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ジャガールクルトといえば、男性の方であれば大体の方が知ってると思いますが、ロレックスとはポジションが違い、どちらかというと『繊細』とか『職人気質』と言う言葉の方が相性がいいのかなぁと感じております。
この記事をご覧頂ければ、ジャガールクルトの歴史とジャガールクルトの何が凄いのか?
代表的なモデルなどが90%程度でご理解頂けると思いますので、是非とも最後までお付き合いくださいませ。
ジャガールクルトの歴史
ではここからは、簡単にその歴史を紐解いていきましょう。
スイスのジュウ渓谷に誕生したジャガールクルト社ですが、創業は1833年と今から約200年前であり、アントワーヌ・ルクルトが小さな工房を開いたことから始まります。
彼は精密機械の天才であり、10代で複雑機構の製作に成功するなど、類まれな才能を発揮していました。
※出典:ジャガールクルト公式HP
そんな感じで、ルクルトはカナ切削機(歯車切削機『腕時計に使われる非常に小さな歯車のパーツをカナと言います』)や小さな部品をミクロン単位で測定出来るミリオノメーターなどの精密機械を発明し、時計製造の精度を飛躍的に向上させました。
また、工房内に必要な部品を全て自社で製造するマニュファクチュール体制をいち早く確立し、高品質な時計を安定的に生産できる体制を整えたのです。
「鍵なし手巻き時計」を開発したのもアントワーヌ・ルクルトであり、彼の功績がなかったら腕時計の発展歴史はもっと遅れていたと言われています。
エドモンド・ジャガーとの出会い
20世紀に入ると、創業者の孫の『ジャック=ダヴィド・ルクルト』はフランスの時計商である『エドモンド・ジャガー』と出会います。
ジャガーという人物なのですが、1880年にパリで自身の会社を設立しフランス海軍の為の時計職人としてクロノグラフやタキメーター、回転速度計、そして飛行機や自動車の計器類などの精密測定器機の開発を行っていました。
そんなジャガーがデザイン、設計した極薄ムーブメントをスイスの時計ブランド各社に持ち込んだ時に、それを実現出来ると答えることが出来たのはルクルト社だけであり、他の会社では極薄ムーブメントを作ることが出来なかったのです。
このように、美的感覚に優れたジャガーと共に完成させた1.38mmの厚さのCal.145は世界一薄い懐中時計用ムーブメントとなり、後のジャガー・ルクルト社の出発点となったのでした。
ちなみに、こちらは余談なのですがジャガーさんって方はやはり商人でして、時計を売るのに非常に長けていた人物でした。
このルクルト社と共同で作ったムーブメントをカルティエにも見せて、カルティエもルクルト社のムーブメントを採用することになります。
そもそも、カルティエ社も当時は今よりも宝飾品としてのブランドの意識が高く、薄型を実現させるためにも、薄型のムーブメントが欲しかったんですね。
1931年にはスイス人実業家のセザール・ド・トレーの依頼を受けて有名なレベルソが誕生します。
その後1937年に、会社名がジャガー・ルクルトとなり現在に続いております。
3大時計ブランドとの関わり
1866年には、初の本格的なマニュファクチュールとなるルクルト社 (Lecoultre&Cie) を創設し、1888年には従業員が500人を超える規模にまで成長していました。
優れた時計製造技術と、その生産能力を背景に多くのメーカーにムーヴメントを供給し、1902年からはパテック フィリップ向けにムーヴメントの大半を製造することとなります。
先ほどのカルティエもそうなのですが、ジャガールクルトは、その技術力の高さから、パテック・フィリップ、オーデマ・ピゲ、ヴァシュロン・コンスタンタンといった3大時計ブランドにもムーブメントを供給していたんですね。
ですので、ここで一旦話をまとめると最初の頃のジャガールクルト社は"高級エボーシュメーカー"であり、スタートは高品質ムーブメントを製造する会社だったんですね。
当時の3大時計ブランドは、ジャガールクルトから供給されたムーブメントを自社で手を加えて、腕時計の中に搭載させていました。
ではここで、それらの1つの例を見てみましょう。
左側がジャガールクルトのベースムーブメントで、右側がヴァシュロン社が手を加えたものになります。
ジャガールクルトのCal.478と言うムーブメントがありますが、これをベースエボーシュとして、ヴァシュロン・コンスタンタンが仕上げをしたスペシャルムーブメントが、キャリバーP1088/BSになります。
パーツの形状が違うものもありますが、 輪列は同じ箇所に配置されているのが分かりますよね。
ではただ単に、ヴァシュロンは見た目をちょっとだけ変更させているだけなのか?
