オメガ シーマスターの歴史と歴代モデル解説
オメガ 歴代シーマスターの魅力を動画でご覧になる方はこちらから↓
オメガのシーマスターを見ていくと、seamasterの後ろにいろんな数字が出てきます。
そして、その数字=防水の数字と捉えがちですが実は違います。
このややこしさは、どのようにして生まれたのか?
これはシーマスターの歴史を紐解いていくと分かってきます。
まず先に、ここだけは聞いて頂きたいので大事なことを先に解説します。
・シーマスター30=30mmキャリバー搭載モデルのこと
・シーマスター60=60M防水機能搭載
・シーマスター120=120M防水機能搭載
・シーマスター200=200M防水機能搭載
・シーマスター600=キャリバー600系搭載モデルのこと
・シーマスター600プロプロフ=600M防水機能搭載
・シーマスター6000プラネットオーシャン=600M防水機能搭載
・シーマスター1000プロフェッショナル=1000M 防水機能搭載
・シーマスターコスミック2000=ただのモデル名
要するに、そのまま防水の数字を表しているものと、その他の数字を表してるものが混在してるからややこしくなってるんですね。
今日のこの記事は、そんなややこしいシーマスターのそれぞれの魅力を、誕生年順に解説して参りますのでこの記事を見終わった頃には、シーマスターについて80%はご理解頂けてると思いますので是非とも最後までお付き合い下さい。
それでは早速やって参りましょう。
オメガ シーマスターの誕生
私たちがイメージするシーマスターは、プロダイバー向けの本格的なモデルですが一番最初に出てきたシーマスターは、普通の時計に防水機能が搭載されたものです。
初代は1948年に登場したのですが、今出てるこのカタログのようなコンステレーションみたいな感じだったんですね。
その背景にあるのが、ダーティダースのオメガの時計になります。
まず、防水が求められたのはイギリス陸軍による要望であり、その防水機能が民間に降りてくることによって、シーマスターに搭載されたのです。
感覚的には、イギリス軍に納品したダーティーダースを白文字盤にして、ラグジュアリーにした感じですかね。
よって、当初の売り出し方は『街に、海に、郊外に』どこにでも身に着けていける、オールラウンドモデルとして売り出されたのでした。
1stシーマスターはセンターセコンドタイプがスタンダード・モデルとして発売され、スモールセコンドタイプがクロノメーター仕様として発売されました。
よって、防水機能もあるとはいえ1954年のスイス時計研究所の検査では「60m防水クリア」というものでした。
とは言っても、60m防水もあれば十分なんですけどね。
このときには、まだ seamasterの後ろには数字は入っていません。
そして、その後に本格的なダイバーズモデルの『シーマスター300』が1955年に誕生したのです。
1955年 シーマスター300誕生
※シーマスター300 Ref.2913のムーブメント Cal.501
1953年には、ブランパンが世界初のダイバーズウォッチとなるフィフティ・ファゾムスを発表し、その翌年にはロレックスがサブマリーナーを発表したことで、長時間の水中での使用に耐える腕時計の必要性が明らかになりました。
精度や技術力で高い評価を得ていたオメガ社は、この新しいダイバーズのカテゴリーにやや遅れをとり、水中でのプロフェッショナルの使用に特化した全く新しい腕時計を開発する必要があったのです。
そしてシーマスター300が、実際にプロフェッショナルダイバー用時計として世に出てきたのは、発表から2年後の1957年になってからでした。
シーマスター300の最初のリファレンスは『CK2913』でキャリバーは自動巻Cal.501が搭載されており、70年代中頃までの生産が続いたので、いくつかのモデルチェンジが行われました。
CK2913だけでも、8パターンのバリエーションが存在するのでここでは全部を紹介できませんが、その特徴は分針か時針がアローハンドになっていることです。
CK2913の次には、ST14755が誕生します。
針がペンシル針に変わり、秒針が矢印ポインター付きになります。
搭載ムーブメントは自動巻Cal.552です。
また1964年には、全く新しいデザインのシーマスター300を発表しました。
3世代目で、デイトありなしモデルが誕生し、日付表示なしは『Ref.165.024』
日付表示ありは『166.024』になります。
