Time Speck: ミリタリーウォッチの暗号を読み解く
どうも、こんにちは。
ヴィンテージウォッチライフの妹尾です。
今日のこの動画では、基礎知識がないと難しいミリタリーウォッチの数字や、記号についてこれだけ知ってればある程度理解できますよ!
という内容でお話しして参ります。
ミリタリーウォッチが、市販の時計と異なる興味深くておもしろい特徴の一つが、発行マークです。
これらの数字や記号は、時には文字盤に、またほとんどの場合は裏蓋に表示されており、さまざまな意味が含まれています。
長い数字列は、その時計がどこで作られたか、どのように使われたか、いつ作られたかなど、その時計に関する重要な情報を教えてくれます。
この動画では、軍用および政府発行の時計の発行マークの大部分を解読するためのクイックガイドとして、主要なマークと、各マークに関するいくつかの例をご紹介します。
この動画を最後までご覧頂くことで、あなたが今後出会うミリタリーウォッチのほとんどの発行マークについて、基本的な理解ができるようになるはずです。
目次はこのようになっております
1.シリアルナンバー
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それでは早速やって参りましょう。
シリアルナンバー
これは、すべての発行された時計の中で最も一般的な発行マークです。
シリアルナンバーは、個々の時計に与えられたナンバーで、在庫やメンテナンスのシステムにて個々の時計を追跡することができるようになっています。
例えば、000-0000は4月1日に支給され12月1日に1度目のオーバーホールが行われた。
などの管理ができるということですね。
シリアルナンバーはほとんどの場合、裏蓋に刻印されており、発行元の調達方法によっては複数のシリアルナンバーが存在する場合もあります。
軍用に作られ、一般に販売されない時計は、1つのシリアルナンバーしかないことが多い一方で、市販の時計や軍用に改造された時計は、メーカーと発行元の両方のシリアルナンバーがあることがあります。
時計によっては、シリアルナンバーが同じメーカーの市販の時計と区別するための、唯一の目印となるものもあります。
左から:
U.S. BENRUS TYPE 1, STERILE - シリアルナンバーはケースの裏にのみ刻印されています。
BRITISH CWC G10 - シリアルナンバーは下から2行目です。
FRENCH MARINE NATIONALE CASIO G-SHOCK DW -9000 - 市販のものと異なるのはシリアルナンバーのみ。
日付
もうひとつ、発行された時計の裏蓋のマークで非常によく見られるのが日付です。
シンプルなようで、シリアルナンバーに比べると少し分かりにくいのがこのマークです。
軍用時計に刻印される日付マークはいくつかの意味を持ちますが、そのほとんどは、発行機関が製造元から時計を受け取った日付を意味します。
時計は政府の在庫として数ヶ月から数年間保管されることがあるため、時計の日付は、それを着用した兵士、船員、または飛行士への実際の支給日を反映していない場合があります。
同様に、製造業者に発注された年を示す日付マークもあります。
この場合、最初の契約に基づきそこから何年間もその時計が製造されたとしても、裏蓋には最初の契約日が表示されます。
最後に、時計が製造された年を示す日付マークもあります。
これもまた、その時計が実際にいつ誰の手元に届いたのかをわかりにくくさせる原因となっています。
残念ながら実際に、時計に使用者に与えられた日付が刻印されているものは少なく、コレクターは他の方法でそれを推論するしかありません。
左から:
RCAF BREITLING - 契約日 "67"
RAF JLC MK XI - 購入日 "53"
U.S. HAMILTON MIL -W- 46374A - 日付"NOVEMBER 1972"
在庫ナンバー
契約品と在庫を追跡することは、どのような大きな組織でもそうであるように、軍事においてもとても重要なプロセスです。
数十年にわたる調達で、何百万ものアイテムを追跡しなくてはならないため、米国政府は、購入し所有するすべてのものを追跡するための数値システムを開発しました。
そして1953年、政府のFederal Stock Numberシステムの使用が始まりました。
このシステムは、場所固有の数字を含む、11桁の数字で物の種類と特定の物自体を定義するものです。
1974年、このコードは正式に国際化され、さらに2桁の数字が追加されて、品物の登録国を示すようになりました。
現在ではコードは13桁となり、ナショナル・ストック・ナンバー・システム(National Stock Number System)と改名されました。
国際的には、この番号はNATO Stock Numberと呼ばれ、NATO加盟国30カ国と非加盟国約30カ国における主要な分類システムとなっています。
ヨーロッパの国々が、全部NATOに入ってるわけではなく非加盟国もあるのですが非加盟国もNATO Stock Numberで軍事用品を管理してるですね。
(2022年7月現在『フィンランド』と『スウェーデン』も正式にNATOに加わる事になりました)
NSN (National Stock Number)の最初の6桁は、その品物が何であるか、どこで登録されたかを意味します。
ではこちらの図の赤枠で囲ってる部分をご覧ください↓
つまり、同じタイプのアイテムは、いつどこでコード化されたかに関わらず、多くの数字が同じになるのです。
少し分かりにくいと思いますが、例えばイギリスの軍用時計であれば、最初のスタートは6645-99になるという事ですね。
