オメガの永年の人気腕時計モデル『コンステレーション』の歴史
コンステレーションシリーズは66年の歴史を持ち、オメガの中でも最も古いコレクションのひとつです。
1952年に男性用クロノメーターとしてスタートしたこのシリーズは、1950年代のパイパンダイアルから1970年代の超薄型クォーツウォッチに至るまで、数え切れないほどの美的変貌を遂げ、1982年にはコンステレーション・マンハッタンとして統合されました。
今日、コンステレーションの多くのモデルにはマスタークロノメーターが搭載され、ラグジュアリーと精度を両立させるというコンステレーションの原点が受け継がれています。
それでは、ここからはそんなコンステレーションがどのように誕生し、どのようなモデルが展開されて行ったのかを見ていきましょう。
1952年 クロノメーターとしてコンステレーションが誕生
1948年の創業100周年を記念して、オメガは自動巻きムーブメントを搭載した初のクロノメーター認定腕時計「センテナリー」を限定発売しました。
この高精度と実用性を兼ね備えた新型は、世間から好意的な反応を受け、オメガはクロノメーター認定を受けた自動巻き腕時計のコレクションを、増やしていく判断をしたのです。
そしてその4年後である1952年、男性用コンステレーションシリーズを発表したのです。
コンステレーションシリーズの最初のモデルの特徴は、6時位置の上に星と時計の名前である『constellation』が記されていたことです。
ではここからは、コンステレーションの名前が与えられた理由について解説させて頂きますね。
オメガは、1952年に開催された、世界中の時計メーカーが時計の精度を競い合うコンクール「天文台クロノメーターコンクール」で優秀な成績を収めました。
このコンクールでは、様々な姿勢(ポジション)や気温の中、15日間にわたり誤差を検査します。その認定基準値は、日差-4秒~+6秒以内です。
オメガは、このコンクールで優秀な成績を収めたことで、高精度な時計であることが世界中から認められるきっかけとなりました。
そのため、裏蓋の天文台の刻印には、コンステレーションが高精度な時計であることを意味しているとされています。
また、天文台は宇宙や星空の象徴でもあります。
オメガは、コンステレーションを「星座」という意味で名付けており、天文台の刻印は、このコンセプトを表現する意味合いもあります。
では、ムーブメントも見ていきましょう。
最初のモデルにはバンパー・ローターを備えたキャリバー351、352、354が搭載され、4年後にキャリバー500、501、505、そして1966年にはデイト・モデル用のキャリバー561、最終的にはキャリバー564に置き換えられました。
初期の自動巻きバンパームーブメントは、ローターがゼンマイに当たって跳ね返った時に、利用者が感じるわずかな衝撃音からその名が付けられました。
360度フル回転する現代の自動巻きとは異なり、これらのバンパー・ムーブメントのローターは、時計の反対側にある一対のバネを「跳ね飛ばす」ように、大体120度で前後に動きます。
これは、1923年にイギリスの時計師ジョン・ハーウッドが発明した運動エネルギーを蓄積する効果的な方法でした。
12角パイパンダイヤルの由来
1950年代から1960年代にかけて、多くのコンステレーション・ウォッチに採用された珍しい文字盤の特徴は、俗にパイパンダイアルと呼ばれるドーム型のダイアルでした。
中央の盛り上がった部分と、インデックスを配置させる部分には境界線があり、文字盤を逆さまにした時にパイ皿のように見えることからパイパンダイヤルと呼ばれるようになりました。
ちなみに英語ではパイを表す『pie-pan』でありパイ皿という意味になります。
このデザインは、それまでのどのブランドにもなかったオリジナリティがあり、時計に美しさと深みを与えたのでした。
フラットダイヤル、一体型ブレスレットとケース
1960年代半ばになると、パイパンダイヤルは徐々にフラットダイヤルへと移行し、ケースもより近未来的な形状やサイズへと変化していきました。
実際、最初のブレスレットとケースが一体化したモデルは、1969年にデビューしました。
『ケースと一体化したブレスレットを備えた世界初の時計。』
と当時は言われ、1964年にピエール・モワナが発明したシステムとして特許で保護されていました。
(ピエール・モワナという人物は後にオメガ社のCEOになる人物です)
Ref.BA 368.0847はメンズモデル、Ref.BA 768.0803はレディスモデルになります。
1970年代には創造性が広がり、女性用コンステレーションモデルには、半貴石(アクアマリン、トパーズ、アメシストなど)をあしらった文字盤と、豪華なゴールドブロケードブレスレットを備えた超薄型キャリバー700が採用されました。
クオーツショックの到来
クォーツの登場によって衰退した多くの時計ブランドとは異なり、オメガはクォーツ革命を受け入れ、1970年のバーゼルフェアでクォーツキャリバーを搭載した3つのラインナップを発表しました。
そのうちの一つ、『コンステレーション・エレクトロクォーツf8192Hz』は、丸みを帯びた四角いゴールドケースにゴールドの文字盤を備え、電池で動くことを文字盤にも記載し全体的なデザインから、クオーツで動いていることがアピールされています。
オメガ コンステレーション クォーツ F 8192 HZ ref. 196.005(出典:Antiquorum)
当然のことながら、クォーツ・ムーブメントの超薄型の特性は、赤いデジタル表示の宇宙時代風の「タイムコンピューター」、薄型の男性用ドレスウォッチ、半貴石をあしらった派手な女性用ウォッチなど、コンステレーションのまったく新しい先鋭的なデザインに反映されました。
技術の進化は、このオメガのタイムコンピューターTC2、金メッキのデジタルLED腕時計のような、よりエキゾチックなモデルも誕生させた(出典:bukowskis.com)。
コンステレーションが得た”爪”
