ドイツ空軍 第二次世界大戦で使用されたBウォッチの歴史と魅力

時計のデザインには、戦争の試練に耐えるだけでなく、本来の機能を超え名作となるものがあります。

そんな中でも、BウォッチのタイプA タイプBはコレクター固唾のアイテムではないでしょうか。

Bウォッチとは、ドイツ軍が第二次世界大戦時に『空軍』に支給された腕時計のことを言います。

その特徴は、なんと言っても現代のサイズに置き換えても超大型のケース径が55mmであるということです。

本日は、そんな魅力的なBウォッチについて、解説して参ります。

 

ラコ ヴィンテージBウオッチ

動画を5つのパートに分けると

1.Bウォッチの歴史

2.Bウォッチ タイプAとタイプBの違い

3.全て国産Bウォッチ

4.ムーブメントだけスイス製のBウォッチ

5.裏蓋に書かれている刻印を理解する

 

最後にまとめとなっております。

それでは早速やって参りましょう。

 

 

ドイツ空軍Bウォッチの歴史

Bウォッチ(Baobachtungs-Uhr/バオ・バストウゥン・ビーウワー)は、観測用の時計という意味であり、英国の時計職人によって18世紀に開発された海洋時計がルーツであると考えられており、航海ナビゲーションにおける重要な役割を果たしていました。

そして、この時計は『ドイツ』と『スイス』の一流時計メーカーが生み出した傑作と言って良いでしょう。 

文法的な説明としはB-Uhrは単数形で、B-Uhrenは複数形です。

 

Bウォッチはドイツ軍が所有するものであり、飛行前に空軍の中の『偵察機パイロット部隊』に支給され、任務終了後に返却する必要がありました。

 

これらの時計は、作戦遂行時に正確な時間の把握が必要だった為、全品ドイツ海軍天文台(Deutsche Seewarte)の最高クロノメーター規格で規制・検査されていました。

  このように、時計メーカー各社は、軍が規定した厳密なスペックシートに基づいて製造をしました。

そのため完成したBウォッチは製造元が違えども、すべて外装やデザインは完璧なまでに同じ仕様に統一されているのです。

 

その仕様は次の通りです。

Bウオッチスペックシート

・アラビア数字とバーインデックスを備えるマットな黒文字盤

・ケースは直径55mmのアルミニウムを使用

・ケースのカラーはグレー

・数字/針の部分に夜光塗料を使うこと

・センターセコンドであること

 

加えて、分厚いパイロットスーツの上からでも装着できるよう、ベルトはとても長く、1枚革からできています。

その他にも、リューズは手袋をしたままでも回すことができる大きな玉ねぎ型のリューズであり、海軍のスモセコと比較して、ずっと見やすいセンターセコンドへの変更もBウォッチならではの特徴でした。

他の国の空軍用の時計も、共通してセンターセコンドが採用されていることから、いかに秒針の視認性が重要視されていたかが分かりますよね。

このようにBウォッチは、完璧なナビゲーションとして必要不可欠な時計として、技術力のある会社に製造を任されていくこととなります。

 

当時ドイツ4社、スイス1社の計5社が『Bウォッチ』をドイツ軍に供給していました。

 

ドイツでは

・A.ランゲ&ゾーネ

・ヴェンペ

・ラコ(ラッハー&カンパニー/デュロエ)

・ウォルター・ストルツ(ストワ)

4社が製造に携わり、型番は「FL23883」としました。

それぞれのケースの側面には、型番であるFL23883と刻印されています。

Bウォッチの側面の刻印 『FL23883』

FLはフリーガーを意味し、23はナビゲーションウォッチであることを表しています。

 

ではここからは、それらのタイプAとタイプBを比較してみてみましょう。

 

BウォッチのタイプAとタイプBの違い

Bウォッチ タイプAとタイプBの比較

Bウォッチの文字盤には2種類あり、タイプAと分表示があるタイプBがあります。

 

タイプ111まではアラビア数字インデックスを配し、12時位置だけ三角ポインターと両端にドットになっております。

タイプは、内側が時間表示で外側が分表示なっております。

おそらくなのですが、タイプAは短針と長針の長さに違いがあっても、飛行中の状態で順次に見分けることができなかったのだと思います。

よって、タイプBに変わると、短針がかなり短くなって内円に時間表示をさせるデザインになってるのではないかと考えております。 

それぞれ黒い文字盤に、反対色の白いアラビア数字を配することで、視認性は確実にありますよね。

 

