パキスタン空軍に採用された オメガ シーマスター30の歴史と魅力
動画でパキスタン軍のシーマスター30について、ご覧になる方はこちらから↓
オメガのシーマスターというは、オメガを代表する現在までも続く人気モデルなのは、周知の事実ですよね。
そして歴史ある時計ブランドなので、これまでにさまざまな国に時計を納品していましたし、それだけ信頼されているブランドです。
しかし、そんなシーマスターなのですが実はパキスタン空軍モデルが存在します。
イギリス軍やカナダ軍やアメリカ軍、などの先進国に納品された時計ではないため、ほとんどの人が知らないであろう、パキスタン軍に納品されたシーマスターについて本日は深掘って解説して参ります。
ヴィンテージウォッチが好きな方には、やっぱり良い時計だよね!
って気持ちになって頂けると思いますので、是非とも最後までお付き合いください。
それでは早速やって参りましょう。
シーマスター30の意味とパキスタン空軍解説
そもそもシーマスター30の『30』は何を表しているかというと、30m防水ではなく30mmキャリバーを搭載していることを表す30なんですね。
1963年に開催された、腕時計用の天文台コンクールが30mmまでだったことから、その最大幅を使って受賞してやろう!
ってことで30mmキャリバーが誕生しました。
この30mキャリバーは、堅牢製がありつつ精度も抜群に出せるムーブメントだったので、世代交代しながらいろんなモデルに搭載されてきました。
パキスタン空軍は、1947年に設立されそれ以来大規模な機動力のある航空機を保有しています。
今日でも世界で 8番目に大きい航空機艦隊であり、数多くの戦争や任務の支援に携わってきました。
ちなみにパキスタンはここですね。
※出典:旅行のともZenTech
なんでここまで強い空軍が必要かと言いますと、隣にインドがあるのですがインドとはめちゃくちゃ仲が悪いんですね。
それで、インドが領空侵犯してくるからそれをさせないように、ということで空軍がでかく強くなっているんです。
では話は時計に移りオメガの時計は、その信頼性からイギリス軍やカナダ軍など大規模軍隊を持つ各国に、腕時計を納品してきた歴史があります。
その反面、パキスタン軍はと言うとそもそもの軍隊の規模が小さいために、納品された腕時計の数もイギリスやカナダと比較するとかなり少なく、市場に出てくる数が非常に少ないのが特徴です。
そんなパキスタン軍向けに作られた『シーマスター』ですが、パキスタン空軍(Pakistan Air Force)を略してPAFに納品されました。
だから、裏蓋にはPAFの刻印が入ってるんですね。
では、どのようにしてそれが誕生したのかを見て行きましょう。
初代 パキスタン空軍シーマスター
1950年代後半、オメガ社はパキスタン空軍 (PAF) から時計のレイルマスターモデルの注文を受け、その際にパキスタン側は文字盤のモデル名を「シーマスター」に変更するよう要求しました。
よって、文字盤には「シーマスター」の署名があり、本来のこの時計のリファレンスはランチェロのCK2996なのですが、このようにしてランチェロスタイルの初代シーマスターが誕生しました。
ランチェロはスモセコがスタンダードモデルでしたが、センターセコンドバージョンも存在するみたいです。
ちなみに、ランチェロとレイルマスターの簡単な見分け方はランチェロがスモセコで、レイルマスターがセンターセコンドです。
また、レイルマスターのリファレンスを持ったパキスタン軍へ納品されたシーマスターも存在するようで、それはアローハンドが採用されています。
というわけで、初代のベースとなっているのは『ランチェロ』と『レイルマスター』なんですね。
初代の特徴は、そう言った背景があることから文字盤には『seamaster』とだけ記載してあり30の数字はありません。
ムーブメントは、30mmキャリバーCal.284か285が搭載されています。
実際には、このランチェロやレイルマスターのシーマスターの数は、かなり少なく、ほとんど資料を集めることはできませんでした。
ですが、搭載されているムーブメントや1962年にシーマスター30が発売されたことを考えると、このモデルがファーストだと思われます。
2代目 パキスタン軍シーマスター
そして、次期型であるシーマスター30 Ref.135.007が1963年頃からに再度パキスタン空軍から、オメガ社に注文されます。
搭載しているキャリバーは、Cal.286でありこれはCal.269のセンターセコンド版になります。
1963年に行われた天文台の精度コンクールで、最高精度として認められた名器です。
ちなみに、30mmキャリバーの最終進化系はCal.269でありセンターセコンド版はcal.286になります。
この30mmキャリバーなのですが、精度が高く耐久性もあったためにイギリス陸軍の時計にも採用されたのですが、1960年代になると防水ケースと自動巻の時代が訪れ、ケースに納めることができなくなった30mmのキャリバーは、時代遅れのものとなって行きました。
今の私たちから見れば、赤金メッキでめっちゃかっこいいムーブメントなんですけどね!
