クロノグラフ腕時計 宇宙にも行ったオメガ(OMEGA) スピードマスター

オメガのスピードマスターは人類史上はじめての月面着陸を見守った時計

1848年に、スイスにあるラ・ショー・ド・フォンに時計師のルイ・ブランが時計工房を開いたのが、オメガの歴史の最初の1ページです。

それからおよそ150年。

コンステレーションやシーマスターといった数々の名品をこの世に送り出してきました。

そんなオメガの中でも、もっとも代表するものと言えば、誰もがこれを挙げるのではないでしょうか。

その時計は、1957年に誕生しました。

そして、1969年の人類初月面着陸のとき。

その世界でもっとも貴重で劇的なそのときを、すぐそばで刻んでいた時計です。

それがスピードマスターだったのです。

宇宙旅行に行ったオメガのクロノグラフ腕時計・スピードマスターとは

1969年7月20日。

アポロ11号は月面着陸を無事に果たすことに成功しました。

そのとき、アームストロングが口にした「ひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍だ。」というこの言葉に、世界中の人が熱狂したものです。

そして、この歴史的偉業をそばで見守っていたのが、オメガ・スピードマスターだったのです。

しかし、なぜNASAはスピードマスターを人類最初の月面着陸のパートナーに選んだのでしょうか。

NASAがスピードマスターを公式時計に選んだ理由。それには面白い話しが残っているのです。

その頃、NASAのスタッフは、アメリカのヒューストンで宇宙飛行士に装備させるための時計を探して街を歩き回っていました。そして、その中でいくつかの時計を購入するのです。

購入した時計は、すべて試験へと回されます。

宇宙空間をシュミレートした、高圧、無重力、衝撃、真空、そしてマイナス18度という低温からプラス93度という高温への温度変化などをチェックする試験でした。

こんな過酷極まりない試験の中でも、高い精度を保っていたのが、スピードマスターだったのです。

つまりスピードマスターは、宇宙飛行用に特別に作られたモデルではなかったのです。

たまたまスタッフの目に止まって購入された、ごくごく一般的な市販品が、そのままNASAの公式時計に採用されたということになります。

さて、スピードマスターが宇宙飛行に参加したのは、アポロ11号だけではありませんでした。

その後のアポロ計画すべてに参加を果たし、アポロ計画の次に用意されていたスカイラブ計画でもやはりスピードマスターが使用されたのです。

その中で、驚くべき力を見せつけられたのがアポロ13号で起こったアクシデントのときでした。

アポロ13号は月面着陸を目の前にしたとき、致命的な事故に遭うのです。

1970年4月のことでした。

その事故は、酸素爆発。

宇宙船内すべての電気系統が故障してしまったのです。

その状態での生還の可能性は、たった10%にも満たないものでした。

そんな状況下で唯一、大気圏突入のタイミングを計測できる機器として正常に機能していたのが、スピードマスターだったのです。

わずかに垂れた可能性の糸を、スピードマスターは見事に手繰り寄せて見せたのです。

コスモウォッチとしてその名声をほしいままにしていたのには、こういった奇跡が
あったせいもありました。

最近では、宇宙飛行士が必要としているたくさんの機能を搭載したモデルも発売されています。

それが1998年に発売された、デジタル・プロフェッショナル、X-33です。

こうして、スピードマスターは宇宙との絆を深く結びつけているのです。

オメガ・スピードマスターの歴史

スピードマスターのファーストモデルが発売されてから、
もうすでに40年以上の月日が経ちました。

しかし、現在でも初代のモデルとは大きな違いがないのです。

手巻きのムーブメントにいたっては、大きなモデルチェンジの回数は、なんとわずか1度だけ。

どれほど、デビューしたときのモデルが完成された形だったのかということがわかるのではないでしょうか。

オメガ スピードマスターのファーストモデル

スピードマスターがデビューしたのは1957年のことでした。

発売からたった2年しか製造されなかった、貴重なモデルです。

現在のスピードマスターは、直径が42mmですが、ファーストモデルは直径が39mmとやや小さめ。

タキメーターはベゼルに直接刻まれています。

さらに、オメガマークがアップライトになっているのが特徴です。

Cal.321

直径が27mmのムーブを搭載しています。

レマニア社の時計技師であるアルバート・ピゲが1942年に開発したのが、
27CHRO C12です。

”27”というのは、ムーブメントの直径サイズのことを表しています。

”12”というのは、搭載されている12時間計のことです。

振動数は毎時1万8000振動で、ピラーホイールを搭載しています。

ムーブメントのチェンジ

1968年には、ムーブメントがチェンジされスピードマスターが第二世代へと入っていきます。

見た目のデザインとしては、ペゼルがブラックに、ダイヤルにはPROFSSIONALの文字が入っています。

さらに、リュースガードまでついており、現在のモデルに近い状態へと進化していきました。

 

