ドイツ軍が使っていたヴィンテージミリタリーウォッチ総まとめ(第2次世界大戦編)

イギリス、ロシアを抜き、世界最強まで後一歩の地位まで上り詰めた、第2次世界大戦中のドイツ。

そんな急成長する国の軍人は、どんな時計を身につけていたのでしょうか。

今日はそんな、あまりフォーカスの当たらないドイツ軍のミリタリーウォッチを、第2次世界大戦頃をメインに『陸軍』『海軍』『空軍』に分けて解説して参ります。


それでは早速参りましょう。

5つのパートに分けると

1.ドイツ軍の軍隊組織編成
2.陸軍の時計の特徴
3.海軍の時計の特徴
4.空軍用クロノグラフを作った2社の簡単な歴史

4-1.ハンハルトの歴史

4-2.グラスヒュッテ・チュチマの歴史

5.ハンハルトのクロノグラフの特徴

6.チュチマのクロノグラフの特徴

最後に『まとめ』となっております。

 

動画でご覧になりたい方はこちらから↓

 

ドイツ軍 ヴィンテージミリタリーウォッチの特徴解説

 

ドイツ軍の軍隊の組織編成

まずは当時のドイツ軍の組織編成をご紹介します。

これを理解しておかないと、現代の話とごっちゃになって分からなくなってしまいますからね。

第一次世界大戦の戦場が、ヨーロッパをメインに展開されていたことによってヨーロッパの先進国である、イギリス、ドイツ、フランスなどの国は航空戦の重要性を理解しいち早く空軍という組織を作ります。

それがイギリス(1918年)・イタリア(1923年)・フィンランド(1928年)・フランス(1934年)・ドイツ(1935年)でした。

ちなみにソ連は一番早く、1917年に編成されています。 

ですので、第2次世界大戦が始まる前にこれらの国は独自に『空軍』という独立した組織を持っており、ヨーロッパの国々の空軍用クロノグラフは超高級機なんですね。

よって、ヨーロッパの方では比較的早く『陸軍』『海軍』『空軍』の組織が明確に区分けされていました。

 

ではここからは、ドイツ陸軍にフォーカスしてお話を進めていきますね。

 

ドイツ陸軍の時計の特徴

イギリス軍は、明確にミルスペックを要求したダーティダースを作りましたので、12ブランドで構成されていても、それらの時計に微妙な違いはあるものの、基本的にはロゴが違うだけで、分かりやすいです。

イギリス陸軍の時計については、こちらの動画で解説しておりますので、お時間のある際にご覧くださませ↓

しかし、ドイツ軍はと言いますと、そういったダーティダースなどの規格がなく、時計ブランドの選別もされていません。

代表的なブランドがいくつかはあるものの、いろんなブランドからドイツ軍を表す刻印が入ってる時計が残っており、戦時中の混乱の中で急いでかき集めた感があります。

 

先ほど出てきた、ドイツ軍を表す刻印なのですがこれは『DH』になります。

DHというのは、「Deutsche Heer」(ドイチェッツ・ヒヤー)の略で「Deutsche」は制式時計の意味で、「Heer」は陸軍を意味しています。

ドイツ国内で製造されたもの以外の陸軍モデルには、この刻印が入っております。

それではドイツ陸軍が扱っていた、代表的なブランドをご紹介していきますね。

1.『MIMO』

ジラール・ペルゴはある程度ご存知の方はいらっしゃると思いますが、MIMOというのはジラールペルゴのヨーロッパ向けブランドネームです。

実際の時計を見てみると、イギリス軍が使っていたダーティダースに酷似していますよね。

夜行塗料の配置や、スモセコ、ミニッツトラックとほとんど一緒ですが、違うところといえば、ブロードアローのマークがないくらいですかね。

第2次世界大戦中 ドイツ軍の腕時計 MIMO

第2次世界大戦中 ドイツ軍の腕時計 MIMOの裏面の刻印『DH』

2.『ミネルバ』

ミネルバもほとんどMIMOと同じスタイルの時計を、ドイツ陸軍に納品してるのですが、針が違うだけでほとんどが同じスタイルで作られていますよね。

裏蓋に『BODEN EDELSTAHL』という刻印が入っていますが、これはドイツ語でBODENが裏という意味で、EDELSTAHLがステンレスという意味でありステンレス製裏蓋ということですね。


