CWC ビジネスマンが作ったミリタリーウォッチの歴史
初期 CWCの前身
1940年代レイ・メラー(写真右から4番目)は第二次世界大戦時、まだ若く、ザ・ブリッツから逃れるために親戚とともにブリストルで暮らしていました。
彼は貿易船団に属し、大戦中何千回とニューヨークとスコットランドの間を行き来した軍隊輸送船クイーンエリザベスのスタッフとして働いていました。
1950年代から1970年代
戦後、レイはまずカトラリー販売会社に就職し、そして様々な時計ブランドの一員として働きました。
その後彼は、時計専門誌で見つけた小さな募集要項に目を止め、そこでイギリスのの時計の小売業者のネットワークを作る仕事をまかされました。
これがのちのハミルトンです。
彼はハミルトンUKのマネージングディレクターにまでのぼりあげ、多くの小売店を管理し、政府からの多くの契約を勝ち取ったビジネスのMODを開発しました。
CWCのはじまり
1970年から1972年
70年代初頭のクォーツ危機が原因となり、ハミルトンはすべての店舗とオフィスを閉めることを公にしました。
そしてレイはその数か月後、すべての店舗とオフィスを閉め、ハミルトンを去りました。
ほぼ同時期に彼は息子をブリストル大学に連れていき、この道のりで彼自身の時計ブランドのもとでMODを提供するという新しい事業について語っていました。
ブリストルの急な丘の頂上を目指していた時、105フィートにもなる塔を見ました。
1897年にジョン・カボットの航海を記念して建てられた、カボットタワーです。
レイはこの塔を見て、カボットは自分と同じく、ブリストルから新しい事業を始めたのだと思いました。
そこからカボットと名づけたのです。
彼のカボットウォッチ&クロックカンパニーはのちにカボットカンパニーリミテッドに改名しました。
1972年から1980年
キャボットウォッチ&クロックカンパニーが設立され、すぐにカンパニーは軍配給、ミリタリーウォッチの先陣に立ちました。
すべてはレイの、いままでに培ってきた膨大な知識のおかげといえました。
機械式W10の軍との契約は1980年まで続きました。
1970年代から1980年代にかけては機械式パイロット非対称2レジスタークロノグラフもRAF、海軍、パイロットにも支給されました。
これは、プレシスタ、ハミルトン、ニューマークのバージョンと並び「ファブフォー」とよばれるコレクターズアイテムとなっています。
CWCクロノグラフも、BBC(英国放送協会)の従軍記者たちに支給されました。
CWCはBBCやITVで使用されるタイマーやストップウォッチを多く製造しました。
1980年
1980年、CWCはイギリス軍に支給された初のクォーツウォッチであるG10クォーツ(通称ファットボーイ)を製造しました。
同じ年に、1950年代からイギリス海軍に支給され続けたロレックスのミルサブにとって代わり正式な契約を獲得しました。
CWC1980ロイヤルネイビーダイバーオートマティックは、もっとも希少なミルサブといえるでしょう。
回転できるフェノール樹脂製のベゼル、トリチウム発光塗料がほどこされた針と文字盤、32mmのミネラルガラスクリスタル、プルスルーナイロンストラップが装着された固定ストラップバーなどが装備されていました。
内部は丈夫なETA2783でした。
1981年
1981RNオートダイバースウォッチは、1980年のものとはダイヤルの構成とETAムーブメントが異なるものでした。
1982年ーロゴの変更ー
CWCのロゴはシンプルな書体のものに変わりました。
1982年以降、すべてのCWCウォッチには新しい楕円形のロゴをつけて世に送り出されました。
1983年
イギリス海軍の水中処理部隊に、最初のクォーツダイバーズウォッチが支給されました。
この時計は非常に長くイギリス海軍に愛され続けました。
1987年、1988年
プールに拠点を置くイギリス海兵隊から特別なリクエストが舞い込みました。
特殊舟艇部隊に支給されたクォーツ300mダイバーズウォッチです。
CWCはこの契約を得た唯一の会社であり、いまでもイギリス軍の一部にこの時計を支給し続けています。
1980年代後半
CWCは、イギリス艦隊航空隊のためのクロノグラフを製作しました。
これには、ロイヤルネイビーの航空機搭乗員と連邦パイロットにごく少量支給されたバルジュー7765のムーブメントを使用しました。
1990年代
クォーツロイヤルネイビーダイバーズウォッチ、SBS、ストップウォッチ、船舶用の時計や航空機用の時計とともに、1991年には2万個以上のG10サービスウォッチを支給しました。
1990年代半ばには、PDVブラックケースと、特殊舟艇部隊に支給されていたダイバーズウォッチに曜日と日付の機能が加わりました。
1996年
レイはMOD、BBC、ITVや連邦諸国との契約により非常に忙しい日々を送っていました。
そんななか、彼の妻の体調がすぐれなくなり、自身も大きな心臓の手術を受けたこともあり、彼の会社の買い手を探し始めました。
レイは80年代後半から、シルバーマンズ社に、小売り用のG10を卸してきました。
このシルバーマンズ社がCWCを買収しました。