カム式が採用され、振動数が向上したCal.861

Cal.321にあったクロノグラフを制御しているピラーホイールをカム式へと変更が行われました。

さらに微調整がしやすくなるようにと、構成しているパーツを減らすなどの変更がなされるのです。

そして振動数も2万1600振動へと向上。

1996年まで採用され続けたキャリバーです。

スピードマスターの現在の姿

スピードマスターのおおまかなデザインは、1963年に登場したRef.105や012の時点で、すでに現在のものと変わらない状態となっています。

細部には、若干の変更がありましたが、ほとんど同じと言っても良いでしょう。

1968年に突入したスピードマスター第二世代のモデルと比べても、デザイン面で大きな違いは見られません。

裏蓋にはシーホールが刻まれています。

オメガ スピードマスターのCal.1861 ロジウムメッキにパーツが変更

Cal.861は量産しても精度が落ちないムーブメントを目指して開発が行われました。

それは、生産数が増加してしまったためです。

作業工程を少しでも少なくしようと考えられたものでした。

そんなCal.861とCal.1861の基本構造はほとんど同じものです。

1997年に、ロジウムメッキにパーツを変更したのが、このキャリバーというわけです。

 

オメガ スピードマスターの手巻きではないモデルの歴史

ファーストモデルからこれまで、スピードマスターの手巻きモデルは継続して生産がされてきています。

手巻きではないモデルとしては、クォーツ、自動巻き、音叉式などがあるのです。

その中でも音叉式と言われるスピードマスターは、ほんのわずかの期間だけしか作られることのなかった、1970年代に少しだけ現れたモデルなのです。

自動巻きモデル Ref.ST376.0804

1971年にCal.1040のムーブメントとして自動巻きが採用されました。

これがスピードマスター最初の自動巻きです。

そののち、Cal.1045やCal.1150へと変化をしていくのです。

 

クォーツ Ref.ST186.0004

スピードマスター最初のクォーツモデルとして誕生したのが、1977年に発表されたCal.1620搭載のモデルです。

1982年にはアナデジも登場しますが、すぐに姿を消してしまいます。

そして、現在ではX-33として活躍をしているのです。

音叉式 Ref.ST388.0800

1973年にブローバ社の音叉式ムーブメントCal.1255を採用したスピードソニックです。

これは、ほんの2年しか作られることのなかった、とても希少なモデルとなりました。

オメガとレマニア社の長い関係

名門と呼ばれるクロノグラフムーブメントメーカーは、この長い年月の中で消滅していってしまいました。

しかし、現在でも変わらぬ精度を誇り生産を続けているメーカーはもちろんあります。

それが、ゼニス社やレマニア社などです。

レマニア社と言えば、テンプが6時の場所にある13CH2Pや、12時の場所にあるCH27。

そして12時間計がついているCH27C12、キャリバー1270シリーズなどが
有名となっています。

今では、オメガだけではなくパテック・フィリップなどにも採用されているのです。

さらに、トゥールビヨンやミニッツリピーターと呼ばれるような複雑時計を手がけることもできる、一流の名門メーカーとしてその名を馳せているのです。

そんなレマニア社が創業されたのは、1884年のことです。

場所はスイスのジュウ渓谷のロリエント。

レマニア時計会社として設立されました。

そして1932年にはオメガなどをメインとするSSIHグループのメンバーとなります。

それを足がかりにレマニア社は、大きく羽ばたいていくことになるのです。

1940年。

レマニア社は、オメガのプロジェクトである「27 CHRO C12」という世界最小の手巻き式クロノグラフ開発に参画することになるのです。

「27 CHRO C12」というのは、直径が27mmのクロノグラフ・ムーブメントのことです。そのムーブメントに12時間計がついているもの、という意味があります。

そしてこのプロジェクトは見事に成功。

アンチマグネティック機能とショックレジスト機能を併せ持ったCal.321を誕生させるのです。

このCal.321の振動数は毎時1万8000振動でした。

このキャリバーは当初、シーマスターに採用されていますが、すぐにその実績を買われ、スピードマスターにも採用されることとなったのです。

さらに同社は、特殊スポーツ用の時計や、軍用時計など、自社ブランドを付随させた商品も発表させています。

そして1970年代に訪れたクォーツショックという大きな波を乗り越えて、レマニア社はオメガと友好関係を維持しながらも、1981年にSSHIグループから離脱することとなるのです。