ではそれぞれの数字について、それが何を表しているのかをもっと詳しく解説して参ります。
こちらの図解をご覧ください↓
最初の2桁は、Federal Supply Group(連邦供給グループ:FSG)と呼ばれ、品目の全体的なカテゴリーを意味しています。
ほとんどの時計の場合、FSGは "66 - 計器および実験装置 "です。
FSG(連邦供給グループ)の次は2桁のFederal Supply Class (連邦補給品クラス:FSC)が加わり、これで品目のカテゴリはさらに狭くなります。
そのうち、時計は「45」で規定されており"検査機器"を表します。
よって軍用時計の場合、FSCは"6645 - 時間測定器 "となります。
さらに次の2桁はCountry Code(国コード:CC)で、これはその品目を最初に契約し、コード化した国を意味するものです。
ミリタリーウォッチによく見られる代表的なCCは、
・アメリカ=「00」と「01」
・ドイツ=「12」
・オーストラリア=「66」
・イギリスは「99」
です。
国コードの全リストは、NATOのWebサイトをご覧ください。
FSGとFSCを閲覧するには、米国国防物流庁のWebサイトが良いでしょう。
NSNの最後の7桁はアイテムナンバーで、そのアイテム固有の番号です。
※注意
シリアルナンバーと、アイテムナンバーの違いには注意してください。
シリアルナンバーはそれぞれの時計に固有であるのに対し、アイテムナンバーはそのタイプで作られたすべての時計(1つの契約において供給されたすべての時計)で同じです。
このアイテムナンバーによって、正確に1種類の時計(またはその他のコード化された機器)が特定されます。
米軍や政府機関が軍隊に直接時計を支給することはほとんどありませんが、メーカーは現在でも時計を供給し、その時計にはNSNを付与しています。
NSNを取得することで、その時計は調達システムに組み込まれ、部隊は個人またはグループで時計の発注を行うことができるようになります。
1990年代までナビゲーターモデルやフィールドモデルを米軍に支給していたMarathon社の時計は、現在でも市販の時計にNSNを刻印しています。
左から:
SWEDISH AIR FORCE LEMANIA TG 195 - 3つの王冠の彫刻
GERMAN BLANCPAIN FIFTY FATHOMS - “BUND”の刻印
BRITISH IWC MK XI - ブロードアロー(PHEON)の彫刻
最後に繰り返しになりますが、全部が全部このコードが入ってるわけではなく、これが規定されたのが1974年の事なのでそれ以降に作られたミリタリーウォッチに上記のコードが入っております。
政府マーク
政府マークは、これまでのものとは少し異なっています。
裏蓋に刻印されるのではなく、文字盤にプリントされている可能性が高いのです。
政府マークは、時計を発行した国や政府を特定し、その時計が政府の所有物であることを示す目的で付けられます。
言葉、イニシャル、記号を用いたマークが最も一般的で、単語やイニシャルは、通常、発行国または政府軍を表します。
例えば、「U.S.」はアメリカ合衆国、「BUND」はドイツ連邦軍または連邦防衛軍を表します。
同様に記号も、発行元の政府を表し、政府の所有物であることを示すために使われます。
最も有名なのはブロードアローで、17世紀のイギリスにおいて政府(王室)の所有物であることを示すために使われていました。
ミリタリーウォッチのコレクターにはお馴染みのマークで、この広矢はほぼ全ての英国製ミリタリーウォッチの文字盤や裏蓋に描かれています。
左から:
IRANIAN SEIKO 7005 - 「ARMY OF THE SHAH」の文字盤テキスト
BRITISH IWC MK XI - ブロードアローの文字盤印刷
SAAF LEMANIA 1872 - ブロードアローの文字盤
その他のマーク
上記でご紹介したリストですべての発行マークを網羅したわけではありませんが、ほとんどのミリタリーウォッチを特定するための基本的な知識として役立ってくれるはずです。
その他にも、発行された時計に時々見られるマークをいくつか紹介します。
契約タイプ
発行された時計は、様々な方法で購入することができ、時にはその購入方法は時計を特定することもあります。
MIL企画(MIL-SPEC)やアーミー・トレード・パターン(ATP)といった規格が例として挙げられます。
契約ナンバー
上記タイプと同様に、時計のバッチを購入するために使用される特定の契約ナンバーが時計に記載されている場合があります。
1960年代と1970年代のBenrusの時計が良い例で、米軍のサプライヤーが様々な契約に基づいて購入したものです。
購入または発行部門/支部/ユニット
時計のバッチが注文されたとき、メーカーや政府関係者は、時計を注文した人をより具体的に特定することがありました。
現代の英国のシステムが良い例で、多くの場合、最初にバッチを注文(または支払い)した軍の支部を指定します。
通常、NSNの前に3桁または4桁の数字で購入部門を指定します。
英国空軍は「6BB」、英国陸軍は「W10」、英国海軍は「0552」、英国海兵隊は「0555」です。
しかし紛らわしいことに、このような時計は、必要に応じて他の支部にも発行されている可能性があります。
支部名は、購入した支部を意味するだけです。
製造者部品ナンバー
政府の在庫ナンバーと同様に、製造者部品ナンバーによって、製造者の生産システム内でアイテムを追跡することができます。
いかがでしたでしょうか。
これであなたはミリタリーウォッチの発行マークの暗号を解読することができるはずです。
さぁ、あなたの心を動かす新たなミリタリーウォッチを探しましょう!