文字盤は、初代のシーマスターのデザインを引き継いでおりこちらも、3.6.9.12位置はトライアングルインデックスで、違いと言えば針がバトン針になってることと、semaster 30と初代にはなかった30が追記されているところです。
2代目の裏蓋から、海馬が入るようになりこれが入ることによって、よりシーマスター感が出てきてますよね。
3代目 パキスタン軍シーマスター
3代目は2代目と外観はほとんど同じで、変わりはありません。
変わったところは、ケースとムーブメントです。
1964年にはオメガ社から、シーマスター30の次期型であるシーマスター600が誕生した年です。
この600も600m防水という意味ではなく、600系キャリバーを搭載したモデルという意味になります。
このパキスタン空軍の時計はと言いますと、文字盤にはシーマスター30と記載されてますが、実際に搭載してあるムーブメントはCal.601なのです。
ではムーブメントの詳細を見てみましょう。
Cal.601は耐磁がありつつ、耐久性のある17個の受け石を持つ手巻きムーブメントです。
自動巻きのCal.550から派生させて誕生しCal.600をベースに、手巻き専用モデルとして正常進化した 完成度の高いキャリバーです。
自動巻がベースにあるので、30mmキャリバーよりも直径が小さく薄くなっています。
そのため、裏蓋にも膨らみはなくフラットな裏蓋が採用されています。
4代目? パキスタン軍シーマスター
これは実際には、どんな時計なのかが分からないので微妙な感じで解説して行きます。
1970年代に入ると4代目に変わり、外観もデイデイトが搭載されたりとかなり近代の時計になっていますが、もはや普通のシーマスターと言って良いでしょう。
搭載ムーブメントは、現行のものとほぼ同等の機能が備わった、完成度の高いムーブメントCal.1020が搭載されています。
この4代目なのですが、そのままシーマスターなので時計としての説明はなしとして、裏蓋について見てみましょう。
なんで上矢印(ブロードアローのようなもの)があるんだろう。
と考えてみました。
そもそもは第2時世界大戦までは、インドという国の中にパキスタンも入っており終戦後の1947年にイギリスから独立し、その時にインドの中に入っていたパキスタンが独立しました。(信じる宗教の違いから)
ということで、1970年代にパキスタンがイギリス領であったわけではなく、とっくに独立してるんですね。
というか、その前のモデルでさえもブロードアローらしきマークは入ってないので、イギリスは関係ないはずです。
そういったことを踏まえると、この4代目は本当の4代目なのか作られた4代目なのか、ちょっと微妙な感じになりますよね。
まとめ
今回パキスタン軍に納品されたシーマスターについて解説したのですが、やはり資料が少なく他にもいくつかパキスタン軍に納品されたであろうものが確認できました。
今回は物体が2個以上存在するものだけを取り上げたのですが、1つしか物体がないものが複数あり、それらは分からなかったので流しました。
これは私の推測なのですがおそらく、でかい受注ってわけではなく小ロット(しかも5個とかのレベル)の発注を複数回に分けて発注したと思われるので、オメガ社の方も、不良在庫を組み合わせて作ったらいっか。
みたいな感じになってたのではないかと考えています。
じゃないと、軍用時計としてはチグハグや派生が多いような気がします。
とは言っても、今となってはそんな少数だけパキスタン空軍に納品された腕時計は、そのデザイン製と希少性も相まって高額で取引されているのも事実でし、私の推測なんてその時計がかっこよければどうだった良い話でしょう。
ヴィンテージウォッチとは、このように自分なりに想いを馳せることに楽しみがあるのかもしれませんね。