スウェーデン軍が使用したヴィンテージミリタリーウォッチの魅力

今まさに、NATOに加入しようとしている国がスウェーデンになります。

私たちからすれば、幸福度がトップクラスに高く老後が過ごしやすい、北欧の一カ国というイメージですがロシアと隣接しているために、軍事を疎かにしているわけではありません。

この記事では、そんなあまり興味の対象に上がらないスウェーデン軍の腕時計について解説して参ります。

 

目次はこのようになっております。

 

1.スウェーデン軍の時計の特徴

以降は実際に支給された時計を紹介していきます。

2.エクセルシオパーク

3.ミネルバ

4.キャンディーノ

5.レマニア Tg 195

6.レマニア Viggen

 

最後にまとめとなっております。

 

スウェーデン軍の時計の特徴

スウェーデン軍の時計の特徴は、裏蓋にTre Kronor(トレクロール・3つの王冠)の刻印が入っていることです。

3つの王冠は、国の紋章としても使われます。

Tre Kronor(トレクロール)3つの王冠

ミリタリーウォッチコレクターの方であれば分かると思いますが、イギリスのブロードアローのような感じで、スウェーデン軍の所有物を表すマークなんですね。

しかし、イギリス軍やイタリア軍、フランス軍のように明確なスペックが求められたわけではないようで、それぞれのブランドが独立した形になっております。

他国のミリタリーウォッチについては、こちらで詳しく解説しておりますのでお時間のある際にでもご覧くださいませ↓

そして、スウェーデン軍が1950~70年代に採用したのが、エクセルシオパーク、ミネルバ、キャンディーノになります。

キャンディーノは有名ではありませんが、当時の技術力を持った時計ブランドに製造を任せてあるので、非常に完成度の高い時計に仕上がっています。

ここからはそれらの時計を見てみましょう。

 

 

エクセルシオパーク

当時としては、非常に技術力を必要としたクロノグラフムーブメントを製造することができた、技術力の高いブランドです。

その技術力の高さから、ギャレット社のクロノグラフにも採用されておりますし、実は日本軍にもクロノグラフを少数ではありますが納品しております。

では実際に、時計を見てみましょう。

エクセルシオパーク 日本軍とスウェーデン軍の違い 文字盤エクセルシオパーク 日本軍とスウェーデン軍の違い 裏蓋

左側が日本軍で、右側がスウェーデン軍になります。

日本軍の方は、本来はブラックの文字盤なのですが経年劣化により、トロピカルダイヤルになっております。

スウェーデン軍の方は、一般的なクリーム色になっております。

デザインが完全に同じなので、おそらく文字盤の色で納品先の『スウェーデン軍』と『日本軍』を分けて製造したのだと思われます。

では、裏蓋も同じかというと、もちろんそうではありません。

 日本軍の方は、桜の刻印とその下にちょっと分かりにくいですが、『航空自衛隊』の刻印が入れられスウェーデン軍の方は、トレクロールの刻印が入っております。

その下に入ってる『94』の刻印はおそらく、製造番号かと思われます。

エクセルシオパークCal.4

ムーブメントには、ロンジン社のCal.13ZNに匹敵すると言われるエクセルシオパークCal.4が搭載されております。

 

 

 

ミネルバ

ミネルバ スウェーデン軍 3レジクロノグラフ

1960年代になると、次期型であるミネルバのクロノグラフが採用されることとなります。

インカブロックと文字盤に記載されておりますので、当時の時計に求められていた耐久性を保証するポイントになっていたのでしょう。

では、裏蓋を見てみましょう。

上から順にかなり小さいですが、こちらもトレクロール(3つの王冠)の刻印がありますよね。

その下にMinerva

その下にSWISS

その下にVD712が刻印されてます。

おそらく裏蓋のVD712は、モデル名を表すものかと思われます。

そして、それらを囲むのが

・WATER & SHOCK RESISTANT=耐水性と耐衝撃性

・NON MAGNETIC=耐磁性

・Stainless steel=ステンレス スチール

 ・Inca block=インカブロック

と記載されております。

裏蓋のグレードだけを見ても、かなりハイスペックなのが伝わってきますね👍

では、ムーブメントを見てみましょう。

元々ミネルバは、自社でもクロノグラフムーブメントを作ることができ代表作としては、Cal.13-20CHがあるのですが、途中からバルジュー社のムーブメントを搭載し始めます。

今回の時計は、バルジュー社のCal.72が搭載されており滑らかに面取りされた各種パーツは、丁寧な仕事ぶりを垣間見ることができますよね。

スウェーデン軍 ミリタリークロノグラフ ミネルバ バルジューCal.72

そして、こちらのミネルバのクロノグラフは軍に支給されなかった個体が、民生品として販売されております。

スウェーデン軍 クロノグラフ ミネルバ 民生用の裏蓋

民生品になると、裏蓋のトレクロールの刻印がなくなるだけで、その他は軍用と共通です。

 

 

キャンディーノ

 キャンディーノ CANDINO スウェーデン陸軍腕時計

キャンディーノというブランドは、さまざまな時計を作っていたみたいですが代表作品と言えるものは、このスウェーデン軍の時計しかないように思われます。

1970年代に入り、陸軍に採用された時計です。

70年代のミリタリーウォッチの特徴である、トノー型のケースはラグとケースがワンピースで作られ、裏蓋まで同期してませんがイギリス陸軍に納品した、CWCやハミルトンの時計に近いものを感じます。

 

