ヴィンテージウォッチ エテルナ(Eterna)&ETAの歴史をたどる旅
動画でエテルナの歴史を知りたい方はこちらから↓
ETAという会社の名前は聞いたことがあっても、『エテルナ』という会社名はヴィンテージウォッチコレクター、位しか知る人はいないのではないでしょうか?
今日はですね、そんなエテルナ社の歴史を紐解きながら、ETA社がどのように生まれたのか、そして、ヴィンテージエテルナの凄みについて解説して参ります。
この動画を最後までご覧頂くことで、エテルナ社を知らない人でもきっと素晴らしいブランドだというのが、分かって頂けると思いますので是非とも最後までお付き合いください。
目次はこのようになっております。
1.エテルナの歴史
2.シルド・兄弟社からエテルナへ
3.軍用時計&アラームウォッチのエテルナの実力
4.エテルナ社『ETA SA』としてムーブメント部門を分割へ
5.エテルナ社が展開する自動巻ムーブメント『エテルナマチック』
最後にまとめとなっております。
それでは早速やって参りましょう。
エテルナの歴史
1856年 エテルナの成り立ち
1856年この年、『ジョセフ・ジラール博士』と、28歳の学校教師だった『ウルス・シルド』は、スイスの時計産業が発展する中、ムーブメントの製造にチャンスを見出し、エテルナのブランドの歴史が始まります。
出典:https://www.timeandwatches.com
グレンヒェン(ソロトゥルン州)に、時計ムーブメント(フランス語でエボーシュ)工場の「ドクター・ジラール&シルド」を設立し、半完成品と(フランス語でエボーシュ・ブルート)と最終製品(エボーシュ・ブラン・ルラント)の生産を開始しました。
10年後の1866年、ジラール博士が工場を去ることになりましたが、ウルス・シルドは1人、オーナーとして、製造工程に革命をもたらします。
出展:https://www.timeandwatches.com/p/the-history-of-eterna-innovation-in.html
以前の自動製造機の原動力は、周囲の小川の水だけでしたが、彼はこの地域に初めて近代的な蒸気機関でも動かせる技術を導入したのでした。
次第に供給量の増加と、価格低下により、エボーシュの生産が採算に合わなくなり始めると、シルトは完全組み立て式の時計の生産も開始しました。
その10年後の1876年グレンヘンで製造された、最初のポケットウォッチが発表され、大きな成功を収めました。
この変化を後押しさせるため、弟のアドルフが会社に加わり、ウルスは工場名を「Präzisionsuhren-Fabrik Gebrüder Schild」(精密時計工場シルド兄弟)と改めました。
よって会社の成り立ちというのは、まず初めにムーブメントが来てその次に完成品を製造するという、ジャガールクルトのような成り立ちだったのが分かりますね。
出典:https://thetruthaboutwatches.com/2020/05/eterna-innovate-or-die/
1888年に創業者のウルス・シルドは、58歳の若さで亡くなってしまいます。
その後2人の息子、マックスとテオドールが会社を引き継ぐことになります。
シルド・兄弟社からエテルナへ
1890年従業員が約300人となり、1日180本の時計が生産されていました。
その頃から、女性用腕時計のコレクション名としての「eterna」のロゴが入るようになりました。
今となっては、当たり前のように男性も腕時計をしますが、当時は腕時計といえば女性のオシャレアイテムであり、男性は懐中時計が主流だったんですね。
そんな、腕時計の黎明期に女性用腕時計コレクションの『eterna』が大ヒットしたことによって、1906年社名が「Eterna-Werke, Gebrüder Schild & Co.」と改められたんですね。
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その後、世界各地に支社を設立したエテルナ社は、先進的な製造方法と、この頃としては珍しい革新的な電気機械によって、大幅に生産量を増やしながら、成長を続けました。
世界初のアラームウォッチ量産型を発売
元々、このアラームウォッチ機構の起源は1899年の懐中時計時代まで遡り、特許を取得したのはデュルンシュタイン社でした。
その後、エテルナ社が腕時計用のムーブメントの特許を取得したのが、1908年の話です。
このエテルナ社製ムーブメントは、元々デュルンシュタイン社のムーブメントをベースにしていますが、当時の時計本体サイズに対応するために、ダウンサイジングされているものでした。
そして、6年間の研究開発の期間を経て、大量生産体制を確立したということなんですね。
1914年にはアラーム機能を備えた腕時計で特許を取得し、同年にベルンで開催された、スイス万国博覧会で、世界初の量産型アラーム付きの腕時計を発表しました。
一般的には、ジャガールクルト社の『メモボックス』がアラームウォッチとしては有名ですが、実際に最初に量産に成功していたのは、エテルナ社だったんですね。
1929年アラーム腕時計の開発はさらに進み、1929年には8日間駆動する新モデルが発表されました。
軍用時計としてのエテルナとさまざまな挑戦
1904年エテルナ社は、軍用の可動式安全帯ラグを備えた、特殊な腕時計ケーシングの特許を申請し、大きな活力とイノベーションの精神を証明しました。
このような広報活動の成果もあり、実際にイギリス陸軍にはダーティダースの1社として、時計を納品しておりますし、チェコスロバキア空軍にも納品しております。
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エテルナの軍用時計についての詳細はこちらからご覧くださいませ↓
アールデコ時代の腕時計
