カルティエの廃盤腕時計『サントス ガルべ』ってどんな時計なの?
カルティエの腕時計で最も有名なのは、タンクだと思われますが男性の場合、その次に人気なモデルにサントスが入ってきます。
サントスは、カルティエの歴史の中でも最初に誕生した腕時計でもあり、歴史もデザインも大変魅力的なモデルです。
ここでは、そんなサントスの廃盤になってしまったモデルである『サントス ガルべ』に焦点を当てて解説して参ります。
サントスガルべってどんなモデルなの?
1970年代当時、時代は富裕層だけなく、中間層が誕生し一部の富裕層だけでなく大多数の中間層を顧客にし、それらの顧客を取り込むことがビジネスを成功させる秘訣でした。
当時の時計界は、デカ厚ウォッチの人気のブームに火がついた初期で例えば、オーデマ ピゲのロイヤルオークや、パテック フィリップのノーチラスなどがそれにあたります。
これらの時計の共通点はサイズが大きいことと高級ブランドでありながらも、ステンレスで作られており、新しく台頭してきた若い人たちの好みや、ライフスタイルを取り入れたものでした。
そして、これらの時計はのちに『ラグジュアリースポーツウォッチ』と呼ばれるようになったのです。
しかし、当時のカルティエ社にはそれを補うことが出来るモデルが存在せず、何かのモデルを新しく刷新させる必要があったのです。
そんな中1978年、当時カルティエのマーケティング・マネージャーに任命されたアラン=ドミニク・ペラン氏は、伝説的な「サントス・デュモン」をベースに、手頃な価格のスポーツウォッチを作ることを思いつきます。
1975年から1998年までカルティエのCEOを務めたアラン=ドミニク・ペランは、1978年にスティールにゴールドのアクセントをあしらった手頃な価格のサントスを発表することを思い立った。(画像: theconnectedtable.com)
素材の融合で生まれ変わったカルティエ サントス
ぺランが考えたのは、ロイヤルオークやノーチラスの成功を元に、カルティエがこれまで時計に使用したことのない素材である、ステンレススチールを使った腕時計を作ることでした。
しかし、この新しい時計にラグジュアリー感を与えるため、ペランはステンレスにゴールドのアクセントを加え、リューズガードを備えたサントスを発表することにしました。
当時、ステンレスとゴールドの組み合わせは一般的ではなかったので、挑戦的な試みであったし、大胆な組み合わせだったと言えるでしょう。
このようにカルティエ社は、他社をお手本にしつつも自社の持つ強みを持って、この新しいトレンドの先陣を切った企業のひとつでした。
あまり知られてない事実ですが、サントスはツートンカラーの腕時計として誕生したのです。
デザインを見てみると、ベゼルのフレームとブレスレットのビスはゴールド製で、2つの異なる色の金属ですが上手く馴染みスポーティでありながらも、高級感が感じられます。
サントスほどツートーンが似合う時計は、他社でもなかなか見かけることはないでしょう。
1978年、アラン=ドミニク・ペランの指揮のもと、カルティエが発表したツートンカラーのサントス(© George Cramer)
このような背景があり、新しくなったサントスは1978年10月20日に発表されました。
そして、このステンレスとゴールドの組み合わせは結果的に多くの顧客に求められるようになり、大成功を納めるのでした。
またその直後に、オールステンレス製モデルが発表され、こちらも大ヒットしサントスの人気は大幅に上昇したのでした。
1987年 サントス・ガルべの誕生
一般的に言われているのは、1987年に新しく誕生したのがサントス・ガルべという事実です。
それは事実なのですが、実はこれは1978年に誕生したサントスの延長線上にあるということなんですね。
実は1978年に誕生したサントスは、名前を変更して1987年にサントス・ガルべとして再出発となりました。
デザインはほぼ同じなのですが、それまでのサントスからは改良され、特にケースはオリジナルのサントスよりも曲線的で滑らかになり、手首にフィットするようになりました。