そのときに会社の名前もヌーベル・レマニア社と変更します。

そして1992年、ブレゲ・グループの傘下へと入るのです。

さらに1999年にはそのブレゲもスウォッチグループに吸収された影響により、ヌーベル・レマニア社も一緒にスウォッチグループの一員として活躍をするようになります。

驚くべきことにオメガ社とレマニア社は、20年という長い時間を経て再び一つのグループで再会を果たすことになるのです。

オメガのスピードマスターこれまでのモデルたち


デビュー当時のファーストと現在のモデルでは、手巻きのスピードマスターは比べて見てもデザインに大きな違いはありません。

しかし、デビューしてからおよそ40年。

これまで、多くのバリエーションが発売されてきたのです。

それは、地域限定、数量限定、記念モデルなどが当てはまります。

ここで、そんなオリジナリティ溢れる個性的なモデルをご紹介しましょう。

ドイツ限定販売されたものや、テレビモニター型のケース、スケルトンなど、どれも驚くようなモデルばかり。

しかし、どんなに欲しくても現在ではこれらのモデルを手に入れることは、かなり困難と言わざるを得ません。

1969年登場

手巻き式のCal.861を使用したモデル、スピードマスター プロフェッショナル マークです。

ケースとラグが一体化したデザインが印象的。

振動数は毎時2万1600振動となっています。

針やダイヤルの外周にオレンジを使った鮮やかさが目を引きます。

他にもゴールドプレートモデルなどもあります。

1971年登場

1971年に登場したのがスピードマスター プロフェッショナル マークです。

クロノグラフ針の先にはまるで、飛行機の翼を思わせるデザインのポイントがついています。

さらに、楕円形のケースはユニークで印象的です。

デイト表示がついていますが、これはスピードマスターの中でも最初のモデルです。

ムーブメントとしては、自動巻きであるCal.1040を使っています。

 

こちらも同じくスピードマスター プロフェッショナル マークですが、デザインが違います。

まるでテレビモニターのようなその姿は個性的で、目を引くデザインとなっています。

このケースは1970年代にはよく見られるデザインでした。

他にもアップライトのインデックス、そしてインダイヤルのデザインなど、ユニークで遊び心を感じることができるモデルとなっています。

何よりも、現在見てもこのスタイルは新鮮なのではないでしょうか。

1973年登場

このモデルは1973年に、オメガ社が創立125周年を迎えた際の記念モデルとして限定2000個だけ生産されました。

これは、オメガのクロノグラフの中でも最初のクロノメーターとなります。

アップライトにはオメガのエンブレムが、ダイヤルには創立年数である”125”の数字が刻まれています。

1973登場

1973年に登場したのが、スピードマスター プロフェッショナル マークです。

こちらのムーブメントはマークで使用されていた、Cal.1040を採用してあります。

外周の下半分はグレーとなっており、昼夜表示がされています。

さらに、9時の場所にあるインダイヤルには、短針が24時間計、そして長針が秒針となっているのです。

ケースはマークとどこか似た雰囲気を持っています。

1974年登場

カレンダーには曜日の表示がついているモデルです。

これはスピードマスター・オートマチックのバリエーションの1つ。

ケースがテレビモニターのような形をしているのが、1970年代特有のデザインです。

24時間計も付いています。

1982年登場

ドイツ限定で販売された、とても貴重なスピードマスター ジャーマンモデルです。

ケースはこのモデルのためだけに、特別に作られています。

まるで、金属をそのままくり抜いたような形は、ドイツらしいデザインとして注目を浴びました。

ダイヤルの部分に、プロフェッショナルという文字は見受けられません。

1984年登場

デイデイト表示がついている、Cal.1045を採用した、スピードマスター プロフェッショナル マーク5というモデルです。

1982年に登場したドイツ限定販売のモデル、ジャーマンモデルのオートマチック・バージョンとして登場しました。

ダイヤルの部分には、マークの文字があります。

実は、マークと呼ばれるモデルは他にはなく、このモデルのことだけを差すのです。

1985年登場

2000個限定で生産された、スピードマスター プロフェッショナル ムーンフェイズです。

12時の場所にムーンフェイズとデイト表示がついています。

実はこれらの表示は、左上にあるボタンで早送りすることも可能となっているのです。

スピードマスター プロフェッショナルと刻まれる文字の場所も、とても特徴的となっています。

1992年登場

たった50個しか生産されることのなかった、希少なスピードマスター プロフェッショナル スケルトンと呼ばれるモデルです。

なぜ50個なのかというと、手巻きクロノグラフが誕生して50年という記念に生産されたからです。

ケースは18KYGとなっています。

さらに、ムーブメントにはCal.867を採用しているモデルです。

こちらは、表も裏もスケルトンで出来ている、大変珍しいものになっています。

1998年登場

1998年に登場した、このスピードマスターX-33は、NASAと共同開発されたモデルとなっています。

アナログ&デジタルのハイブリットという珍しいモデルです。

価格は38万円。

1/100秒を計測することができるスプリットタイムや、カウントダウンなどを装備したクォーツです。

スピードマスター プロフェッショナル ミッションズ

スピードマスターX-33と同年に販売された、このスピードマスター プロフェッショナル ミッションズは、オメガの創立150周年を記念して作られました。

アポロ8号や、ジェミニ6号など、これまでのミッションのエンブレムが入った記念モデルが22本。

そして、ファーストモデルの復刻版1本の合わせて23本がセットになっています。

このうち21モデルは、その後、個別販売されることとなるのです。

2000年登場

オメガと日本のアニメがコラボした、スピードマスター”999”。

松本零士氏とのコラボレーションが実現してできたのが、アニメ「銀河鉄道999」モデルです。

裏側には、メーテルのイラストまで入っているファン垂涎モデルとなっています。

さらにシリアルナンバーも入っており、日本限定1999本のみの販売でした。

価格は26万円となっています。