第2次世界大戦中 ドイツ陸軍に納品されたミネルバのミリタリーウォッチ

第2次世界大戦中 ドイツ陸軍に納品されたミネルバのミリタリーウォッチ DHの刻印

 

3. 『レビュー・スポーツ』

今のレビュー・トーメンですが、スイスの時計ブランドなんですよね。

こちらは同社の『シュポルト』というモデルがあるのですが、それをそのまま軍用時計として扱ったものです。

ですので、民間用の時計を軍用として採用したということですね。

ドイツ陸軍が使用していた レビュースポーツ腕時計

ドイツ陸軍が使用していた レビュースポーツ腕時計の裏面『DH』の刻印

 

4.『レコード』

レコード ドイツ軍用ミリタリーウォッチ

レコード ドイツ軍用ミリタリーウォッチ DHの刻印

レコード社といえば、イギリス軍に納品したダーティダースの中の1社ですが、意外にもドイツ軍にも納品してるんですね。

しかも、同じ時計ではなく文字盤のデザインを変えています。

基本的にこういったミリタリーウォッチは、納品数に対して戦時の混乱からキャンセルになった時に、刻印を打ち消して残った在庫を別の国に渡すことをされていました。

しかし、今回の時計はイギリス軍のものと比較するとデザインが異なるため、明確にドイツ軍用に新しく作られているものみたいです。

陸軍の時計は、まだまだたくさんのブランドが納品してるのですが、あげるとキリがないので、これくらいにしておきますね。

判断基準としては、裏蓋にDHの刻印が入っていれば、それはドイツ陸軍のものということですね。

 

 

ドイツ海軍の時計の特徴

ドイツ海軍が使用した時計は、案外分かりやすいです。

基本的に文字盤には、『KM』と入っています。

このKMは、Kriegs marineであり意味は、『ドイツ帝国海軍』になります。

陸軍は敵軍に、時計によって狙いを定められないようにするめに、マットな黒文字盤がスタンダードですが、海軍用はほとんどが白文字盤です。

これは、海の上なので個人が狙われるという可能性は低く、それよりも船内においての時計の視認性を向上させるためです。

KMのロゴが入った、時計なのですがいろんな会社から納品されていますが、代表的な会社といえばアルピナ社になります。

ドイツ海軍用腕時計 KM592 アルピナ社製

KMの下に592という数字がありますよね。

この592というのは、キャリバーの数字なんです。

ですので、アルピナ社のキャリバー592が搭載されていますよって意味ですね。

ではどこから、アルピナ社製かと分かるのかと言いますと、ムーブメントにしっかりとアルピナと刻印が入ってますよね。

ドイツ海軍用腕時計 KM592 アルピナ社製 ムーブメント

このように、文字盤からは、ぱっと見どのこのメーカーか分からなくても、ムーブメントで判断できるんですね。

ちなみに、592だけでなく他の数字も存在します。

そして、こちらはゼントラ社から納品された時計なのですが、キャリバーナンバーの表記がなくブランドロゴが入っています。

ドイツ海軍用腕時計 KM592 ゼントラ社製

 では、ここからはですね空軍が使用した時計を紹介する前に、ドイツ空軍に向けて時計を納品していた2社の歴史を振り返ってみてましょう。

 

ハンハルト

ドイツ空軍用にクロノグラフを納品した会社は、2社あるのですがまず先に創業を開始したハンハルトとはどんな会社なのか!?

