乗務員用の時計が、空軍用と海軍用時計とどう違うのかをお話しします。
左にあるのが、空軍用ですが海軍用も裏蓋以外はほとんど同じだと考えてください。
右にあるのが、潜水艦乗務員用ですね。
空軍、海軍用の時計には丸Tのマークが入っており、トリチウムが使われています。
しかし、潜水艦乗務員用の時計には、それらはありません。
それは、潜水艦の中にある放射能検知器の誤作動を防ぐためなんですね。
ごくごく少量しか、放出されませんがやはり潜水艦の中は、シビアに管理されているんでしょうね。
そのため、空軍、海軍用のブラック文字盤の12時位置のLEMANIAのロゴの下に入ってる丸Tのマークもありません。
では次に潜水艦モデルの、セカンドとサードを比較してみましょう。
左がセカンドで、右がサードですね。
丸Tのマークはセカンドモデルにはないのですが、サードモデルをよ〜く見てみると、12時位置のLEMANIAのロゴの下に、白のペイントで丸Tのマークが上書きされてるのが見えると思います。
おそらくなのですが、プリントのデザインの段階で丸Tを消し忘れて、そのまま文字盤の方にも丸Tが入ったまま印刷されていって、どこかの段階でそれに気がついて消したのでしょうね。
このように潜水艦乗務員に向けては、夜光塗料を使わない代わりに、視認性を向上させるための白文字盤にブラックプリントという正反対の色を使い、コントラストを強めているのです。
生産期間は2年間 サードモデルの後継機
実はサードモデルには、後継機が存在します。
1975年と1976年だけしか製造されなかったので、なかなか見かけることがなく、そもそもその存在を知らない方もたくさんいると思うのですが、こんな感じで2プッシュ式に進化しているのです。
2プッシュ式は、レマニアからたくさん出されていますが、イギリス軍に納品されたものはこのモデルしか存在しません。
ルーツを辿ると、1970年代初頭、イギリス国防省(MoD)は、手首クロノグラフの標準仕様に大幅な変更を加え、そのことにより、2つのプッシャーを使用できるようにしました。
この改訂は、イギリス軍のコストの削減に成功しました。
この頃は戦争の気運が低く、比較的平和な時代だったため軍事費に割く予算を減らしたということですね。
このプログラムのごく一部として、MoDは軍用パイロットの時計の防衛基準を変更し、より安価なクロノグラフ製造を可能にしました。
これにより、レマニア以外の多くのメーカーがクロノグラフを提案し、バルジュー7733などのより手頃なムーブメントが作られることになったのです。
そのため、ハミルトン、CWC、プレシスタ、ニューマークがこれと同じ形の時計を作ったのですが、ロゴ名以外そっくりな時計が存在するのは、そのためだったんですね。
そして、1980年代になると当時スイスの時計ブランドを次々と廃業に追い込んだ、破竹の勢いがあったセイコーに、クオーツタイプの時計製造を依頼し、MoDは1997年までセイコーのクロノグラフを使用し始めました。
裏蓋の話
裏蓋の話なのですが、元々のコードを横線で打ち消して、その上に新しいコードを刻印しているものも散見されます。
元々、海軍用のが空軍用になったりその逆のパターンが存在するということですね。
ケースの設計は同じなので、その時の軍隊数に合わせ裏蓋を流用したということでしょうね。
イギリス軍に納品されたレマニアクロノグラフ気象ランキング
それでは最後に、イギリス軍に納品されたレマニア製クロノグラフランキング発表します。
今となっては、コレクターが手放さないのでほぼ全部高値で取引されてますが、それでも希少性が高い個体があります。
私の個人的なランキングですので、参考程度にお聞きください。
1位が一番入手困難モデルですね。
5位 セカンドモデル 空軍向け(6B)
4位 セカンドモデル 白文字版
3位 サードモデル 後継機
2位 セカンドモデル 潜水艦乗務員向け
1位 サードモデル 潜水艦乗務員向け
ランキングに微妙に違いがあるかもしれませんが、5〜1位のモデルは基本的にはあまり見かけることはないんじゃないかなぁって思いますね。
まとめ
今日はこういった感じで、レマニアがイギリス軍に納品してきたファーストからサードモデルまでを解説させて頂きました。
こうやって時計のシリーズを見るだけでも、軍隊がどのように分類されていたのかが分かるので、背景を知ることでより時計に愛着を持てますよね。
この動画が勉強になったという方は、是非ともチャンネル登録といいねをお願いいたします。
本日は最後までご視聴いただき、ありがとうございました。