買収後もレイとシルバーマンズ社ととても良好なパートナーシップを築いていきました。
これにより時計業界のノウハウや、MOD契約の知識などを、シルバーマン社のリチャードとマルコムに伝達することができました。
彼らはすでに長年の、CWCウォッチの販売、MODオークションによるCWCウォッチ購入の経験がありました。
レイはアドバイザーという立場にいましたが、ミリタリーウォッチへの愛がシルバーマンズ社と深く関わらせていたようです。
こののちの約15年間、レイはシルバーマンズ社のキャボットオフィスに週3日、またはそれ以上通っていたことがわかっています。
1990年代後半
CWCは、トリチウムダイヤルと機械式ETAムーブメントを備えた機械式W10を再導入し、さらにETA2824-2を使用したオートマチックバージョンも追加しました。
レイ、リチャードとマルコムの3人は、その時求められたMkダイバーオートマチックのRNクォーツオートマチックバージョンも開発しました。
シルバーマンズ社の豊かな小売りの専門知識のおかげで、CWCモデルはさらに広く小売市場にでまわりました。
しかしながら品質とスイスで製造されるということは、軍に支給していたものとほぼ変わらず、それは今日まで続いています。
さらにCWCは、金属製のバンドを備えつけたRAFクォーツクロノグラフをバングラディシュ空軍に支給する権利も勝ち取りました。
2000年
CWCは、ドイツ赤軍にGS2000を支給する権利を得ました。
ドイツ赤軍に支給されたGS2000は、G10とよく似ていますがバッテリーハッチのない密閉式のケースバックとロンダムーブメントが使われています。
これは航空機で使用するためのLダイヤル(スーパールミノバ)でとの指示がありました。
バングラディシュ空軍へのクロノグラフ支給は2000年初期にて終了しました。
2003年
CWCは、1970年代の機械式クロノグラフの復刻版を415個限定で製造しました。
バルジュー7760ムーブメントの改良版とトリチウムダイヤルを使用しているもので、現在とても人気のある製品です。
2005年
CWCは王立工兵連隊との契約に基づいて、SBSダイバーズウォッチを支給しました。
これらにはNATOナンバー6645が刻まれており、この年だけのユニークなものなので蒐集しやすくなっています。
2006年
Tトリチウム塗料の製造の終了を受け、時計業界でTトリチウムペイントのダイヤルがなくなっていったため、CWCもほとんどのダイヤルをLスーパールミノバへ移行しました。
2006年から2014年
CWCの歴史と本物のミリタリーウォッチとしての評価はインターネットとモバイルテクノロジーの普及とともに進展していきました。
このころから政府の大幅な資金削減のため安価なデジタルウォッチが求められ、軍との支給契約はほとんどなくなりました。
とはいえ軍から求められていたものは、頑丈で正確、信頼できるミリタリーウォッチでした。
2015年
CWCは英国海兵隊にブラックSBSダイバーズウォッチの再支給を開始しました。
現在では英国海軍とほかのイギリス軍のほかの部隊にも支給しています。
2017年
1980ロイヤルネイビークリアランスダイバーウォッチの復刻版が発表されました。
2019年
CWCは1983クォーツロイヤルネイビーダイバーズのリメイクと1987SBSブラックダイバーズの復刻版を発表しました。
2020年
CWCは1980RNクリアランスダイバーズウォッチの記念限定版を、英国海軍の潜水部隊メンバーと元メンバーのために制作しました。
2020年はMellor-72 W10の復刻版を発表した年でもあります。
Mellorと同じケースを使用したT20はMODに指定された時計でしたが、G10ケースは初期の厚いクォーツムーブメントのために選ばれました。
2021年
現在、CWCはイギリス軍に時計とCWCストラップを支給し続けています。
CWCの、 "Strap Watch Wrist Nylon"はNATOストラップの正式名称です。
長年グレイで世に送り出されており、CWC SBSウォッチはこのグレイで特許を取得しています。
CWCは、この50年間に、平和な時も争いが起こっているときにも数百数千ものミリタリーウォッチを製造し続けてきました。
CWCの時計はイギリス軍のすべての軍種で使われています。
CWCの時計は固定ストラップバーに至るまですべて軍用規格に基づいて製造されています。
これはいまでも同じくCWCの基準となっています。
パフォーマンス向上のためアップグレードや機能の強化も行っています。
G10GSサファイアは、防水機能を水深200mまでのばし、サファイアガラスとエイトイヤーリチウムバッテリーのモジュールが装備されました。
多くの初期の時計は、戦争時の軍での使用を経ていまでも時を刻んでいます。
これこそが耐久性の証といえるでしょう。
いくつかのCWCウォッチはとても希少なものとなり、魅力的なコレクターズアイテムとしてオークションにかけられるようになりました。
現在もCWCウォッチはすべてのミリタリーウォッチと同じ品質と耐久性を備えています。