では、ここからはそれぞれのブランドについて見てみましょう。

 

全て国産Bウォッチ

製造当初は、ランゲとラコが生産の中心を担っていたのですが、1938年ヴェンペがハンブルグのクロノメーター工房を買収したことにより、生産能力が大幅に向上し、『ランゲ』と『ラコ』の限られた生産量を補えるようになりました。 

それから3年後の1941年に、TYPE Bのスペックシートが完成し、ランゲ社とラコ社がTYPE Bの製造を開始します。

ですので、ランゲとラコはTYPE AとTYPE Bが存在するんですよね。

ランゲはcal.48cal.48.1を使用し、ラコは(デュロエ)cal.5を使用し、この2社だけがドイツの自社製ムーブメントを使用しています。

 

ランゲゾーネ Bウォッチ

ラコ Bウォッチ

 

  

ムーブメントだけスイス製のBウォッチ

『ヴェンペ』と『ストワ』はスイス製ムーブメントを使い、ヴェンペはトーメン社製cal.31を、ストワはユニタス社製cal.2812を採用しました。

Bウォッチ ヴェンぺ
Bウォッチ ストワ

 

また、少数ではありますが、枢軸国軍(スウジツコクグン)と連合国軍の両方に時計を供給していたスイスの国際時計会社IWCが、ドイツ空軍のためにBウォッチcal.52T S.C.)を製造していました。

本当に少数だったために、今残ってる時計はドイツ系の時計よりも圧倒的に少ないようです。

IWC-Bウォッチ タイプA

 そして、ここでパイロット用の腕時計製造のノウハウを習得したIWCは、後のマーク11にそれらの技術を継承させていくのでした。

 

マーク11については、こちらで詳しく解説しておりますのでお時間のある際にご覧ください↓

 

Bウォッチを製造していたのは、この5社だけになります。

それではここからは、裏蓋に書かれている刻印を見てみましょう。 

 

裏蓋に書かれている刻印を理解する 

Bウオッチケースバック内側

スナップオフ式のケースバックの内側には、色々なことが書かれていますが、規則性がありますので、それを理解していれば問題ありません。

・デザインタイプ(Bauart)製造会社のこと

・製造番号(Gerät-Nr

・ムーブメント(Werk-Bez

ムーブメントのキャリバーナンバーではないみたいです。

詳細は調べてみたのですが、分かりませんでした。

・注文番号(Anforderz

・メーカー(Hersteller

という識別情報が刻印されていました。

 

これらの時計メーカーが生み出した斬新なデザインは、後に壮絶な人気を博すことになります。

 

IWCの「ビッグ・パイロット」は、BウォッチのDNAを受け継ぎながら、そのデザインをアレンジして進化させたモデルです。

 

航空宇宙産業のために作られたこの時計は、耐磁機能を備えており、これは現行の時計では唯一のものです。

ラコはムーブメントの種類を豊富に取り揃え、入手しやすい価格帯を実現していますが、中でもETA社製の手巻きムーブメントを搭載した時計は注目に値します。

 

文字盤のデザイン、ケースサイドに刻まれたFL23883など、細部に至るまでオリジナルウォッチのデザインを丁寧に再現し、いわばリプロダクションと呼ぶべきモデルとなっています。

 

これらのラコの時計サイズは42mm45mmです。サファイアクリスタル、リベット付きレザーストラップ、優れた輝度、タイプABのモデルが揃っています。

 現在、入手可能なランゲやヴェンペのBウォッチは戦時中のヴィンテージウォッチですが、どれも非常に高額なものでコレクターの間で大変人気が高くそこには確かな理由があると言えるでしょう。

Bウオッチ モダンラコ

 

まとめ

最後にまとめなのですが、当時としては機能を追求した結果このようなデザインが採用されたのだと思いますが、今となっては機能面よりもそのサイズ感や無骨さが魅力ポイントになっているのではないでしょうか。

当時のものは基本的には、手に入れることは非常に難しいですがコレクションに取り入れたい1本であるのは、間違いありませんよね。

今日はこんな感じで、Bウォッチについて解説させて頂きました。