イタリア空軍が採用したクロノグラフTIPO CP-1/CP-2(ユニバーサルジュネーブ、レオニダス、ゼニス、ブライトリング)
動画でイタリア空軍のクロノグラフをご覧になる方はこちら↓
イメージできるイタリアの時計ブランドはそんなにないと思われますが、第二次世界大戦が終わった後のイタリア軍に支給された腕時計は、ハイスペックで素晴らしい時計ばかりです。
記事を5つのパートに分けると
1.CP-1/CP-2/TIPOって何?
2.ユニバーサルジュネーブの時計解説
3.レオニダスの時計解説
4.ゼニスの時計解説
5.ブライトリングの時計解説
6.まとめ
となっております。
イタリア軍に納品したそれぞれのクロノグラフの魅力
イタリア軍に時計を納品した会社は、4社あります。
1.ユニバーサルジュネーブ
2.レオニダス
3.ゼニス
4.ブライトイング
これらはどれも「クロノグラフスペシャリスト」と呼ばれるほどの技術を持った、私たちもよく知っている有名スイス時計メーカーです。
レオニダスは、日本ではあまり馴染みはありませんがホイヤーの兄弟会社にあたり、さまざまクロノグラフを生み出しています。
1950年代から1970年代にかけて、この4社はイタリア空軍向けにクロノグラフを製造していました。
TIPO CP-1 / TIPO CP-2とは!?
「TIPO」とはイタリア語で「タイプ・型」を意味します。
「CP」とは「Cronometro da Polso」(クロノメトロ・ダ・ポルソ)、つまり「腕時計」のことです。
1960年代になると、イタリア軍向けクロノグラフの仕様はTIPO CP-1に変わり、ほどなくTIPO CP-2に変わりました。
CP-1とCP-2の大きな違いは、そのケースサイズです。
CP-1の39mmに対してCP-2は43mmと、非常に大きくなっています。
CP-1はレオニダスとブライトリング
CP-2はレオニダス、ユニバーサルジュネーブ、ゼニス
が製造しました。
A. Cairelliのロゴの意味は?
ここからは、時計のロゴに入っているカイレリー社(A. Cairelli)について解説して参ります。
A. Cairelli社は1920年代にイタリア・ローマで時計修理店として開業し、1932年から、イタリア空軍といくつかのスイス時メーカーの取引を仲介をする代理店の役割を果たしました。
A. Cairelli社が取引仲介したのは、ユニバーサルジュネーブとゼニスの2社でした。
このような理由で、この2社のイタリア空軍向けクロノグラフの文字盤には「A. Cairelli Roma」のロゴが印刷されています。
ユニバーサルジュネーブ(Universal Geneve)A. Cairelli TIPO HA-1
最初に、イタリア空軍として出てくる時計とは違った、特殊な時計を解説させて頂きます。
それがユニバーサルジュネーブ A. Cairelli TIPO HA-1です。
この時計は、1953年ごろイタリア空軍に納品されました。
ですので、CP-1の前の規格ですね。
このクロノグラフは、地中海沿岸で哨戒機を操縦するパイロットに支給されました。
哨戒機ってのは、船は当たり前なんですが潜水艦を見つける飛行機のことですね。
こんな感じの特殊な飛行機を、一度は見たことあると思うんですが潜水艦から発せられる電磁波の微細は乱れを検知して探す飛行機のことです。
時計の特徴なのですが、夜間飛行中でも問題なく時間を確認できるようにケースサイズは45mmととても大きく作られ、視認性を確保されています。
白の文字盤に黒のアラビア数字、6時方向には「A. Cairelli」の名前が印刷されています。
針は青焼きのブレゲ針です。
24時間時計であることも、大きな特徴です。
2レジスターで、3時方向に16分積算計が、9時方向にスモールセコンドが配置されています。
ムーブメントは手巻き式17石のバルジュー55です。
フライバック機構、スップリトセコンド機能を搭載しています。