エテルナは記録を更新し続け、翌年にはバゲット・ムーブメント(ムーブメント(駆動部)が「I」の形で組まれていること)を搭載した最小の量産腕時計が発表されました。
そんな中でもCal.610は、わずか7.25mm x 22.5mmで、他の時計メーカーよりも小型のモデルでしたが、全て手作業で作成され、高価な値段で販売されていました。
エテルナ社『ETA SA』としてムーブメント部門を分割へ
1899年から会社を率いてきた、テオドール・シルドが亡くなったことにより、その後を、弟のマックスの息子であるルドルフ・シルド=コンツェが引き継ぎました。
同年、会社はムーブメントの製造を行う『ETA SA』と、時計の製造を行う『エテルナ』の2つの法人に分離します。
ここで初めて、私たが知る『ETA』が誕生するのですが元々はエテルナ社のムーブメント製造部門だったんですね。
1926年、スイスで『エボーシュSA』が設立されます。
このエボーシュSAの中心にはETA、アドルフシールド、フォンテンメロンで構成され、そこに他のエボーシュメーカーが入ってくる構図でした。
初年度には、この3社だけだったのが年を追うごとに、私たちがよく知っているバルジュー、ランデロン、ヴィーナス社などの会社も入ってくるように、大きなグループへと成長します。
当初は、合併や買収などの構図ではなく経営を効率化させるためのグループだったのが、人件費の高騰や他国との戦いの中で立ち行かなった企業なども出てきて、最終的にはグループの中の強い企業に吸収合併されていくこととなります。
その強い企業が『ETA』と『フォンテンメロン』でした。
その後、ETA社がアドルフシールド社を買収し、ETAとフォンテンメロン社が、経営統合したことによって、 ETA社がどのムーブメントメーカーをも手中に納めた企業が誕生したのです。
そして、クオーツショックの煽りを受けて各時計会社は業界再編の道を選び、ムーブメント製造をメインとするETA社も、スウォッチグループの傘下に入ることとなったんですね。
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エテルナ社が展開する自動巻ムーブメント『エテルナマチック』
自動巻き時計の歴史は、1770年代にスイスの時計師アブラアン-ルイ・ペルレとフランスの発明家であるユベール・サルトンの設計により始まりましたが、(数年後にアブラアン-ルイ・ブレゲがさらに改良)、その頃まだその信頼性は十分ではありませんでした。
20世紀になって、初めて腕時計が生産されるまで、普及することありませんでしたが、次第に機械式時計のムーブメントを動かすのに十分なエネルギーは、針の動きでまかなえるようになっていきました。
1920年イギリス・ボルトンの時計修理工『ジョン・ハーウッド』は、腕時計のゼンマイを巻き上げるために、着用者の動きに合わせて揺れる回転錘(ローターのこと)を使用することを思いつきました。
しかし、まだ開発段階であったこのバンパー式自動巻は、ローターは360度回転せず、約180度までしか回転できませんでした。(このため、この初期の自動巻き機構はしばしば「バンパー」と呼ばれる)。
その後、彼はフル充電で12時間作動する自動巻き腕時計の生産を開始し、スイスで特許を取得します。
他社メーカーも、ハーウッドの設計の改良に取り組み始め、ロレックスは、360度回転するローターをベースにした新しいシステムを開発します。
回転するたびに、多くのエネルギーを取り込むことができ、フル充電で最大35時間駆動の時計を開発します。
しかし、これらのムーブメントは、部品間の摩擦による摩耗や損傷によって、精度と経時的(時間の経過に伴って表れる変化)な信頼性に欠けることがありました。
そこでエテルナは、ボールベアリング搭載のローターの導入に成功し、解決策を見出したのです。
それが1948年に誕生したムーブメントである『エテルナ・マチック』です。
※エテルナマチックのムーブメント
出展:https://www.timeandwatches.com/p/the-history-of-eterna-innovation-in.html
このムーブメントは、エテルナ社だけでなく、時計産業全体が発明の技術力を向上させた年でした。
このエテルナ・マチックの特徴は、5つのミニチュアボールベアリング(直径わずか0.65mm)が、ローターを支えながらバランスをとることで、部品間の摩擦を大幅に減らすことが可能になった点です。
また、時計を地面に落としても、スムーズで信頼性の高い動作が可能なほど頑丈に設計されているものでした。
これ以降、「エテルナ・マチック」の名称で販売されたエテルナの自動巻き腕時計は、エテルナに世界的な時計ブランドの名声を与え、5つの小さなボールは、エテルナ社の新しいロゴとして採用さることとなりました。
出典:https://www.timeandwatches.com
まとめ
今日は、エテルナ社の歴史とそこから分離して誕生した『ETA』社について解説しました。
普段私たちは、エテルナというブランド名も聞くことはありませんし、興味の対象に上がらないブランドだと思います。
しかし、エテルナ社は絶対的な精度を求められる軍用時計も作っていましたし、革新的な挑戦を続けていたのが歴史の中から垣間見れたのではないでしょうか。
現在は香港の投資会社に買収されてしまい、お世辞にもブランドネームに力があるとは言えませんが、今となっては自動巻ムーブメントのシェアを90%を担い、さまざまなブランドがETA社のムーブメントを使っているのを見れば、いかにエテルナ、そして『ETA』という会社が凄い会社なのかが分かりますよね👍
参考文献:https://www.timeandwatches.com/p/the-history-of-eterna-innovation-in.html