シーマスター300のケース径は39mmから42mmに拡大し、特徴的な薄型ベゼルは、より厚みのあるベゼルに変更され、全周に個別の分マーキングが施されるようになりました。
針もペンシル針から、大きな剣型の針が採用されました。
第3世代の「オメガ シーマスター300」は、第1世代よりも大きな成功を収め、数年間にわたり英国海軍の軍人に支給される時計という栄誉を得ました。
第3世代のシーマスター300の生産は1970年中頃まで続きましたが、オメガ社は「シーマスター300」の製造を中止し、代わりにシーマスター コレクションの中でリリースされる、他のダイビングウォッチを製造することを決定しました。
2014年、オメガは「シーマスター300」の名を復活させた「シーマスター300 マスターコーアクシャル」という名前で、1957年の初代「シーマスター300」をほとんど同じスタイルで復活させました。
このように現在、当時の300が復刻していますがこのデザインこそがシーマスターの原点であり、最高傑作と言っていいでしょう。
シーマスター300については、こちらの記事で詳しく解説しておりますので、興味のある方はご覧ください↓
ここからは、そこから派生して行ったシーマスターコレクションモデルを、年代順にご紹介して参ります。
1962年 シーマスター30誕生
シーマスター30が発表されたのは1962年のことです。
モデル名の「30」は防水性能の深さではなく、ムーブメントの大きさを表しています。
オメガの30mmキャリバーは非常に人気があり、20世紀半ばに大量に生産されるようになりました。
最初の「シーマスター30」には、42時間のパワーリザーブとスイープセコンドを備えたキャリバー286が搭載されました。
これはCal.30の進化形であり、センターセコンド版のムーブメントになります。
細いバーインデックスと、装飾のないすっきりとしたダイアルという全体的な美しさは、コンステレーションを含む、他のオメガのドレスウォッチに似ています。
発売当初のシーマスター30は、ドレスウォッチとスポーツウォッチの両方が存在しましたが、やがてドレスウォッチを完全に廃止しスポーツウォッチだけが残りました。
初期のシーマスターには、時刻表示のみのモデルや、3時位置に日付窓がある少し複雑なモデルなど、さまざまな構成のモデルがあります。
シーマスター30は、製造時から壊れないように作ってあるために、状態が良いものが多く、大体12万円以下で購入することができます。
ブラックダイヤルのシーマスターは、シルバーダイヤルのモデルの大体2倍の価格で販売されています。
さらにその上をいくのが、パキスタン空軍とイギリス飛行軍曹のミリタリーウォッチです。
これらの時計は、レイルマスターを彷彿とさせるインデックスが特徴で、希少性が高い時計です。
これらの本質的なスペックは、英国陸軍に支給されたW.W.W.(リストウォッチ・ウォータープルーフ)ウォッチをベースにしています。
パキスタン空軍用の方は、裏蓋にそれを意味するP.A.F(パキスタン・エアー・フォース)が刻印されており、こちらの方が一般的に出回りますが、それでも数が少ないので大体80万円程度になります。
もう一方のイギリス飛行軍曹用なのですが、キプロスとシンガポールに駐在していたイギリス人飛行軍曹に向けて作られたもので、R.A.F.(ロイヤル・エアー・フォース)の刻印と個体番号とその持ち主の名前が入っています。
こちらの画像からは、少し分かりにくいかもしれませんが一番右にある、赤い矢印の部分にRFAと刻印が入っております。
軍曹向けの時計は、ほとんど市場に出てくることがないため、価格も不明です。
ベーシックなモデルが10万円程度で購入できるシーマスター30は、デザイン、ムーブメント、そしてブランドの伝統に対して見たときに、価値とコストパフォーマンスは圧倒的に良いでしょう。
シンプルな時間表示のみのモデルから、実際に採用されたミリタリーモデルまで幅広く、初心者から、個人のコレクションを充実させたいニッチなコレクターまで、興味深い選択肢を提供してくれるでしょう。
1964年 シーマスター600誕生
シーマスター600は、30と同様の理由からその名前がつけられてるので、600m防水ではありません。(外観からそれは分かると思うのですが)
搭載されてるムーブメントは、600番台でありCal.601とCal.611が搭載されております。
1966年 シーマスター120誕生