では、ムーブメントを見てみましょう。

キャンディーノ CANDINO スウェーデン陸軍腕時計のムーブメント ETA Cal.2750

こちらはETA2750が搭載されております。

このETA2750は、先ほど出てきたCWCが同年代に作ったイギリス陸軍に搭載されていたものと同じであり、汎用性が高かったのでしょう。

 70年代 陸軍腕時計比較 CWC & キャンディーノ

CWCとデザインは似ていますが、よくよく見ていくとちょっとした違いがあります。

特に私が好きなポイントが、秒針が夜光塗料が入った弓矢の形状をしている点です。

CWCの方は、丸Tでトリチウムを表していますがキャンディーノの方は、文字盤下の T SWISS MADE T でそれを表示しています。

どちらにもそれぞれ違った魅力がありますが、この陸軍の時計はシンプルでありながらも洗練されたデザインで、ハック機能が搭載されていたりと機能面についても申し分ない、これからミリタリーを手にしたいと考えている方には導入モデルにしてもいいと思いますね。

 

レマニア Tg 195

レマニア社からは2種類の時計が、スウェーデン軍に納品されました。

まず初めにご紹介するのは、『Tg 195』です。

こちらの時計は1954年に支給が始まり、1960年代中頃まで納品されていたモデルです。

どの部隊に支給された時計なのかが、未だに解明されていませんがTGとはスウェーデン語で「Tid Givare」の略で、英語ではGiving Time「時間を与える」という意味がありますが、195の意味が定かではありません。

レマニア スウェーデン軍 Tg195

レマニアTg195は、3針時計とも違いますしクロノグラフとも違う、独特の特徴があります。

ワンプッシュクロノグラフのように見えますが、Cal.2225はハック機能が搭載されたムーブメントであり、特殊な動きをします。

ではムーブメントを見てみましょう。

 

レマニア社製ムーブメント Cal.2220とCal.2225の違い

Cal.2225はそれまでレマニアが持っていた、Cal.2220をベースに作られているのでどことなくCal.2220に似ている部分がありますよね。

2時位置のプッシャーを押すとリュウズが飛び出し、秒針がゼロリセットし固定されます。

リュウズを押して戻すと、再び時計が動き始めます。

どこかの地点を攻撃するのに、出動前にみんなで時計を動作させ時間になったときに、一斉に攻撃を開始するための役割に特化している時計ではないかと考えております。

 

TG195は、その見た目からしても人気があります。

イギリス空軍に支給された、クロノグラフよりも大きい40mmというサイズ感と、光沢のあるブラックミラーの文字盤、そしてリューズガードが施されたケースから生み出される、アシンメトリースタイルが魅力的ですよね。

 

 

では次に、70年代に空軍に納品されたクロノグラフを見ていきましょう。 

 

レマニア Viggen(ビゲン)

レマニア スウェーデン空軍 クロノグラフ

レマニアのこのモデルは「Viggen(ビゲン)」と呼ばれ、1975年前後にスウェーデンの空軍に支給されていたものです。

「Viggen(ビゲン)」というのは、飛行機の名前であり、ライチョウを意味します。

それに乗るパイロットに、支給されたクロノグラフなんですね。

スウェーデン軍が保有するViggen(ビゲン)

ちなみにビゲンは、上記の戦闘機であり今はグリペンに世代交代しております。

今回のビゲンは他国のレマニア製クロノグラフと比較して、非常に希少性が高く総注文数は400個程度だと言われておりそのために、高額で取引されています。

ちなみに、エクセルシオパーク同様見た目はほとんど一緒のクロノグラフを、南アフリカ空軍に納品されたのですが、こちらは少しだけ多く600個と言われております。

よって、この形をしたクロノグラフは全体で見ても1000個程度しか存在しないんですね。

では、それぞれ違いを見てみましょう。

レマニアが納品した空軍用ミリタリーウォッチ スウェーデン空軍と南アフリカ空軍の違い

左側がスウェーデン空軍であり、右側が南アフリカ空軍のものになります。

ぱっと見ではほとんど違いはありませんが、文字盤には3箇所違いがあります。

まず、クロノ針なのですがこちらはスウェーデン空軍の方は、シンプルな白の一本ラインですが南アフリカ空軍の方は、オレンジのポインター針になっております。

ベゼルの形状なのですがスウェーデン空軍の方は溝が浅いですが、南アフリカ空軍の方は、溝が深くなっております。

また、ベゼルのメモリの感覚がスウェーデン軍の方は10分刻みなのに対して、南アフリカ空軍の方は、15分刻みで表記されております。

 

それでは裏蓋を見てみましょう。

レマニアが納品した空軍用ミリタリーウォッチ スウェーデン空軍と南アフリカ空軍の違い 裏蓋

スウェーデン空軍の方は、トレクロールの刻印が入っており南アフリカ空軍の方はA.F(アフリカの頭文字)の刻印が入っております。

 

それではここからは、ムーブメントを見てみましょう。

まずどちらの時計にも同じムーブメントが採用されおり、レマニア社製Cal.1872が搭載されております。

スウェーデン空軍&南アフリカ空軍に採用されているクロノグラフに搭載されているレマニア社製Cal.1872

このムーブメントは、オメガのスピードマスターにも搭載されていたもので、レマニア社の代表的なムーブメントです。

その前にレマニア社が作っていたコラムホイール式のCal.15CHTも有名ですが、カム式に変わってもその信頼性、堅牢性、操作性は変わらず、さまざまな時計に採用されました。

 

 

まとめ

この記事では、スウェーデン軍が採用したミリタリーウォッチをご紹介させて頂きました。

このように時計を見ていくと洗練されたデザインであり、それと同時に軍が採用するものなので当時の技術が結集されて、丁寧に作られているのが分かります。

このようなスリークラウンが刻印されてる理由や時計の歴史、機能を理解することで私たちはよりミリタリーウォッチの虜になるのかもしれませんね。