機械式時計・手巻き時計 IWCを創業したのはスイス人ではなく、アメリカ人

■歴史

IWCはスイス高級時計のひとつです。
社名のIWCとは「I」nternational 「W」atch 「C」ompanyの頭文字から来ています。現在はダンヒルなどと同じ、スイスのリシュモングループに属しています。

IWCは時計好きの方なら知らない人はいないでしょう。

一般的な認知度はロレックスやオメガの時点になるといったところでしょうか。
その大きな要因としては、かつてクオーツショックが起きた時、例に漏れずIWCも甚大な影響を受け、自社ムーブメントの製造を一時中止し、ムーブメントを外部のエタ社に頼っていた時代があったからでしょう。

しかし今やその時代を乗り越え、その卓越した技術力は他のメーカーには全く見劣りすることはないといえます。

なぜならばトゥールビヨン、ミニッツリピーター、ムーンフェイスといった、超絶複雑機構の時計を自社製品化する力を有し、グランドコンプリケーションの時計を世に送り出しています。この点を取ってみても技術力は高級腕時計の中でも随一です。

トゥールビヨンなどを搭載した時計は、高級時計の中でもとりわけ高額な時計になりますが、そういった時計のみならず、比較的安価な30万円代からの商品を展開しており、一般の人でも手に入れやすく、楽しむことが出来るところがIWCの魅力といってよいでしょう。
IWCを創業したのはスイス人ではなく、アメリカ人です。

時計技師であるフロレンタイン・アリオン・ジョーンズは当初ボストンのE.ハワードウォッチ&クロックカンパニーの副社長兼製造マネージャーとして働いていました。

当時のアメリカ市場では高品質の時計の需要が高かったのですが、アメリカ国内では技術者不足のため人件費も高く、生産ラインも整えられない状態でした。

そこでジョーンズが目を付けたのがスイスでした。

人件費も安く、昔から時計職人のギルドが根付いており、生産性も高かったためです。

弱冠27歳だったジョーンズは海を渡り、スイス北東部に位置するシャフハウゼンを目指します。

ライン川が流れるこの地で、水流を利用した水力工場を作り、職人たちが個人で時計を作っていた時代に彼らをまとめ上げ、職人たちの伝統技術と近代工業の融合を進め、アメリカ市場向けのメイドインスイスの高級時計ブランドを設立しました。そして満を持して1868年、IWCは産声をあげました。

■コレクション

・ポルトギーゼ
1939年、IWCに2人のポルトガル人の時計商が訪ねてきました。
二人の要求はマリン・クロノメーターと同等の精度を持つ腕時計の作成でした。

そこで使われたのが懐中時計のムーブメントでした。大きなテンプが精度を保つために重要だったためです。

しかし懐中時計サイズだったため、1980年代までは時流と合わず、製作本数はほとんどなかったのですが、1993年「ポルトギーゼ」は復活し、今ではIWCの代表作として人気の高いシリーズとなっています。

ポルトギーゼに採用されるアリゲーターのストラップは、イタリア高級靴で有名なサントーニ社が手掛けています。サントーニは靴に使う革では、最低でもアノネイ以上の革を使う、非常にこだわりとクオリティの高いブランドです。

サントーニのストラップのポルトギーゼとサントーニの靴を合わせたら最高にかっこいいでしょうね!

・ポートフィノ
1984年に発表されたのが「ポートフィノ」コレクションです。およそ30年近く愛されているシリーズです。

イタリアのティグッリオ湾に面したポートフィノは、世界中のセレブリティ、スター、富豪といった有名人が訪れるリゾート地です。彼らがポートフィノに訪れる目的は、のんびりと時が流れる南欧のライフスタイルを味わうためです。

「ポートフィノ」コレクションはそんなポートフィノの地にインスパイアされたコレクションです。近年では「ポートフィノ」に自社製キャリバーの59000シリーズが搭載され、8日間のパワーリザーブを誇るコレクションも発表されました。
この時計をつけて悠然とした時の流れを楽しむのはいかがでしょうか。

