イギリス軍の腕時計 スミス(smiths)W10 ミリタリーウォッチ解説
イギリス陸軍に採用されたスミス(smiths)W10 腕時計の魅力
1851年に創業したスミス(正式名称はS. Smith & Sons (London) Ltd.)は、英国時計製造の名門として知られ、その名をそのままブランド名にしました。
スミス・アンド・サンズ(ロンドン)社は、1851年に設立された英国の時計メーカーで、その名は広く知られています。
本拠地はチェルトナムを拠点とするスミスは、製品のすべての部品を現地で製造する数少ない企業の一つです。
スミスはチェルトナムを拠点とし、ヘアスプリングに至るまで、製品のすべての部品を自社で製造する数少ない企業でした。
そんなスミス社ですが、第二次世界大戦以降、英国軍に時計と航空機器を供給する契約を結び陸軍に供給される腕時計『W10』を製造していくことになりました。
このW10ウォッチは、軍人にのみ支給されたにもかかわらず、洗練されたデザインとその造り込みから、ミリタリーウォッチの中でも最も人気のあるモデルの一つです。
1967年から70年までの4年間しか、軍人に支給されなかったにもかかわらず、最もよく知られたモデルのひとつです。
今回ご紹介する時計は、1968年に発行されたものです。
上の画像の赤枠の中を見て頂きたいのですが、5749/68と刻印が入っています。
この『68』というのが1968年に製造されたことを表し、5749が製造番号を表しています。
要するに、ここからは1968年に製造された5749個目の時計というのがわかるのです。
スミス W10 搭載のムーブメント
ケースバックを開け、ダストカバーを外すと、スミス社のcal.60466Eが搭載してあります。
プレートとブリッジは、英国時計製造の典型的なつや消しの金メッキが施され、視認性を向上させるためのセンターセコンド仕様の、追加の歯車が搭載されています。
センターセコンドはムーブメント上部の大きな歯車で動く間接式です。
センターセコンドの仕組みが分からない方は、クロノグラフの動画ですがこちらで詳しく解説しておりますのでご覧ください↓
軍用時計には「ハッキング・セコンド」(ハック機能)と呼ばれる機能が搭載されるモデルが多くあります。
これはリュウズを引いて時刻を合わせると、秒針が止まる仕組みです。
これにより、この時計は他の時計と同期させることができるようになります。
この時代、軍の作戦が高度化したことで各兵士が同じタイミングで任務を遂行する重要性が高まり、それぞれの時計の時刻もきっちりと合わせる必要があったためです。
スミスW10では、列車の車輪の下にあるハックレバーによって、この機能を実現しています。
ハックレバーが車輪の下に取り付けられています。
レバーはバネ式で、上の写真で強調されているネジの周りを回転します。
ステムを引き抜くと、レバーがネジの周りを回転し、細いワイヤー部分が接触して停止します。
ワイヤー部分がテンプに接触し、停止します。
ステムを押し込むと、バネがレバーを元の位置に押し戻し、ワイヤーがテンプから浮き上がります。
そうすると時計は動き出すのです。
まとめ
スミス社の W10 が有名で人気のモデルであるのは、このような高級機に搭載される機能が十分に装備されているからだと言えます。
ハック機能は、全てのミリタリーウォッチにあったわけではなく、比較的高級でしっかりとした時計にありました。
そんな中、スミス社の作った W10 は陸軍に支給されたものでありながらも、ハック機能があったりキフ社製『ウルトラフレックス』などが搭載されており、かなり作り込まれています。
まだまだ手に入れられる値段にはありますが、将来的には大きく値上がりしていく1本で間違いないでしょう。