1955年に発表された、プロダイバー向けシーマスター300の成功により、オメガは120m防水の小型モデルをデザインし、大型モデルのDNAを継承しながらも、より低価格で手にすることができる、シーマスター120を発売しました。
このシーマスター 120は、クッション型37mmトノーケースがデフォルトですが、ボーイズサイズも展開があり31mmがあります。
※ オメガ シーマスター120 37mmバージョン
シーマスター120の特筆すべき点は、オメガ初の日付表示付きダイバーズウォッチであったことです。
そして、これが消費者にも受けたことでこのデイト表示を、別のモデルにも派生させていくことになります。
シーマスター120のデイト表示導入から1年後、デイト表示機能はオメガの高級モデルであるシーマスター300にも搭載されました。
シーマスター120については、こちらの動画で詳しく解説しておりますので、興味のある方はこちらの動画もご覧ください↓
1969年 シーマスター60誕生
60m防水のシーマスターですが、60m表記ありとなしモデルが存在しブラック、ダークブルー、ワインレッドの3種類のカラーバリエーションで生産されました。
このケースは、1960年代にオメガがよく使用していたケースメーカーのひとつであるラ・セントラル・ボワットで製造されたもので、スピードマスターの一部にもケースを共通で使用されています。
シーマスター 60の魅力といえばやはり "ビッグクラウン "でしょう。
このモデルはダイバーズとしては、控えめなサイズではあるもののほとんどの男性に着用できる、37mmのケースが採用された美しいダイバーズです。
他のシーマスターの多くは、本格的なダイバーをターゲットにしていたため、実用的なスペックを高めるために、より大きくがっしりとしたサイズになっていました。
その反面、シーマスター60 はビッグクラウンが搭載されてますが、本格的なダイバーズウォッチとして開発されたものではありません。
このモデルは、シュノーケリングやそれほど深くない場所でのダイビングに最適な時計として開発されました。
よってオメガはこの時計を60m防水としてテストし、それゆえ「シーマスター60」という名前が付けられたのでした。
シーマスター120や300と比較すると、防水機能としては見劣りします。
しかし、その性能の低さを補うのがデザインであり、特徴的な特大リュウズ、プラベゼルは、かなりの個性を与えていると言えるでしょう。
最初は、ケースに対してリューズが大きすぎるように見えるかもしれませんが、見れば見るほど、視覚的に大きな揺さぶりをかけていることに気がつきます。
ビッグクラウン "というニックネームがついたのもそのためです。
一見シンプルに見える1つの要素が組み合わさり、全体の美観に決定的な影響を与えていることはとても魅力的です。
1971年 シーマスター600プロプロフ誕生
1960年代後半になると、水中探査、海上での石油掘削建設やメンテナンス、スキューバダイビング、ウォータースポーツ、海軍の特殊部隊などの用途で、水中時計の需要が増加した。
特に民間でのダイビングがブームとなり、フランスを中心に一般の人々が深く潜ることを趣味としていた時代です。
そこでオメガ社は、堅牢で防水性が高く、視認性に優れ、信頼性の高い、高水深対応の時計を開発し、1969年のバーゼルファアでデビューさせたのです。
実際に1970年、民間のダイバーズ会社・COMEX社のダイバーの腕につけて、毎日4時間ずつ合計8日間の作業に関わっておりますし、ガルフ石油が行った海底油田調査の時にも使用されたことでも有名です。
この時はまたプロトタイプだったのですが、1971年4月に本格的に小売販売されたのがシーマスター600プロプロフでした。
他のシーマスターとの違いは、プロプロフが付くところにありこの意味は、「Plongeur Professionnel/プロンジュナー・プロフェッセネル」「プロのダイバー」を意味します。
このように、プロフェッショナル向けの優れたダイバーズウォッチでありながらも、時代のブームに乗り小売市場でも大きな支持を得ていたのでした。
このモデルは、オメガ社が初めて採用したモノコックケースを採用したモデルであり、ケースの左側にリューズ、右側にある赤いプッシュボタンはベゼルの回転防止を解除するものです。
この形が通常のスタイルであり、反対バージョンもあるのですがこれがレフティー(左利き用)になります。