・アクアタイマー
1967年に発表されたのが「アクアタイマー」コレクションです。
その名のとおり、ダイビングウォッチです。
2009年には全面的にリニューアルされたことでも話題になりました。

何層にも塗布されたスーパーミノルヴァが輝くことによって、深海のような暗い世界においても、時刻がわかるようになっています。「アクアタイマー・ディープ・スリー」シリーズにはダイバーにとって、より実用性のある、最大50mまで測定可能な水深計も機能としてついています。

また2000メートルの深海にも対応した「オーシャン2000」シリーズも厳しい環境にも耐えうる時計として、プロのダイバーたちから絶大な信頼を得ています。
・インヂュニア
1955年、経済成長の影響もあって、家庭に電化製品が増え、磁気の影響が時計に及んでいた状況を打破するべく、耐磁性の高い時計を開発し発表しました。

これが「インヂュニア」の始まりです。
当時技術責任者だったアルバート・ペラトンはこの「インヂュニア」に、時計界初の双方向自動巻き上げローターを搭載させました。俗に言うペラトン自動巻き機構です。
このペラトン自動巻き機構は未だに改良され、自社製キャリバーの中核を担っています。
1970年代初頭、時計デザイナーのジェラルド・ジェンタは時計ケースにビスなど隠さず、あえてむき出しにしたデザインの時計を開発しました。今日まで続く「インヂュニア」のデザインに多大な影響を与えています。

・パイロット・ウォッチ
人が空に手を伸ばした、航空時代の初め、パイロットたちはみな時間計測に懐中時計を使用していました。
しかしながら飛行しながらでは、腕時計に比べ、身につけているわけではない懐中時計は使いづらいものでした。
1936年そこで開発されたのが「パイロット・ウォッチ」です。

飛行中の様々な厳しい環境にも耐えうるように、頑強な風防、短時間の計測ができる回転式ベゼル、耐磁性脱進機を備えています。1940年代には「パイロット・ウォッチ」の軍用化が進み、直径46ミリと、かなり大きいサイズのモデル、「ビッグ・パイロット・ウォッチ」も発表されました。また英国の戦闘機「スピット・ファイア」の名をそのまま冠したコレクションなども有名です。

・ダ・ヴィンチ
「ダ・ヴィンチ」…当然このコレクション名はレオナルド・ダ・ヴィンチの名からとられたものです。
1960年代後半から、その名を冠した時計を発表していました。

1985年、500年先までのカレンダーがプログラムされ、西暦を4桁で表示し、カレンダーをリューズで先送りできる機能を搭載した、初のクロノグラフを発表し、「ダ・ヴィンチ」を発表し、以降定番モデルとなっています。

レオナルド・ダ・ヴィンチの時代を先取りした革命的な発明にインスパイアされている「ダ・ヴィンチ」モデルに共通するのは、常に時代の最先端を走っているということです。 IWCが開発する最先端技術が最初に適用されるのは、常に「ダ・ヴィンチ」コレクションというのがお約束になっています。
■名作とのコラボ
IWCは様々なコラボを展開しています。世界的に有名な「星の王子さま」とコラボし、「パイロット・ウォッチ」に題名をそのまま名にした「プティ・プランス」のシリーズを発表、ケースの裏蓋には星の王子さまがかたどられています。

また「パイロット・ウォッチ」コレクションには「トップガン・ミラマー」というモデルの時計もあります。これはトム・クルーズの出世作「トップガン」に大きな関係のある「ミラマー」海軍基地からとってつけられたもので、ケースの裏蓋も「トップガン」のロゴが入っています。

■IWCの魅力
価格帯が幅広く、自分のライフスタイルに適するように、時計を選べることにあります。

また冒頭でも述べたように、自社製キャリバーへのこだわりもあるため、メンテナンス等も受けやすいのです。

ぜひ並行輸入品ではなく、しっかりと向き合った上で正規店から購入してほしいブランドのひとつなのです。

そしてあまり人と被ることのないブランドなので、時計好きならではのチョイスとして、知る人ぞ知る時計といった感じを楽しめるのではないでしょうか。