※出典:クリスティーズ
スプリットセコンドとは、2本のクロノグラフ秒針が同時に作動することにより、全体の時間だけでなく途中のラップタイムも測れる機能のことです。
クロノグラフをスタートさせると2本のクロノグラフ秒針が一緒に動き出し、ラップタイムを測るために途中で止めると1本のクロノグラフ秒針だけが止まり、もう片方のクロノグラフ秒針は動き続けます。
ラップタイムを確認しもう一度プッシャーを押すと、止まっていたクロノグラフ秒針が動き続けているクロノグラフ秒針に追いつき、また一緒に動き出すのです。
こんな感じですね。
このクロノグラフのボタンはリューズ部分のワンプッシュになっており、真ん中のプッシャーを押すとクロノグラフをスタート/ストップすることができ、上のプッシャーを押すとスプリットセコンド機能を作動させることができます。
ユニバーサルジュネーブ A. Cairelli TIPO HA-1は元々の数量がとても少なく、とても貴重なミリタリークロノグラフとなっています。
ケースの材質はステンレススチール、ケースバックはスナップ式で、イタリア空軍のものであることを示す「AMI(アエロナウティカ・ミリタリー・イタリアーナ・Aeronautica Militare Italiana.)」と言う文字がケースバックに彫り込まれています。
※出典:クリスティーズ
そして、CP-1を外してCP-2の製造に取り掛かります。
ユニバーサルジュネーブ A. Cairelli TIPO CP-2
TIPO CP-2の中でも特に珍しく特に美しいクロノグラフだと言われているのがユニバーサルジュネーブのA.Cairelli TIPO CP-2です。
文字盤6時方向には「A. Cairelli Roma」と印刷されています。
ムーブメントは手巻き17石のキャリバー285Pを搭載しております。
ユニバーサルジュネーブは、今はあまり目立つブランドではありませんが、クオーツショックが起きる前までに作られた時計は非常に素晴らしく、そのムーブメントも自社で作っているところが大きな魅力だと思われます。
では次にTIPO CP-1,2のレオニダスを解説して参ります。
レオニダス(Leonidas)TIPO CP-1、TIPO CP-2
レオニダスのCP-1 / CP-2クロノグラフは、1960年代に製造されました。
イタリア空軍が定めた仕様CP-1はすぐにCP-2に変更されたため、レオニダスCP-1は非常に数が少なく、コレクターの憧れとなっています。
レオニダスCP-1 / CP-2とも、マットブラックの文字盤に大きなアラビア数字が配置され、ベゼルは回転式です。
2レジスターで3時方向に30分積算計が、9時方向にスモールセコンドが配置されています。
ムーブメントは手巻き17石のバルジュー22にフライバック機能を搭載させたCal.222を搭載しております。
また、同じムーブムントを搭載してるのが、フランス空軍のタイプ20に納品されたブレゲ、ドダンヌ、エイランがあります。
ですが、フランス空軍用の時計にはハック機能はありませんが、イタリア空軍のもの、今回のレオニダスのクロノグラフですね。
これには、ハック機能が搭載されております。
ハック機能ってのは、リューズを引いた時に秒針も止まる機能のことですね。
また、ケースには頑丈なクラムシェルケース方式が採用され、防水機能が強化されています。
クラムシェルケースというのは、裏蓋にビス留めされているものになります。
レオニダスCP-2は43mmの大きなサイズが特徴です。
サイズが大きくなっただけで、デザインにほとんど違いはありません。
CP-2はCP-1に比べて数は多いですが、それでも貴重なミリタリークロノグラフとなっています。
レオニダスは後にホイヤーと合併、ホイヤーがタグ・ホイヤーになった時点で、社名は消滅してしまいました。
ですが、このようにめっちゃかっこいいクロノグラフを残してるんですね!