というのを解説して参ります。 

創業は1882年であり、スイスとドイツの国境沿いの街『ディースゼン・ホーフェンス』に『ヨハン・アドルフ・ハンハルト』が時計店を開いたのが始まりです。

創業はスイスですが、1902年に拠点をドイツにあるシュヴェニンゲン移します。

1924年には、世界で初めて日常使用できる手頃なストップウオッチを完成させていることから、技術力の高い会社だったと分かりますよね。

その次に大きな転機を迎えるのですが、Cal.40を搭載したワンプッシュクロノグラフを1938年に開発すると、これを契機として腕時計の本格的な製造をスタートします。


翌年にはCal.41搭載の2プッシュ型パイロットクロノグラフと、タキメーターとテレメーターの両方を備えた幻の時計「タキテレ」も発表されました。

タキテレは、文字盤にタキメーターとテレメーターを搭載したもので、市場に出回ることはほとんどなく、製造数もかなり制限されていたものだと考えられます。

時間を正確に測定できる、クロノグラフを開発したことにより、パイロットや海軍兵士に愛用され、第2時世界大戦で使用されることになります。

  

グラスヒュッテ・チュチマ

 

それでは2社目のチュチマという会社がどうやって、創業されたのかを解説します。

1926年、ザクセン銀行からの依頼を受けて弁護士業をしていた『エルンスト・クルツ』はDPUG(ドイツ精密時計会社グラスヒュッテ)の破産に伴い、再建を任命されます。

この再建時に、2つのグループに再編されます。

それが

 

1.UROFA Uhren Rohwerke Fabrik Glashütte AG

(ドイツムーヴメント製造会社グラスヒュッテ)

ムーヴメント製造を請け負う

 

2.UFAG Glashütte Uhrenfabrik AG

(グラスヒュッテ時計会社)

ケースやリューズなど外装部品の製造を担う。組みたて。

 

です。

この2グループに再編され、同年エルンストがそのまま創業者としてトップに立ち、新生チュチマが誕生します。

 

そして31年には、チュチマブランドとして売り出すことになったのです。

 

しかし、このチュチマというワードはここまででは一度も出てきてませんよね。

じゃあ、どこからこの『チュチマ』というワードが出てきたかと言いますと、時計の最終工程を担当していたUFAG(組立する方の会社ですね)の中でも高品質である時計に与えられるラベルとして使われたのが『チュチマ』だったんですね。

時計をたくさん作っても、精度が高いやつもあるけど微妙なやつもあるんですよね。

それを区別するためのチュチマってことですね。

ですので、グラスヒュッテという会社が製造した時計の中の、チュチマ品質の時計ということで、グラスヒュッテ・チュチマという名前になったんですね。

  

ハンハルトのクロノグラフを見てみよう

ここからはですね、それぞれのブランドがどのようなクロノグラフを作ってきたのか!?というのを実際の時計を見ながら解説していきます。

まずハンハルトの、初期型を見てみましょう。

ハンハルト 初期型

初期型の1つ目の特徴は、素材がまだ真鍮にニッケルメッキが主流の時代だったので、ケース、裏蓋ともにそれらの素材で作られています。

よって、この頃のドイツのクロノグラフは、ニッケルメッキが剥がれて下地の真鍮が見えてることから金色に見えるんですね。

 

 

2つ目の特徴は、ベゼルトップは三角マーカーであることです。

ハンハルト 初期型 三角マーカーベゼル

このベゼルは、両方向回転式であり本来であれば赤いペイントが施されているのですが、もう80年前の時計ですのでどの個体を見てもペイントが残ってるものはありません。

  

では次に、初期型から『ファースト』と『セカンド』の改善点を解説します。

初期型からの変更点は、ケースはそのまま真鍮にニッケルメッキが引き継がれていますが、裏蓋だけがステンレスになったことです。

裏蓋にも金色に見える部分があり、真鍮で作られているのが分かりますよね。

後期には先ほど説明した、『BODEN EDELSTAHL』の刻印がありますよね。

その下にある、『WASSERGESCHÜTZT STOSSFEST』は防水性の意味になります。

ハンハルト 初期型と『ファースト&セカンド』の裏蓋の比較

※初期型 裏蓋の比較

 

そして、三角マーカーも外されエッジの一部を削って、そこに赤いマーカーを入れるという簡素なデザインに変更されています。

 

 

ハンハルト 初期型と『ファースト&セカンド』のベゼルの比較

※ベゼルのマーカーデザイン比較

 

