ブライトリングのAVI 765 コ・パイロット『co-pilot』は最強の空軍規格時計
パイロットの為の時計ブランドといえば、やはりブライトリングの1強になると思います。
そんなパイロットに愛された、『ブライトリング社』ですがもちろん、民間用の時計だけを作っていたわけではありません。
1950年代にナビタイマーを発表して以来、ブライトリングの時計はパイロットにとって不可欠な時計になったことは間違いありませんが、長年にわたり、航空分野で蓄えた専門知識は、軍用時計として応用することができたのです。
今日はそんなブライトリング社から出された、知る人ぞ知るミリタリーウォッチ『コ・パイロット(co-pilot)』について、歴史と魅力を解説して参ります。
ただただかっこいいと思って購入した、そのco-pilotも今日のお話を聞いて頂くことで、より愛着を持ち大切にしようという気持ちになると思いますので、是非とも最後までお付き合いください。
動画でご覧になる方はこちらから↓
Ref.AVI 765『コパイロット』プロジェクトの歴史
1952年に発表されたナビタイマーでしたが、その裏では、実は軍用時計のプロジェクトがすでに開始されていました。
軍事航空との関わりは1946年に始まっており、ブライトリング社内に戦闘用に特別に設計された時計や計器を製作する部門が誕生しています。
この部門のことを『Breitling Eight Air Force』と呼ばれ、積極的に『軍』と『サプライヤー』に広告を出していました。
当時のカタログには、「最新の技術改良が施された」時計であることが謳われていました。
この部門の最高傑作の1つが「リファレンスAVI 765」なんですね。
AVIというのは、アヴィエーションウォッチ(航空時計)の意味になります。
『リファレンスAVI 765』は、フランス空軍のために設計されました。
フランス軍との契約を獲得しようと、躍起になっていたブライトリング・エイト部門は、1953年にこの任務に最適と思われる時計をデザインしました。
幻の初代AVI 765
実は私たちが知っているAVI 765の他に、あと1つのAVI 765 が存在します。
ナビタイマーの発売から遅れること1年後の、1953年に初代AVI 765が誕生したのです。
それでは、実際の時計を見てみましょう。
「ナビタイマー」とは異なり、文字盤にはパイロットが必要とする最も重要な情報のみが表示されるデザインになっております。
それでは文字盤を見てみましょう。
・視認性の良い黒文字盤
・三角マーカーのついた回転ベゼル
・9時位置の秒針
・6時位置の12時間積算計
・3時位置の15分積算計
となっております。
ぱっと見、私たちは3時位置の四角の小窓をデイ表示と勘違いしてしまいます。
ですが、これは15分積算系であり離陸前の機体チェックに要する時間がきっちり15分だったため、このように小窓には15分積算計がデジタルで表示されているのです。
しかし、これをフランスのCEV『フランス空軍飛行テストセンター』に持っていったところ、デジタル表記の受けが悪く採用には至りませんでした。
これは私が、当時のブライトリング・エイト・エア・フォースの状況を予想してお話しするのですが、フランス空軍は1950年に『ヴィクサ』と『ブレゲ』を正式にType20に採用しており、AVI 765は出遅れ気味だったと思います。
ですので、ブライトリング・エイトには焦りがあったはずです。
そこで、最新技術を搭載した『先進性』と『視認性』で勝負を挑んだんだけれども、不発に終わってしまった。
こんな感じだったんだと思いますね。
2代目AVI 765の誕生
CEVからは、デジタル表記は視認性は良くないと判断されたことにより、次期型を発表します。
これが、翌年の1954年に発表された2代目AVI 765だったんですね。
では時計を見てみましょう。
セカンドになると私たちが一般的に見る、ミリタリーウォッチのデザインになっています。
搭載ムーブメントは、ナビタイマーにも搭載されていたヴィーナスCal.178になります。
変更点は、CEVから指摘された3時位置の15分積算系がデジタルからアナログへ変更されているところと、ベゼルも飛び数字から全て数字バージョンになっています。
心底ミリタリーウォッチファンの方であれば、もうすでに気がついてあると思いますが、このデザインどこかで見たことありますよね?
12時間積算計はないものの、ブレゲTYPE20のセカンドに非常に似てるのがわかると思います。
これは私の推測なのですが、ブレゲは民生用であるTYPE20とほとんど同じのTYPE XXも同時に販売していました。
左側に写ってるのは、TYPE XXの民生用なのですがおそらく、3レジ版のを実際に購入してこれを元に、2代目コパイロットをデザインしたのではないかと考えております。
非常にデザインが、酷似していますからね。
しかし、フランス軍の仕様であるTYPE20の条件は、2レジであることでした。
また、政治的に国産が推奨されていたことと、軍とのつながりのあったフランスメーカーである『ドダンヌ&アウリコス』がブレゲ、ヴィクサに引き続き採用されてしまうこととなるのです。
よって、ブライトリングの『AVI 765』はフランス軍の定めるType20の規格を達成できずに、採用されることはなかったのです。
私の考えでは、おそらくフランス政府はブライトリングを、採用する気が無かったのではないかと考えております。
なぜなら、本来であれば軍用時計というのはイギリス軍のマーク11や今回のTYPE20,21などの規格を明確に設定しているからです。
ですので、それらのメーカーはその企画をもとに時計を作っていくのですが、このAVI 765はファースト、セカンドともにその流れに沿って、作られたものだと思えないからです。
圧倒的に、不利な状態で暗中模索の中で、作られたのではないでしょうか。
フランス空軍仕様の機能については、こちらの動画で詳しく解説しておりますので、もっと詳しく知りたい方はお時間のある際にご覧ください。
その後のAVI 765とコパイロット
このように軍用時計に採用されなかったAVI 765ですが、ブライトリング社はこの時計を民生用に改良し、販売することを決心します。
ただし、そのほかのペットネームを与えられた時計とのポジションに、差別化を生み出すことができず、当初はか細く販売が行われていたようです。
そして、1964年にデザインを刷新し「コ・パイロット」としてデビューさせました。
ここで初めて、コパイロットという名前が出てくるんですね。
コパイロットの名前の由来なのですが、ナビタイマーの補足をするための時計ということで、副操縦士の意味を持つ『コパイロット』という名前をつけたのです。
かっこ良くいうならば、双璧のファイターである『ナビタイマー』と『コパイロット』といったところでしょう。
では、実際の時計を見てみましょう。
左側にあるのが、AVI 765で右側にあるのが、デザインが刷新されたコパイロットです。
※出典:ブライトリング公式サイト
ベゼルは、従来はスチール製だったのが、アルマイト処理されたアルミニウム製に変更されました。
さらに、従来は黒一色だった文字盤でしたが、視認性を向上させるためにレジスターの部分は白に置き換えられ、パンダダイヤルに変更されました。
それと同時に、レファレンスもAVI 765からRef.765CPに変更されるのでした。
このCPというのは、CopilotのCPが当てられてるんですね。
まとめ
ブライトリングといえば、『ナビタイマー』とまで言われるようになった最高傑作ですが、その裏には実はそれと同等のミリタリー規格で作られた『コパイロット』というモデルが存在したんですね。
フランス軍に採用されることはありませんでしたが、ミリタリー規格に沿って作られた時計であるために、デザインは超絶かっこいいのも事実です。
コパイロットは欲しいと思っても、購入できるような時計ではありません。
生産数が非常に少なく、激レアの時計となっております。
よって、コパイロットは知る人ぞ知るモデルなのかもしれませんね。