ロレックス デイトナ 2〜3代目までをまとめて解説 Ref.6262&6264&6263&6265
動画で2〜3代目のデイトナをご覧になる方はこちらから↓
2代目のロレックスデイトナは、かつて失敗作と見なされていましたが、現在では最も希少なヴィンテージ・ロレックス時計の一つであるだけでなく、ヴィンテージ市場でコレクターの多いリファレンスの1つになっています。
このモデルを簡潔に表すと、2代目デイトナは約一年間だけ生産された、過渡期のモデルと言えるでしょう。
オイスターケースのような、当時のロレックスの有名な特許技術を使ってる訳ではなく、2代目デイトナは豪華さと、古風なデザインのコンビネーションを生み出したのです。
しかし、このデイトナref.6262は、第3世代がすぐに誕生し並行して販売されていたために、あまり人気が出ずに売れなかったのでした。
その結果、このモデルはすぐに廃止され、より近代的で技術的に進んだ3世目代モデルに取って代わられることとなります。
この古典的な、2世代目デイトナ、そして同じ時期に誕生した革新技術を搭載させた3世代目デイトナに真っ先に飛び込む前に、まず私のこの2〜3世代の基本情報を視聴頂けたらと思います。
2代目デイトナとは?
ロレックスRef.6262デイトナとは
ヴィンテージデイトナ年表
1963: ロレックス、クロノグラフコレクション「コスモグラフ」(後の「コスモグラフ・デイトナ」)を発表
1963-69: デイトナref. 6239 メタルベゼル
1965-69: デイトナref. 6241 ブラックアクリルベゼル
1965-69: デイトナ ref. 6240 ねじ込み式クロノグラフプッシャーとブラックベゼル
1970-71: デイトナ ref. 6262 ポンプ・クロノグラフ・プッシャーとメタルベゼル
1970-72: デイトナ ref. 6264 ポンプ・クロノグラフ・プッシャーとブラックベゼル
1971-88: デイトナ ref. 6265 ねじ込み式クロノグラフプッシャーとメタルベゼル
1971-88: デイトナ Ref. 6263 ねじ込み式クロノグラフ・プッシャー・ブラックベゼル
ロレックスデイトナRef.6262の基本情報
おおよその生産年: 1969 - 1970年の1年間だけ
ケース径:37mm
ケース素材: ステンレススチール、14Kゴールド、または18Kゴールド
-ベゼル
:ステンレスベゼル Ref.6262
:プラベゼル Ref.6264
ダイヤルレイアウト:クロノグラフのセンターハンド、3つのサブダイヤル。
3時位置の30分積算計、6時位置の12時間積算計、9時位置のスモセコ。
風防:アクリルクリスタル
キャリバー: Valjoux 727 手巻きムーブメント
第2世代にあたる、デイトナは、ロレックスデイトナクロノグラフの中で最後にポンププッシャー式を採用したモデルです。
このポンプ式プッシャーは、後のデイトナではより防水性の高いねじ込み式プッシャーに置き換えられることになります。
2世代目デイトナの大半はステンレススチール製であったが、ロレックスはイエローゴールド製も数本製造しました。
Ref.6262(シリアルナンバー:2.241.000~2.589.000)のうち、イエローゴールドは約30本しか製造されなかったそうなので激レアになりますよね。
文字盤はデイトナ特有の、メイン文字盤の色と対照的な色の、3つのサブダイヤルを備えています。
例えば、ステンレスモデルではシルバーダイヤルにブラックのサブダイヤル、ブラックダイヤルにシルバーのサブダイヤルが採用されています。
一方、ゴールドモデルでは、ブラックダイヤルにゴールドカラーのサブダイヤル、またはゴールドカラーのダイヤルにブラックのサブダイヤルが一般的です。
このデイトナも製造から50年近く経ってるので、元の黒のサブダイヤルは優しいブラウンに代わり、時間が作り出した芸術へと進化しています。
ロレックスはまた、エキゾチックダイヤル、また "ポールニューマン "ダイヤルとして知られている、いくつかのデイトナ腕時計も製造しており意外にも、全体の製造本数に対してのポールニューマンモデルは多いと言われています。
ポール・ニューマンモデルの詳細については、こちらの動画で詳しく解説しておりますので、興味のある方はご覧ください↓
デイトナ Ref.6240の存在
ロレックスは当初、現在では有名なクロノグラフコレクションを「コスモグラフ」と名付けましたが、すぐにモーターレースとの関連性を強調するために「デイトナ」という名称を加えました。
これはおそらく、当時NASAが進めていたアポロ計画に採用させるために、宇宙を連想させるコスモを入れたのだと思われます。
しかし、実際にはご存知の通りオメガのスピードマスターが採用されたために、その次にブームになっていたモータースポーツを連想させるモデル名を追加したのだと思われます。