このケースが滑らかにカーブを描いていることで、『ガルべ』と名付けられておりこのガルべとはフランス語で『曲線』を意味します。
左がカルティエ サントス ガルベ、右が1978年発表のツートンカラーのサントス (© George Cramer)
そんな新しく刷新されたサントス・ガルべなのですがクォーツ・キャリバー、自動巻キャリバーを搭載した2つのモデルで展開されました。
では実際の時計を見てみましょう↓
画像でご覧頂くと、クオーツモデルと自動巻モデルはほとんど違いがないので、詳しくない方からすれば分かりにくいでしょうが、簡単に見分ける方法がデイト表示の場所になります。
クオーツモデルは6時位置にデイト表示があり、自動巻モデルは3時位置にデイト表示があるのでここを見ると分かりやすいですね。
自動巻はCal.077 (ETA 2671)であり、現代も続いているエボーシュメーカーのムーブメントが搭載されています。
これは当時の時計業界の時代背景が、大きく影響しています。
1970年初めに日本のSEIKOが開発したクオーツムーブメントによって、それまでの伝統的な作り方であるそれぞれのパーツの組み合わせで、時計を動かす手巻きや自動巻ムーブメントは時代遅れなものとなってしまいました。
しかし、1980年代後半になってくると、手巻きや自動巻などの職人が作り上げたものや、男性特有のメカニックが好きであるという嗜好から、再度機械式ムーブメントに脚光が浴び始めたのです。
その結果、クオーツ一辺倒ではそもそものブランドとしての価値が低下してしまうと考えたスイスの時計各社、もちろんそこにカルティエも含まれますが、その頃から段々と自動巻や手巻きを再度復活させていくことになったのです。
そして、自動巻キャリバーを搭載しているサントスガルべは、男性の嗜好を組み入れるために、LMサイズが採用されているのです。
また、サントスガルべは大ヒットしたことによって、様々な文字盤のバリエーションが展開されることになりました。
それぞれのモデルを見ていきましょう↓
左から飛びローマンインデックス、ブルーインデックス、ゴールド x ステンのコンビにギョーシェ彫、オールステンレスにギョーシェ彫になります。
これらのモデルは通常のモデルと比較して、生産数が少ないです。
さらに少ないのはこちらのガルべで、特殊な色をした文字盤も限定で生産されていました。
左側がワインレッドで、右側がグレーの文字盤になります。
ワインレッドの文字盤の方のリューズには、ルビーが採用されており特別感がありますね。
そして1990年モデルとして発表されたのが、下記のモデルになります↓
この時に発売されたガルべは、全てがアプライドインデックスと言って浮き上がったインデックスが採用されていることによって、文字盤に立体感があり奥行きが出ているのが特徴ですね。
2002年になると、また限定モデルが発売されその時は2000本限定でした↓
2002年にアジア限定盤で、メンズモデルでグレー文字盤が2000本、レディースモデルでダブルCのロゴにアイスブルーの文字盤が2000本製造されました。
男性が好むグレーの文字盤なのですが、シックで落ち着いた感じがありつつもスポーティでカジュアルな仕上がりになっていますので、他のブランドでは実現できない美しさを放っていますね。
これらのモデルは、生産数が少ないことから通常のガルべと比較して、高額で取引されています。
まとめ
サントスガルべがここまで長期的に人気なのは、そのデザイン性にあると言えます。
というのも、1970年代頃から始まったラグジュアリースポーツウォッチのブームに乗っかって作られたモデルなので、現代を生きる私たちからしてもどんなスタイルにもすんなり馴染んでくれるからでしょう。
そういった理由から、サントスガルべは年々価格の上昇を続けており、購入するときの金額も上がって行っています。
サントスガルべが気になっていた方にこそ、是非とも早めに手にして頂きたい時計の1本だと言えるでしょう。