レマニアcal.5100 1980年代 西ドイツ空軍&NATO軍ミリタリークロノグラフ
ヴィンテージウォッチは時計の外装は、有名ブランドであってもその中のムーブメントを見たときには必ずしも、そのブランドのものとは限りません。
今日お話しする、西ドイツ空軍、NATO軍の時計もそれに該当する時計です。
やはり、時計の外装とムーブメントは別ということでしょう。
そして、やっぱりこの時代の軍用ムーブメントに採用されているのは、レマニアです。
ジンという時計ブランドは知ってても、レマニアというブランドは知らない・・・そんな方も多いのではないでしょうか。
今日はそんな、レマニア社製ムーブメントとそれを採用した5つのブランドをご紹介して参ります。
記事を5つのパートに分けると
1.レマニアのムーブメントの特徴
2.オルフィナ/ポルシェデザインについて
3.ジン156のクロノグラフの特徴
4.チュチマ798のクロノグラフの特徴
5.アルクタス/テングラーのクロノグラフの特徴
6.NATO軍の時計ってなに?
となっております。
これからご紹介する5つの時計は、どれも軍用規格に適応させてあるため、技術の部分(ムーブメント)は本質的に同じであると言えます。
いずれのブランドも、裏に『BUND』とありますがBUNDとはドイツ語で「Bundeswehr」(ボンデスウェアー)の略でドイツ連邦軍という意味になります。
それらの時計の一部は、西ドイツ空軍に、NATOとあるものはNATO軍支給(ドイツ以外の国の軍隊)に支給されていくこととなりました。
まず初めに、時計の外装メーカーではありませんがこれから紹介する時計の、全てのムーブメントに採用されているレマニア社について解説します。
レマニア Lemania
スイスの会社であるレマニア(Lemania)は1884年、アルフレッド・ルグリンによって創設されました。
レマニア社は、ストップウォッチ、リピートウォッチ、そしてクロノグラフを製造し、世界的に大変有名になりました。
代表的な時計といえば、レマニアのムーブメントを内蔵したオメガスピードマスターは初めて月へ飛んだ時計でした。
レマニア cal.5100
レマニアcal.5100ムーブメントは、1970年代初めから2002年終わりころまで製造されました。
正確な製造数はわかっていませんが、主に
1.オメガ
2.オルフィナ
3.ホイヤー
4.ジン
5.チュチマ
6.フォルティス
など大手のブランドに使用されました。
元々、軍用時計のムーブメントに積極的に採用されてきたレマニア社であり、イギリス空軍とは、かなり長い間取引がありました。
詳細についてはこちらで詳しく解説しておりますので、お時間のある際にご覧くださいませ↓
これらのことから、長い年月で明らかとなった堅牢性、正確さ、読みやすさ、そして長い寿命が、軍の要求する基準にもマッチしており、さまざまな国の軍用時計として愛されてきました。
軍用ではありませんが、過酷な環境である宇宙空間で、ドイツで最初のスペースラブミッションを成功させた、ラインハルト・フラー教授は1985年に、このレマニアcal.5100を搭載したジン142をつけていたことも有名ですよね。
今日、このレマニアcal.5100を内蔵した時計は、大変人気のあるコレクターズアイテムとなっています。
そんなレマニア社ですが現在は、ブレゲ専属のムーブメントメーカーとして『マニュファクチュール・ブレゲ』という名前を変えて、ムーブメントの研究開発を行っております。
では、ここからは西ドイツ空軍、NATO軍に採用された時計を見ていきましょう。
オルフィナ/ポルシェデザイン(Orfina Porsche Design Chronograph)
1922年にスイス・グレンヘンで設立されたOrfina SA社は、当時はまだまだ無名の時計ブランドの1社でした。
しかし、ポルシェデザイン初の時計の製造を受注したことで、劇的に知名度を上げました。
ポルシェデザインがデザインだけをして、製造は他の会社に任せるという構図ですね。
そして、1979年からドイツ連合軍、とくに空軍パイロットに向けて製造し時計を支給して行きました。
ドイツ連合軍に支給された、ポルシェデザインクロノグラフのすべてのバージョンには文字盤にMilitaryの文字がはいっています。
さらにデイト表示の下には、『Porsche Design』の文字が入っています。
基本的には『Porsche Design』だけなのですが、ごく稀に『Porsche Design by Orfina』または、『Chronograph』 の文字も存在します。
さらに赤で囲まれた3Hのマークが、ドイツ連合軍に支給されたものには入っています。
これは夜光塗料に、トリチウムが使用されているという意味です。
ただしこの『Militaryの文字』と『3H』のマークがある=100%ミリタリークロノグラフという意味ではありません。
短期間ではありましたが、一般に販売されたものにもこの2つの特徴はみられました。
ケースバックにBUNDの文字と、6645-12-182-1763の参照番号が入ったものがドイツ連合軍に支給されたものの証明です。