ファーストがワンプッシュボタンであり、セカンドになると2プッシュボタンになります。

ハンハルト 初期型と『ファースト&セカンド』の違い 早見表

素材が真鍮で、ニッケルメッキを施していることから、ケースが金色に見えます。裏蓋はステンレスで作られています。

外見はボタンの違いだけで、ほとんど変わりはありません。

では次にムーブメントを見てみましょう。

左がファーストに搭載されたCal.40で右がセカンドに搭載されたCal.41です。

見た目はほとんど変わりませんが、ファーストはコラムホイールのピラーが5枚であるのに対して、セカンドは8枚になっております。

また、ファーストにはなかったブレーキレバーがセカンドから追加されています。

 

ハンハルト Cal.40とCal.41の比較

では次に、デザインを見てみましょう。

左側がスムースベゼルで、右側がコインエッジベゼルになります。

ハンハルト スムースベゼルとコインエッジベゼルに刻印されているKM

使用する組織によって、デザインが違うものが配給されたかどうかは定かではありませんが、スムースベゼルは海軍へ、コインエッジベゼルは空軍へ納品されたと言われています。

ただし、分類されていたのが本当であるのであれば、空軍用として採用されてるコインエッジベゼルタイプのクロノグラフなのに、KMロゴが入ってるものも存在するので、おそらく空軍用のを海軍用に回したのではないかと思います。

 

 

グラスヒュッテ・チュチマのクロノグラフを見てみよう

グラスヒュッテ・チュチマ クロノグラフ

ハンハルトには、さまざまなパターンが存在しましたがチュチマは、多くはありません。

まず、初期型の特徴は先ほどのハンハルトと同じで、三角マーカー、裏蓋の素材も真鍮で作られており、改善点は三角マーカーの排除と裏蓋のステンレス化です。

ハンハルトのムーブメントより、少し小さいためにケースのサイズも小さく39mmです。

 

チュチマのムーブメントは、1つしかなくCal.59です。

グラスヒュッテ・チュチマ Cal.59

ハンハルトは、セカンドモデルになって2プッシュボタンになってから、フライバック機能が搭載されましたが、チュチマの方は最初からフライバック機能が搭載されていました。

そして、チュチマの方にはこのように、チュチマを表すTマークと、Glashütteのロゴがないパターンも存在します。

グラスヒュッテ・チュチマ ロゴなし

基本的には空軍用に作られた時計であり、民間用として作られた時計ではありません。

また、当時は戦争中であったのでわざわざ民間用に作るということもないでしょう。

ですので、ロゴなしを民間用として作ったは考えにくく、こういったロゴを入れなかったモデルは軍とは関係ない別の角度から、戦争を指揮する有識者に配給されたものではないかと考えております。

 

 2社のクロノグラフからわかること

 イギリス空軍が使用した、マーク11のように明確な規格が分かる資料はありませんが、この2社の時計の作りから自分なりにスペックを導き出してみました。

 

1. 黒文字盤のアラビア数字でメモリは反対色の白

2. ラジウム夜光塗料の使用

3. コブラ針の使用

4. ベゼルトップは赤のマーカーで表示すること

5. 受け石(ルビー)を17個使うこと

6. 精度の高いドイツ製の時計であること

 

ではないかなぁ、と考えております。

 

まとめ

今日はこんな感じで、ドイツ軍が第2時世界大戦中に使っていた、ミリタリーウォッチを紹介させていただきました。

やっぱりこの頃のミリタリーウォッチって、イギリス軍の時計が分かりやすいんですよね。

それは、スペックが明確に決まってるのと、納品してたメーカーが今の私たちでも分かる『オメガ』『ジャガー・ルクルト』『IWC』とかなんで、親近感があるし、知ってるブランドだからすぐに良いものって分かるんですよね。

その反面、ドイツ軍の時計ってのはこのミリタリーウォッチの世界に、ぐ〜っと入っていかないと、なかなか良さがわからないところかなぁと思っています。

でもですね、今日ここまで視聴頂いた方はこの動画をきっかけに、ある程度ドイツ軍の時計の特徴を理解して頂けたかと思いますので、少しでも興味を持って頂けたのであれば私も嬉しく思います。