ゼニス(Zenith)A. Cairelli TIPO CP-2
先述の通り、ゼニスはA. Cairelli社を通してイタリア空軍に時計を納入していました。
文字盤は黒のラッカーダイアルで、バトン型の針にはトリチウム発光塗料が塗られています。
文字盤に印刷された「A. Cairelli Roma」のロゴがそのつながりを物語っていますよね。
ムーブメントは手巻き17石のゼニス・Cal.146DPを搭載しております。
このキャリバーは、ゼニスが1959年に買収した『マーテル社』が開発したキャリバーです。
その後、先ほど出てきたユニバーサルジュネーブがこのムーブメントの原型を採用し、そのユニバーサルのムーブメントをベースに、ゼニスとモバードが共同開発したものです。
表面にはロジウムメッキが施され、
裏蓋は二重構造になっており、耐衝撃性能、耐磁気性能、ホコリの侵入を防ぐカバーが付いています。
ケースは艶出しのステンレススチール製、ケースバックはスクリュー式です。
全部で2500個ほどのゼニスCP-2が製造されましたが、すべての納入が終わる前に、イタリア空軍が注文をキャンセルしたと言われています。
そこでA. Cairelli社は、手元に残ったゼニスCP-2を一般向けに販売しました。
イタリア空軍に納入されたゼニスCP-2のケースバックには、イタリア空軍を示す「AMI」の文字と、まれに、イタリア海軍を示す「MM」(Matricola Militare・マトリコラ・ミリタリー)の文字が彫り込まれています。
一般向けに販売された、ゼニスCP-2のケースバックにはその文字は彫り込まれておらず、「CRONOMETRO - TIPO CO-2 - A. CAIRELLI-ROMA」とだけ彫り込まれています。
ブライトリング(Breitling)CP-1 Ref.817
最後は、今回紹介する中で最も希少なクロノグラフ、ブライトリング CP-1 Ref.817です。
文字盤のブライトリングのロゴの下に『817』という数字がありますが、これはリファレンスナンバーの817を表しています。
ブライトリング CP-1 Ref.817は、1974年から1975年にかけて、イタリア空軍のヘリコプターパイロット向けに製造されました。
39mmと小さいながらも、すっきりとした黒のダイアルは視認性に優れ、機能性第一に作られたことがわかります。
オリジナルブレスレットは、日本製の伸縮性メタルブレスレットが採用されています。
両方向回転式のベゼルは、アルミニウム製で風防はアクリル風防です。
ケースはステンレススチール製で、ケースバックはスクリュー式です。
ケースバックに彫られている文字「E.I.(Esercito Italiano・エーザーチト・イタリアーノ)」は「イタリア軍」を意味しています。
ムーブメントは手巻き式17石のバルジュー236を搭載しています。
バルジュー236なのですが、軍用時計に積極的に採用されたのか、カナダ空軍のワンプッシュクロノグラフも同じキャリバーが使われています。
500個から1000個製造されたと言われていますが、現在確認されている個体は31個しかありません。
現存数が少ないのは、発光塗料に使われたラジウムが禁止されたため、その多くが破壊されたからだと言われています。
そして2016年、イタリア国防省はさらに40個のブライトリングRef.817を競売にかけました。
政府が時計を直接競売にかけるのはとても珍しいことです。
この40個はヘリコプターパイロットではなく、空挺部隊に支給されていました。
そんな理由から、この40個はイタリア空挺旅団「Folgore(フォルゴーレ)」の名前をとって、「Folgore Forty(フォルゴーレ・フォーティ)」という愛称で呼ばれています。
まとめ
今日はこんな感じで、イタリア空軍のミリタリーパイロットウォッチをご紹介させて頂きました。
私たちが今でも憧れのブランドである、ゼニスやブライトリングが納品してることによって、ミリタリーウォッチに興味のない方でも親近感を得られると思います。
また、空軍に採用される時計なのでケースも、ムーブメントも文字盤もしっかりした構造で作られいて堅牢性を感じることができるのも嬉しいですよね。
イタリア空軍の時計は、あまり市場に出てくることがなく、手に入れるのは難しいと思いますがCP-2は40mmを超えるケースサイズなので、大きな時計が好きな方にとっては最高の逸品かと思われます。