というと、もちろんそうではありません。
ヴァシュロンで仕上げされることで、5ポジションによる姿勢差調整を施してあります。
よって、精度は完璧に調整され元々のベースムーブメントも凄いのですがを、さらにそれを超えた状態になっているのです。
特筆すべきは、ジュネーブシールに規定された手順で勧められるコート・ト・ジュネーブの装飾の素晴らしさで、ただでさえハイクラスなジャガー・ルクルト社のムーブをさらに磨き上げる事で、より美しい、目でも楽しめるムーブメントになっています。
と言った感じで、今回はヴァシュロンを上げさせて頂きましたが、パテックもオーデマも大体このような感じで、良い物をさらに良く作り直しています。
ジャガールクルトの代表モデル
ではここからは、歴代のジャガールクルトの代表モデルをご覧くださいませ。
1931年 レベルソの開発
レベルソはご存知の方も多いと思いますが、ラテン語で『回転する』と言う意味があります。
その通り、ケースが左右の方向に回転するのですが、これは当時貴族の間で人気になっていたポロと言うスポーツをする際に、強い衝撃で風防が割れないように、競技中は風防を反転させる目的があったのです。
それと同時に、反転させることで金属の部分が表面に現れるので、当時貴族の間では自分の所有するものにイニシャルを入れることが流行っていたので、それが出来る『レベルソ』は貴族の間で人気のモデルとなって行ったのでした。
ちなみに、またカルティエが出てきますがカルティエにも反転ケースがありまして、バスキュラントと言うモデルがあります。
こちらは縦方向に回転するのですが、ジャガールクルトと密接な関係があったからこそ、作れたモデルだと言えるでしょう。
マーク11
マーク11と言えば、IWCをイメージされる方も多いと思いますが、ジャガールクルトも採用されていました。
1946年から生産がスタートしたジャガールクルトのマーク11ですが私が贔屓してみても、IWCの品質には届いてなかったので途中で契約が終了してしまったのも納得ですが、現代から見れば優秀な時計であることに変わりません。
ケースは防水型のスクリューバックになっており、耐磁性を向上させるために、インナーケースが採用されています。
トリプルカレンダー
ジャガー・ルクルトの代表モデルを紹介するときに、トリプルカレンダーは外すことは出来ないでしょう。
第2次世界大戦が終了し、腕時計が一般の人々に浸透し始めると求められる機能も、カレンダー表示のような日常生活で役立つ機能が重要になり、トリプルカレンダーやトリプルカレンダームーンフェイズなどのモデルが様々なブランドから生み出されることとなりました。
こちらジャガールクルトのトリカレは1944年に誕生し、1949年頃まで製造されたと言われています。
元々は3針用ムーブメントであったCal.449をベースに、カレンダー機能を搭載させたのがCal.484になります。
左側の小窓が曜日を表し、右側が月を表しており、外周に31までの数字が配置されていますが、これらは日にちになり赤い針がその日を表しております。
現代版のアップルウォッチではありませんが、当時としてはこの腕時計1つで全ての情報が手に入る機能的な時計だったんですね。
ではこちらの画像もご覧ください↓
こちらもトリカレモデルなのですが、レクタンギュラー型でありムーンの表記も追加されています。
搭載ムーブメントは、Cal.494Aの角形であり限られた空間に曜日、月、ムーンフェイズを実装出来ているところにやはりジャガールクルト社の技術力の高さを伺うことが出来ます。
こちらは非常に希少なモデルなので、なかなかお目にかかれることもありませんが、 1983年に600本限定で復刻モデルが作られているので、狙うのであればこちらの方が現実的かもしれませんね。
ちなみに、こちらの復刻モデルなのですが1949年に全てが製品化されなかったようで、当時のパーツを使用して作られているそうです。
メモボックス
1950年に誕生したメモボックスは、2つの独立したリューズで時刻とアラームを個別に設定できる、アラームウォッチの先駆けとして知られています。
一般的に知られているのは、日付表示付きのモデルで、こちらはバンパー式巻上げとハンマー式アラームを搭載したCal.825モデルです。
現代において、実際にアラームの機能を使うということはほとんどないと思われますが、やはりこのダブルリューズのデザインはヴィンテージらしくかっこいいですね。
製造個数が少ない割にディテール違いのバリエーションが多くあり、現在でもコレクターズ・アイテムになっているモデルです。
