機械式時計・手巻き時計 機械式時計・手巻き時計 リューズについて
リューズとは巻き真に固着されている突起のことを言います。海外ではCROWN(クラウン)と呼びます。
リューズは漢字にすると「竜頭」もしくは「龍頭」と書きます。
多くの方が外来語の音を漢字で当てたと思っていらっしゃるのではないかと思いますが、竜頭はれっきとした日本語です。
由来は「竜生九子」のひとつである「蒲牢」という中国神話の怪物から来ています。蒲牢は吼えることを好むとされています。
蒲牢が吼えるのは鯨を襲っている時と逆に襲われている時と言われています。
またほかに、蒲牢に襲われた鯨が吼えていて、それを蒲牢が好むとも言い伝えられています。そのためお寺などで見かける、梵鐘などの釣鐘のてっぺんにある、吊るすための紐部分の飾りとなり、鐘の音を大きく響かせるのを手伝うとされました。
この鈕の事を日本では「竜頭」と呼んだのです。
鐘繋がりで時計の装飾に蒲牢が施されていたのが、腕時計のゼンマイ巻きの装飾になり、簡素化されて竜の装飾は無くなり、言葉だけが残ったというわけです。
さて、リューズはゼンマイを巻き上げたり、引き出せば針を回して時刻調整やカレンダーの日にち調整などをしたりする、時計の中でも重要な部位です。
特に手巻き式時計の場合はリューズを回すことによって、ゼンマイを巻き上げなければいけないので、極めて重要といえるでしょう。
その切り替えの主要部分になるのが「ツヅミ車」、「オシドリ」、「カンヌキ」という3つの部品になります。
ツヅミ車は中心に穴が空いており、その穴に巻き真が通っています。そのため、私たちがリューズを回せば、それに連動してツヅミ車も回り、ゼンマイの巻き上げや時刻調整が出来るという仕組みになっているわけです。
オシドリはリューズを押したり引いたりする動きに合わせて動きます。
その動きをカンヌキへと伝え、ツヅミ車の位置を移動させます。カンヌキはツヅミ車の溝に入っていて、オシドリの動き連動してツヅミ車をキチ車(主ゼンマイを回す時に連動して動く歯車)や小鉄車(針を回す時に連動して動く歯車)と噛み合わせる位置に移動させる役目を担っています。
ゼンマイの巻き上げはリューズをもっとも押し込んだ状態で行います。
このとき、ツヅミ車はオシドリとカンヌキの作用でキチ車と噛み合っている状態にあります。
キチ車が回るとキチ車にまた噛み合っている丸穴車が回り、丸穴車が回ると角穴車が回り、角穴車が回ると香箱芯が回ると主ゼンマイが巻き付いてきて、その力によって、香箱車が動き、時計が動き始めるのです。
なお、主ゼンマイをただ巻き上げただけでは、主ゼンマイはリューズから手を放した瞬間に逆回転してしまうので、その逆回転を抑えるために角穴車に噛み合うように付けられたコハゼという逆回転防止装置がついています。
このように機械式時計は幾多もの部品によって成り立っているのです。
簡単に説明しただけでもリューズの重要性をお分かりいただけたと思います。そのためお手入れも非常に重要になってきます。
時計のケース本体、バンドなどはセーム革や布などで拭いてお手入れする方も多いかと思いますが、リューズまでお手入れする方はなかなかいらっしゃらないのではないでしょうか。
リューズもお手入れの際に掃除してあげましょう。
皆さんの想像している以上に時計は汚れているものです。
それはリューズもまた然りです。
リューズとリューズガードの間は布などではなかなか入っていかず汚れがとれないので、毛先の柔らかな歯ブラシなどで磨いて汚れを落としましょう。
そしてリューズは最後に必ず締め上げます。特に防水時計などではきっちり締め上げないと、防水の機能が損なわれてしまいます。
締め上げるといっても、最後にリューズがこれ以上回らなくなった状態にほんの少しキュッとするだけで大丈夫です。ほんの少し、気持ち程度で十分です。ここで力を入れてしまうとパッキンを傷め、交換しなければならなくなり、無駄で高額な修理費用がかかることになります。
力の加減がわからない場合は迷わず時計店のスタッフに聞いてマスターしましょう。