1963年に発売された最初のモデルは、37mmケース、タキメーターベゼル、3つのサブダイヤル、手巻き式バルジューCal.72Bを搭載したRef.6239でした。
2年後の1965年には、ベゼルがブラックのプラスチック製で作られた以外は同一のスペックを持つ、リファレンス6241がコレクションに追加されました。
そして実は、同年にまた別の全く新しいデイトナが作られており、当初はプロトタイプとして作られたみたいですが、それは一般に公開されることになりました。
この今となってはプロトタイプと呼ばれるデイトナは、Ref.6240の番号が与えられ3世代目を彷彿とさせるものがあります。
では、これらの時計を見てみましょう。
画像では、1.5世代と表現していますがこのRef.6940は第3世代から採用されることとなる、オイスターケースとプッシャー位置のねじ込み式ボタンが採用されています。
この改良により、6240はより優れた防水性を誇ることになり、かなり先進的な機能を持つようになりました。
そして、このRef.6240はRef.6239とRef.6241の生産期間中も並行して生産されていました。
ですが、前述した通りこれは初代の次のモデルであり2代目はというと、またポンプ式プッシャーと通常のケースに戻ることになるのです。
また、2代目が終了したのと同時にこのRef.6940も生産終了となり、このモデルは第3世代のプロトタイプと呼ばれているのです。
ここからは私の予測なのですが、おそらくこのプロトタイプを出して市場の反応を見たのだと思います。
というのも、ねじ込み式プッシャーを世界で初めて腕時計に搭載させたのは、ロレックス社であり、デザインもこれまでのものと大きく違います。
よって、メインラインはポンプ式、旧型ケースを据え置きRef.6940を投入することで、市場動向を伺いながら次の第3世代をどっちで攻めていくのかを考えていたのではないかと想像しています。
そして、この時の市場の反応がRef.6940の方が良かったことで、第一世代の延長線上にあった第2世代の生産を終了させ、第3世代から正式にねじ込み式プッシャーを採用させたモデルを投入したのではないでしょうか。
つまり、デイトナのRef.6262とRef.6940デイトナはお互いを補完しあい、その後のオイスターデイトナへの道を開く『過渡期のモデル』だったと言っていいでしょう。
50年以上経った今、第2世代デイトナは、そのデザインと数の希少性から、コレクターの間でかなり高い需要があります。
現在ではロレックスの「ベストヒット」のひとつとされ、定期的に市場に出てきますが、そのコンディションは様々であり価格は大体400〜700万円程度に収まっているみたいです。
6262は短命に終わりましたが、ロレックスの歴史の一部を切り取ったものであり、多くのコレクターはその一部を所有することを心の底から望んでいるのです。
では次に、大型進化を果たした3代目を見ていきましょう。
3代目デイトナの基礎知識
では、ここからは3代目デイトナについて、2代目と違うところだけスペックを解説していきます。
- リファレンス番号
:ステンレスベゼル Ref.6263
:プラベゼル Ref.6265
- 生産年: 1971年~1987年(概算)
- ケースサイズ:37mm
- 素材展開: ステンレススチール、14Kイエローゴールド、18Kイエローゴールド
- 文字盤: ブラック、シルバー、シャンパン、エキゾチック(ポール・ニューマン)、ルミナスアワーマーカー付き
- 防水性: 前期は50m / 165フィート 後期は100m / 330フィート
- ムーブメント:引き続きバルジュー社製Cal.727
さらに、ref.6263の耐水性が向上していることを示すために3代目からは、文字盤に "Oyster "の文字が入るようになります。
3代目デイトナのダイヤル
15年以上の製造期間中、3代目には様々な文字盤が用意されていました。
ステンレススチール製は、ブラックまたはシルバーの文字盤、ゴールド製はブラックまたはシャンパンの文字盤が準備されていました。
そして、3代目の特筆すべき点はダイヤルの『シグマ・ダイヤル』でしょう。
このバリエーションには、ダイヤルの一番下、6時位置のアワーマーカーの下に配置された「T SWISS MADE T」のサインを挟んで、ギリシャ文字のシグマの小文字(σ)が2つあります。
シグマが入る時計は、インデックスにホワイトゴールドまたはイエローゴールドのなどの、貴金属が使用されていることを示しています。
このシグマ・ダイヤルは、デイトナを含む、1970年代初頭から後期までのロレックスの様々なモデルで見ることができます。
一見すると見逃しがちなサインですが、この小さなシグマ・マークは、非常に希少であるため、ヴィンテージ市場ではプレミアがついているのです。
'ビッグレッド'ダイヤル
ロレックス・デイトナref.6263の初期バージョン(初期に生産されたもの。おおよそ1970〜1975年頃)のものには、現在では有名なデイトナのサインはなく、「Cosmograph」の名前のみが記されていました。