それぞれの数字の意味を解説します。
NATOコードの最初の「6645」の「66」は計測機器、検査機器を表すもので、そのうち、時計は「45」で規定されています。次の「12」はカントリーコードでドイツを表しています。
その後の3桁、4桁の数字は軍が物資を調達する際に供給部から発行される番号で、数字が若い方が古いものとなっています
12=ドイツ連邦軍
という意味になります。
・ケース=ステンレススチール/41mm
・風防=サファイアグラス
・防水性=10atm
アルクトス ミリタリー クロノグラフ(Arctos Military Chronograph)
アルクトスは、スイスの時計会社です。
アルクトスのミリタリークロノグラフは、1982年からドイツ連合軍、及びパイロットに支給されました。
・ケース=ステンレススチール/幅40mm、高さ15mm
・風防=サファイアグラス
チュチマ ミリタリークロノグラフ 798(Tutima Military Chronograph 798)
「パイロットが空の上で生死を分ける選択を迫られる瞬間、正しい選択をするただ一度のチャンスを最大限活かせるように」。
これがチュティマ社が、ミリタリークロノグラフ798を作った時に込められた願いです。
元々チュチマ社の前身である、グラスヒュッテ・チュチマ社は第二次世界大戦時にドイツ空軍に向けてクロノグラフを納品してきた歴史があります。
チュチマについては、こちらの動画で詳しく解説しておりますのでお時間のある際にご覧ください↓
そのため、時計作りの技術を持ち合わせており、1983年に再度ドイツ連邦軍のから採用されたのでしょう。
この時計の特徴は、作り手のやさしさが、丸みを帯びたケースの形状にこめられているということです。
あえてこのようなケースにしているらしく、狭いコックピット内で激しい動きをしたときに引っかかって壊れたり、それによって怪我をしたりしないようにとの配慮されています。
・ケース=ステンレススチール/幅43mm、高さ15mm
・風防=サファイアグラス
・防水性=10atm
Sinn 156
Sinn 156は、1987年、社長のジン・ヘルムート氏によってドイツ空軍に支給するために製造されました。
ちなみに、ジンは1961年に創業を開始した時計業界ではまだまだ新しい会社であり、ヘルムートさんは2018年までご存命でした。
彼は、それまで積み重ねてきた彼の知識(ホイヤーなどのドイツ空軍時計を数年にわたりオーバーホールしてきました。)とコネクションをフルに利用しこのSinn156を作り上げました。
伝説的なホイヤー 1550SG BUND と レオニダス、ゼニスのいいところを組み合わせて、最新のムーブメントとクラシックなデザインを兼ね備えたSinn156が誕生しました。
しかしながらこの時は、ドイツ空軍への支給はかないませんでした。
・ケース=ステンレススチール/幅43㎜、高さ15,5mm
・防水性=10atmまで
・風防=プレキシガラス
テングラー 5100 クロノグラフ(Tengler 5100 Chrono)
1990年以降ドイツ連合軍に、約550個支給されました。
この550個の内、513個にはナンバーがふってあり、残りの37個はナンバーがふられていないといわれています。
テングラーの、ほかの4社と違うところは、空軍のために作られたのではなく、砲兵軍のために作られた時計だということです。
・ケース=ステンレススチール/幅40mm
NATO軍の時計ってなに?
色々情報を調べていって分かったのですが、NATO軍の時計は基本的にはスイスの時計ブランドから調達し、必要であればドイツブランドにも製造を依頼していたようです。
しかし、NATO加盟国であるフランスにも、軍との繋がりが深く時計の技術力もあるドダンヌやアウリコストがあるのですが、なぜそこにも製造を依頼しなかったのか、分かりませんでした。
NATO軍というのは、各国の軍隊の総称なんですよね。
つまりNATO加盟国の軍隊のことです。
そのなかに、『ドイツ軍』とか『フランス軍』とか『スウェーデン軍』がいるって感じですね。
そんなNATOは必要なときには、加盟国の軍に司令をだします。
それは1つの国だけじゃなく、数ヵ国に同時にだされることもあります。
つまり、NATOからの指令が出されたときにNATOの時計が新しく必要になるんですよね。
よってその時に、支給されたものにはNATOのコードが入っている、ということなんですね。
まとめ
本日は、1980年代のレマニアのムーブメントを搭載した、西ドイツ空軍、NATO軍に支給された自動巻クロノグラフを解説させて頂きました。
ホイヤーの動画も作って分かったのですのが、この頃のデザインってのはオーバル型が先端のデザインだったのでしょうね!
アンティークもヴィンテージも、昔というニュアンスが含まれますが、控えめに言っても昔の時計さを感じませんし、まだまだ先端のデザインだと感じます。
手巻きのクロノグラフもいいけれども、自動巻のクロノグラフもまたその時代を感じさせる、かっこよさがありますよね。