そして、翌年にはさらに防水機能を向上させたシーマスター1000プロプロフが誕生したのです。
今回の記事では、シーマスター1000プロプロフの話は省略します。
1972年 シーマスタープロプロフ1000誕生
1988年 シーマスター200誕生
現行モデルシーマスター300の前身となるモデルで、コレクターの間では「プレボンド」と呼ばれるレトロなモデルです。
クォーツ、スチールとツートーンゴールド、オート、ミッドサイズ、フルサイズ、ブラックとシャンパンダイヤル、メルセデス針とバトン針など、様々なモデル形態がありました。
1987年から1995年まで製造されましたが、1993年のシーマスター300 マスタークロノメーター『ボンド」シーマスター300』の発売と同時に、実質的に置き換えられることとなりました。
他の多くのオメガのラインと同様、シーマスター200も、その深海での資質をアピールするイベントが行われました。
オメガの公式サイトによると、
"1988年7月25日、フランスの科学潜水艦ノーティルが大西洋中部の海面下4,400メートル(新記録)に潜り、地震変化を監視する設備を設置するIFREMER Faré(イフリーマー)ミッションにシーマスター プロフェッショナル200メートル キャリバー1111が参加した "
とあります。
ここでも実際にオメガのシーマスターは、海で仕事をするのには外せない時計であることを証明して見せたのでした。
なのですが、個人的にこのシーマスタ−200のデザインは正直微妙なので、別のSHOMモデルについて解説します。
これまでのモデルのほとんどは、楕円形のケースデザインを共有していましたが、SHOMはその系譜を辿らず、強く角ばったケースが採用されています。
「シーマスター 200」の派生系ではありますが、そのデザインはもう別物です。
車で表現すると、フルモデルチェンジに当たるくらい違います。
EPSA社製のスウェーデン鋼の一枚板でケースは作られ、ブラックダイアルに視認性の高いインデックス、剣針、水深200m/660ftの表示が施されています。
名前の由来は、フランスの海洋研究機関であるSHOM(Service Hydrographique et Océanographique de la Marine/海軍水路海洋学局)でありこの会社は、公式な海洋地図や海図を発行する専門機関で、ダイバーズウォッチに興味を示していたのです。
SHOMは、あらゆる選択肢を検討し、ある一定の要件を満たした上で、オメガにシーマスター200の問い合わせをしました。
その結果、公式使用のために民間用の200とは別のモデルを製造することが決まり、それを裏蓋から安易に分かるように「SHOM」の文字が刻まれたのでした。
そして、このモデルはフランス軍に注目されることになります。
SHOMに選ばれたことで、その性能が認められフランス海兵隊も、このモデルを公式時計として採用したのです。
その結果、ダイバーユニットで使用するための公式時計として、さらに多くのモデルが納入されました。
政府機関によって認定された時計であるために、ケースバックには「MN79」
このMNはMarine Nationale(マリーン・ナショナル)のことであり、つまりフランス海軍を意味しています。
その後の79は、フランス海軍の公式な任命日でありこれが刻まれたことで、「シーマスター 200」はまたひとつ有名になったのです。
そして、このモデルより後のシーマスターは、映画007のジェームズ・ボンドと関係のあるボンドモデルと呼ばれ今の私たちで新品で購入することができる、シーマスターに繋がっていくんですね。
まとめ
シーマスターはそのシリーズが多すぎて、全部紹介するとややこしくなるので、今回の記事ではクロノグラフは飛ばしました。
防水性能に差があるとはいえども、シーマスター(他のダイバーズウォッチもそうですが)その防水性能を使うシーンというのはほとんどないでしょう。
おそらく、この記事をご覧になってる方のほとんどは、その専門職についてないでしょうからね。
それを踏まえて、ヴィンテージのシーマスターのいいところは、一般モデルであればかなり安く手にすることができますし、50〜70万円出せば本格的ダイバーモデルを選べることだと思います。
新しい時計もいいですが、このようにヴィンテージまで含めて見ると選べる幅は大きく広がっていきます。
この記事をきっかけに、今持ってる方はより愛着を持ち、これから手にする方はその魅力が少しでもご理解して頂けたら幸いです。