クオーツショックの時に誕生したコンステレーションから、スタイルは大きく変わっており初代からはかけ離れてしまいましたが、そこからさらに1982年、オメガはコンステレーション・マンハッタンシリーズを発表しました。
このモデルも、クオーツムーブメントを搭載しされていました。(最初のモデルはETA社との共同開発による超薄型キャリバー1422を搭載)
このモデルの特徴は、ケースからダイアル上に伸びる4つのねじ込み式「グリフ」と呼ばれる爪が、3時と9時位置に配置され取り付けられていることです。
この爪は、美的にも魅力的ですが、サファイア風防をケースにしっかりと固定し、防水性を確保するという実用的な役割も果たしています。
オメガ社のデザイナーである『キャロル・ディディスハイム』によってデザインされ、1985年に特許を取得したマンハッタンは、樽型のケースを特徴とし、ゴールドとスチール、そして両金属のコンビネーションで男性女性モデルとして提供されました。
1982年のオメガ・コンステレーション・マンハッタン
最初のマンハッタン・モデルのもうひとつの珍しい特徴は、インデックスが文字盤上に配置されるのではなく、風防に直接描かれていたことです。
このデザインを選択した理由について、デズモンド・ギルフォイルは次のように説明しています。
「デザイン上、風防はケースにしっかりと収まる必要があり、当時の超薄型のトレンドに合わせてベゼルをなくし、薄型にする必要がありました。」1995年までには、文字盤のローマ数字はベゼルに移動していました。
1995年版「オメガ コンステレーション マンハッタン 自動巻き」 カタログ画像
コンステレーション・マンハッタンは、変わったレザーストラップとともに登場しましたが、ヒンジ式リンクの一体型メタルブレスレットで最もよく知られていました。
1995年、コンステレーションは、モデルのシンディ・クロフォード、テニスプレーヤーのマルチナ・ヒンギス、そしてロバート・ワグナーを含むスポーツ界や芸術界の様々な著名人を起用した「マイ・チョイス」キャンペーンでスター的地位を獲得しました。
コンステレーションは、ダイヤモンドの有無にかかわらず、数え切れないほどのバリエーションで登場し、1999年には、女性専用に販売された「クアドラ」と呼ばれる四角いケースも登場しました。
古き良き機械式ムーブメントへ回帰
1984年、クオーツと並んで自動巻きモデルが発表されました。
この時に搭載されたムーブメントは、キャリバー1111であり、これは有名なETA社の主力ムーブメント2892-2をベースにした公認クロノメーター・ムーブメントでした。
このムーブメントは「オメガの危機を救ったムーブメントであり、スイスの高級時計メーカーの多くから、上位モデルのベースとなるムーブメントとして十分な信頼性を備えていると評価されたものでした。
新デザイン 「オメガ コンステレーション ダブルイーグル」(出典:TouchOfmodern)
2003年、オメガ・ヨーロピアン・マスターズ・ゴルフ・トーナメントで発表されたコンステレーション・ダブルイーグルは、オメガ初のコーアクシャル・キャリバー2500を搭載してアップグレードされました。
METAS認定クロノメータームーブメントを搭載した2015年モデルのオメガ コンステレーション グローブマスター。パイパンダイヤルを採用した男性向けのクラシックなコンステレーションスタイルの復活モデル
2015年 コンステレーションはマスタークロノメーターへ
しかし、大きなニュースは2015年にオメガのマスタークロノメーター認定が導入された後に起こりました。
COSCクロノメーター認定に加え、マスタークロノメーター認定はさらに8段階進み、実際の着用状況を再現し、時計の耐磁性と耐水性を保証します。
2015年に初めてグローブマスターに導入され、コンステレーション・ファミリーのパイパンダイヤルのカムバックを飾ったこのモデルは、マスタークロノメーターのステータスが、マンハッタンの29mm機械式バージョンを含むオメガのウォッチ・ファミリー全体に徐々に導入されています。
29mmのマンハッタンモデルはすべて、50時間のパワーリザーブとマスター・クロノメトリー・ステータスを備えた自動巻きムーブメント、キャリバー8700を搭載しています。
日常生活に置き換えると、携帯電話、金属製磁気留め具、ノートパソコン、MRIスキャン、IHコンロ、自動ドアなどから発生する磁場の影響を受けない、極めて実用的な腕時計を女性に提供することになります。
大幅なデザイン改装
2009年、マンハッタンは新しい文字盤、より洗練された爪、最高の着け心地を追求した「モノ・ラン」ブレスレット、新しいバタフライ・クラップなど、フルモデルチェンジを果たした。
また、29mm、28mm、25mm(28mmと25mmはクォーツ・ムーブメントを搭載)の3サイズで女性向けに製造され、マンハッタンは明らかにフェミニンな方向性を示すことになりました。
2009年 オメガ・コンステレーション・マンハッタン
女性向けのコンステレーション・マンハッタン・コレクションは2018年に拡充され、ダイヤモンドの有無、6時位置に変更された日付窓、細くなったラグ、ポリッシュ仕上げのベヴェル、よりスタイリッシュになったスケルトン針、さまざまな文字盤の選択肢など、多くのモデルが登場しました。
長年のブランドアンバサダーであるシンディ・クロフォードとニコール・キッドマンを起用し、大々的に発表されたマンハッタンのスター性は、今も輝き続けています。
ヴィンテージ風のパイパンダイヤルとコーアクシャル・マスター・クロノメーター・ムーブメントを搭載した41mmの「グローブマスター」と、コーアクシャル(マスター・クロノメーターではない)とクォーツ・モデルをミックスした38mmと35mmの「コンステレーション」です。
その後、2015年には
コンステレーション・シリーズにはさまざまな名称があり、少々混乱しがちですが、ここでは現行モデルのラインナップとそれぞれのムーブメントをご紹介します。