クロノグラフ腕時計についている付属機能の紹介

コンパス針

エクセルシオール・パーク社は、役に立つ補助指針を腕時計に装備しようと研究を続けている中、すでにセカンドクラウンに装備されていた「ノースポインター」と呼ばれるものを再発見しました。これは24時間作動している針で、時間を表示するためのものではないけれども、屋外で方向探知機として使えるものでした。

 

図Z31のクロノグラフ腕時計ではOが通常の手動設定用クラウン、G´が小さなセカンド針F´をセットするためのクラウン、そしてNの文字が書かれている矢印Eが北を表すインジケーターです。この時計は時針を太陽に向けると、指針が北を指すようになっていました。時計を使って方向を決定するという方法は新しくありません。コンパス針がなくても、時針を太陽に向けて、時針と文字盤の12時の角度を半分に分けることによってできる線が南を指すので、その反対が北であることがわかるのです。指針やノースポインターは、この角度を半分にするという仕事を自動的にしてくれるのです。一つ大事なことは、正午12時にはノースポインターが数字の6の上に来ることを確かめておく必要があります。

 

 

指針そのものは、エクセルシオール・パーク社が初めて発明したものではありませんでした。1891年にベルン市のフィリップ・レインハードが、 懐中時計のための「コンパス針」の特許を取得しています。これは上記と同じ目的のためのものでした。図Z32は特許書類から引用したものですが、太陽は筆者によって追加されています。

腕時計のコンパス

曇りの日にはノースポインターを太陽に合わせることができないため、上記の方法による方向確認はできません。そのような時には本物のコンパスが必要でした。懐中時計にはしばしば小さなコンパスがついていたので(これはあまりよく機能しないことが多かったのですが)、この手法が腕時計にも採用されました。スイスのベルン市近郊にあるトラメラン市の会社、チャールズ・アルバート・ニコレット社が1937年に、腕時計用のコンパスの特許を取得しました。コンパスは文字盤に配置されていたため(図fig1とfig2参照)、コンパスの針が磁力の影響を受けないように、すべてのスチール製部品を非磁性のものにしなくてはいけませんでした。

 

これは、コンパスの上を通過する時針・分針に対しても同じでした。図fig2は、コンパスがどのように実装されているかをわかりやすくした断面図です。8番のコンパス針が、その上を覆う文字盤1と擦れあわないよう、腕時計をきっちり水平に保持する必要がありました。コンパス針は9番のつまみの上に乗っており、とても短いため位置がずれることはありませんでしたが、時計が水平の時には正しい位置からずれてしまうことがありました。傾かないようにするため、コンパス針の下には12番のつまみの上にフィットする骨組みのようなものがついており、文字盤1には丸い穴(7番)が開いていて、そこからコンパス針が見えるようになっていました。

カレンダー表示

フルカレンダー

通常の時刻表示以外では、カレンダー表示がおそらく最も役立つ時計の機能だと思われます。どんなタイプの時計にもカレンダー表示をつけることができます。クロノグラフ腕時計もまた、様々なタイプのカレンダーを装備しています。シンプルなものは、日付を示す針または窓が付いているだけでしたが、その後は曜日を表示するものも作られました。フルカレンダー付きクロノグラフでは日付、曜日、月が表示されます。文字盤上におけるこれらの表示は様々です。古いモデルでは、日付は文字盤の一番外側の目盛りに表示され、中心からの針によって表示されていました。曜日と月は、2つの小さな窓で表示されました。

 

図Z34はその典型的なサンプルです。文字盤上で、Gの針は日付を示し、Hの窓は曜日、Jの窓は月を示しています。このような時計には、カレンダー表示を調整するための小さなボタン(LとK)がケース上の様々な位置に付いています。

ムーンフェイズ

フルカレンダーを付けただけでは、すべてのニーズを満たすことはできませんでした。さらなる実用性を求めて追加されたのは、月の表示に基づくムーンフェイズでした。技術的にはシンプルで、正確さも十分でした。一般的に、ムーンフェイズは29.5日のサイクルに基づいており、ディスク上に2つの月と59の目盛りが必要でした。29日12時間44分2.9秒という実際の月の公転と腕時計によるムーンフェイズ表示との差は取るに足りないほど小さいものでした。ムーンフェイズのディスクは通常、12時間計のサブダイヤル上に切り抜きとして表示されました。図Z35のMは、月のサイクルの初めから終わりまでを象徴的かつ実際的に表示しています。ディスクは一般的に、専用の調節ボタン(K)がついています。

 

カレンダーとムーンフェイズの機能はクロノグラフ機構とは独立しており、フルカレンダーとムーンフェイズの組み合わせは図Z36のようなスプリット・セコンドクロノグラフなど、他の腕時計にも見ることができます。図Z36では右側のA、B、Oでクロノグラフを操作し、LとKのボタンでカレンダーとムーンフェイズを調節します。ケースのタイプによって、LやKのボタンは見えたり見えなかったりします。

 

永久カレンダー(パーペチュアル・カレンダー)

技術的に最も高いレベルに達したのは、永久カレンダー付きのクロノグラフでした。これはいくつかの有名なスイスの時計会社によって今日まで生産されています。それらの会社をすべて率いているのが、ジュネーブにあるパテック・フィリップ社です。この会社は1889年5月23日に懐中時計用の永久カレンダーの特許を取得し、その後に腕時計用のメカニズムを開発しました。永久カレンダーは、普通の腕時計にもクロノグラフ腕時計にも装備することができ、31日の月も30日の月も、うるう年のある2月も自動的に区別して表示する機能を持ちます。うるう年が表示されていなければ、その時計に永久カレンダーがついているかどうか知ることはできません。永久カレンダーにとっていわゆる「4年ホイール」は必要不可欠なものであり、4年分の月(48カ月)のサイクルを、高さの異なる歯車のステップによって切り替えます。これらのステップは、正確な日付表示を順番に作動させるレバーによって動かされます。近年、これらの永久カレンダー機能はいくつかの会社によって新たに開発されています。IWC社は装置を補正する必要がなく素早くセットができるメカニズムを開発しました。ムーンフェイズがコントロールされるため、補正の必要がないのです。