2010年には、マスター・メモボックスとして現代に復活されましたが、歴史と伝統を受け継ぎながら、現代的な要素を取り入れており洗練された印象となっております。
ポラリス:メモボックスの進化形
ポラリスは、メモボックスに防水性能を加えたダイバーズウォッチです。
アラーム機能に加え、潜水時間を計測できるなど、よりアクティブなシーンに対応して作られました。
と言いますのも、当時としてはブランパンやロレックスなどから防水時計が誕生し、そこから時計各社も防水時計を作るようになっていったからですね。
実際のスペックなのですが200m防水、回転ベゼル、夜光塗料付きのインデックスと針など、ダイバーズウォッチとしての機能もしっかりと充実しています。
スポーティーなデザインでケース径は42mmもあり、メモボックスとは異なる魅力を持ち、これまた物凄くかっこいいのですが生産数が合計で1714本と言われていますので、実際に手にするのはほぼ不可能と言えるでしょう。
ちなみにこちらのケースなのですが、当時ケースだけを専門に製作していたメーカーであるフランソワ・ボーゲル社のものが採用されているのですが、非常に奥深いメーカーとなっておりますので、気になる方はこちらの動画もご覧ください↓
1958年 ジオフィジック クロノーメーター
ジャガールクルトのジオフィジックは、1958年に登場したモデルで科学者や研究者に向けて開発され、耐磁性、防水性、そして視認性を向上させる為に、夜光塗料を備えています。
とここまで聞いたら、マーク11からの『インジュニア』のように聞こえますが、大体同じものと考えて頂いて問題はないと思います。
ですが、こちらのモデルはクロノメーター化されておりかなりの精度を追求するものでした。
その反面IWCのインジュニアは、耐磁性の方に特化して作られているので、同じようで実は突出させた方向性は違ってるんですね。
先ほど解説したマーク11に搭載されているムーブメントは、「ジオフィジック」とほぼ同等の作りになっていて、スワンネック型の緩急針を備える事で、クロノメーター化させていた点を除けば同じ設計になっているのです。
ちなみに、当時作られたジオフィジックは生産数がかなり少なかったようで、現在では探して見つけることが出来るものではありません。
1992年 マスターコントロール1000
レベルソと並ぶ2大シリーズが「マスターコントロール1000」になります。
1000という数字の意味なのですが、出荷前に行われる精度テストが1000時間に上ることから、このようなモデル名が与えられました。
COSCなど公的な検定機関が行うクロノメーターのテストが約2週間(15日)であることを考えると、1000時間(約6週間)という数字がいかに長く、厳しいものであるかが分かりますね。
さらにマスターコントロールのテストが、クロノメーター試験のやり方と決定的に違う点は、ケーシング、すなわちムーブメントを文字盤、針などの外装部品と共にケースに組み込んだ、完成品の状態でテストを行う点にこそあります。
(クロノメーターはムーブメントのみのテスト)。
4度から40度までの幅広い温度環境における6姿勢差の性能テスト、耐衝撃、耐磁テスト、そして最終的なランニングテストを行います。
機械式時計が精度的に最も問題を生じる機会の多い6週間のうちに、あらゆる場面を想定したテストを行うことによって、マスターコントロールは所有者の腕で長きにわたって、正確な時を刻む腕時計として市場に送り出されることになるのです。
つまりマスターコントロールは、ユーザーの「機械式時計で求められる最高の頑強さと精度を」という要望を満たすと同時に、ジャガー・ルクルトの優れた品質管理を示す媒介としての役割をも同時に果たしているのです。
オメガのマスタークロノメーターと、ロレックスの高精度クロノメーターの2つも組み立て後のテストですが、これらが導入されたのは2014年以降でありジャガールクルトはそれを22年以上前からやっていたんですね。
まとめ
最後にまとめなのですが、ジャガールクルトというブランドは精密機械を作り出す技術力が、他社よりも高いブランドであると言えるでしょう。
その反面、ロレックスやオメガのようなヒストリーがないために、そこまで表に出てくるようなブランドではありません。
しかし、ジャガールクルトというブランドの実力を知っている人は正しく評価をしておりますし、この記事をご覧になってる方も同様だと思います。
素晴らしいモデルやムーブメントであるにも関わらず、値段もまだ手が届く範囲で販売されているので、コレクションしやすいのも嬉しいポイントだと言えるでしょう。
今回紹介出来なかった素晴らしいモデルもたくさんありますので、それらは今後個別で紹介していければと思います。