ちなみに、初代も2代目もDAYTONAの文字は入っていました。
入ってない個体も存在しますが、基本的には12時位置か6時位置に入ってます。
しかし、1975年頃、ロレックスは3代目であるRef.6263と6265の大半にデイトナの名称を入れるようになりました。
それらの文字盤には、「DAYTONA」の文字が6時位置のサブダイヤルの上に、アーチ状に配置されています。
こちらの画像をご覧ください↓
「ビッグレッド・デイトナ」と「スモールレッド・デイトナ」は、その名の通り、文字盤の赤い「デイトナ」の印刷の太さ(大きさ)が異なることから、そのように分類されています。
さらに、その6時位置のサブダイヤルに対して、デイトナの文字が配置される位置にも若干の違いがあります。
いわゆるビッグレッドは、他のバージョンに比べ、デイトナの印字がサブダイヤルから離れた位置にあるのです。
生産期間がかなり長いので、他にもロゴの配置など様々な違いがあるのですが、ここでは主要な部分だけ解説させて頂きました。
そんな様々ある文字盤でも、レッドデイトナとシグママークの両方を持つビッグレッド・シグマ・デイトナ・ダイヤルは、3代目デイトナコレクターの欲しいものリストの上位に入ることが多く、特に希少で切望されている貴重なバリエーションなのです。
3代目の防水性の実力
これらの初期バージョンは、ツインロック式のねじ込み式でしたが、後期バージョンではより密閉性の高い、トリプロック式のねじ込み式リューズを採用しています。
では一緒に画像を見てみましょう。
左側がツインロック700で、右側がトリプロック703になります。
まずリューズの表面ですが、ツインロックにはクラウンのロゴしか存在しません。
ケース側の受けですが、ねじ山が切ってありゴムパッキンはありません。
ではトリプロックなのですが、こちらはリューズの表面にはクラウンのマークの下に、3つのドットが入っています。
ケース側の受けは、ゴムパッキンが入る溝が掘られそこにパッキンが収まる構造になっています。
この700と703の間に702が存在するのですが、これは簡単に外見だけを解説すると、ケース側のねじ山にOリングを収める溝がなくねじ山だけが切ってあるものになります。
リューズは、703と同様に3つのドットがあります。
703の詳細な構造はこのようになっております。
ねじ込み式プッシャーと7mmと大型のねじ込みリューズの採用により、3代目の防水性は大幅に向上しました。
初期のものは50m(165フィート)程度で、後期のものは100m(330フィート)の防水性を達成し大きく評価されました。
3代目デイトナ ポール・ニューマンモデルが大人気の理由
最後に、デイトナが好きな人は3代目のポールニューマンに行き着きます。
簡単にポールニューマンを解説すると、ロレックスがかつて「エキゾチック」ダイヤルと呼んでいたもので、伝説のアメリカのハリウッドスターがイタリアの雑誌の表紙で着用したことから、今ではポールニューマンダイヤルとして一般に知られています。
このポール・ニューマン・ダイヤルは、標準的なデイトナ・ダイヤルとは異なる、いくつかの特徴的なデザインを備えています。
まず、アールデコ調の数字が3つのレジスターに施されています。
また、9時位置のサブダイヤルには、通常のデイトナ・ダイヤルの20、40、60ではなく、15、30、45、60の数字が配されています。
もっと詳細に違いを知りたい方は、こちらの動画をご覧ください↓
そして、3代目デイトナがなぜ最高傑作なのかと言いますと、3代目までしかポールニューマンモデルが生産されなかったことによって、3代目から搭載されたねじ込み式ボタンのポールニューマンモデルが、3代目しか存在しないからです。
4代目からは生産終了になりました。
コレクターは、ねじ込み式でありながらもポールニューマンモデルというところに、惹かれているのです。
ポール・ニューマン・デイトナの時計市場は、現在非常に好調で、価値は着実に上昇中です。
3代目ポールニューマンダイヤルの価格は、最も手頃な例でも何千万をはるかに超えてから始まり、文字盤の希少性や全体のコンディションなどの要因に応じてそこから増加します。
このような超コレクタブルなヴィンテージモデルになると、価格に関しては限界があり、年を追う事に入手が困難になり、購入するのがより難しくなります。
このように、デイトナは憧れの的であり続けられることが想定されますので、ほぼ全てのモデルの人気は、今後も衰えることはないでしょう。
そして、もしあなた様が幸運にもコレクションに1本を持っているのならば、その価値もまた同じように上昇する方向に向かっていることを知って、嬉しく思うでしょう。
誰もが手にすることが出来る時計ではありませんが、時計ブランドの王者であるロレックスの大人気モデルの魅力や歴史を知ることは、腕時計をもっと楽しい世界へと連れて行ってくれるきっかけになりそうですね。