オメガ コンステレーション リファレンスガイド - Cラインの時代
今回は、ジェラルド・ジェンタの代表作の1つである『Cライン』のケースデザインが採用されたコンステレーションに焦点を当てます。
1960年代、オメガのコンステレーション・コレクションがロレックスのデイトジャストよりも売れていたことをご存知でしょうか?
パイパンダイヤルバージョンの誕生は、その時代のオメガの成功の大きな要因でした。
しかし、オメガはジェラルド・ジェンタとともに、1960年代に180度方向転換し、まったく新しいデザインを構想しました。
では、どのような展開になったのでしょうか?
Cラインのコンステレーションについて
Cラインはオメガのコンステレーション・コレクションの3番目のモデルで、1964年に発表されました。
初代から2代目までは、こちらにまとめておりますのでご覧ください↓
オメガ コンステレーション リファレンスガイド - パイパンダイヤル時代
天才的なデザイナーである『ジェラルド・ジェンタ』によってデザインされたこのモデルは、パイパンダイヤルモデルがまだ生産中であった頃、コンステレーションのデザイン革命となりました。
パイパンダイヤルのコンステレーションの魅力とは対照的に、Cラインはスリムなバトン針とバーインデックスを備えた、旧モデルと比べるとすっきりとした文字盤の外観が特徴でした。
これは当時のコンステレーションのコンセプトに対する、現代的なアプローチだったのです。
写真 @goldammer.me
これらのモデルの名前は、もちろん新しいケースラインに由来しています。
言い伝えによると、ジェンタは、コンステレーション・ラインナップの第3弾となるこのモデルを、文字どおりアルファベットの3文字目である『C』を意識してこの形にしたといいます。
この細長いケースの外観は、直径がほぼ同じでありながら、パイパン型のコンステレーションよりも大きく感じさせます。
この形状は、大型のケースが流行り始めた時代に、非常によくマッチしたデザインでした。
Cラインの時代は1964年から78年までの14年間続き、時計製造の歴史において重要な時期でした。
では、このモデルにはどれだけのバリエーションがあり、何がCシェイプをこれほどまでにクラシックなものにしているのでしょうか?
ここでは、文献[1]と経験的データ[6]を詳しく見て、この魅力的なオメガのデザインの定量的なリファレンスガイドを作成します。
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リファレンス
全体として、1964年から1978年の間に約7つの主要なリファレンスが登場したことがわかります。
ブレスレットウォッチ(368.xxx)とレディースウォッチ(568.xxx)がそれぞれ異なるリファレンスナンバーを持つ、オメガのリファレンスシステムを覚えておきましょう[7]。
Cラインコンステレーションの主な進化は、ムーブメントのアップデートによって起こりました。
オリジナルの561(いくつかのパイパンダイヤルリファレンスと共通)から、564と751(デイデイト・バージョン)、そして1000erのバリエーション(デイトとデイデイトの両方)へ。
Ref. | 年代 | 日付表示 | キャリバー | ベゼル | 素材 | |
---|---|---|---|---|---|---|
168.009 | 1964-66 | D | 561 | 平面 | ゴールドリネンダイヤル | |
168.017 | 1966-72 | D | 564 | 平面 | ステンレス、シルバーリネンダイヤル、シルバー中央ブラックインデックス | |
168.027 | 1966-72 | D | 564 | フルーテッド | 太いバトン針、シルバーリネンダイヤル | |
168.019 | 1967-72 | D D | 751 | 平面 | 先端夜光針、シルバーリネンダイヤル | |
168.029 | 1967-72 | D D | 751 | フルーテッド | 先端夜光針、シルバーリネンダイヤル | |
168.0056 | 1972-78 | D | 1011 | フルーテッド | 先端夜光針、6時位置にOMEGAのフォント、カラーダイヤル | |
168.0057 | 1972-77 | D D | 1021 | フルーテッド | 先端夜光針、6時位置にOMEGAのフォント、カラーダイヤル |
表1. Cライン時代の一般的なオメガ・コンステレーションと、その主なデザイン上の特徴、およびいくつかバリエーション。
*最も一般的な素材。D = 日付、DD = デイデイト。"リネンダイアルは、「シルキー・ギョーシェ」とも呼ばれることがあります[1]。
ムーブメントが更新されるたびに、オメガはデザインにも微妙な変化を与えました。
アワーマーカーと針は時代とともに少し太くなり、1966年にはフルーテッドベゼルが導入され、Cラインの最新版では文字盤のフォントと文字の配置が変更された(下記も参照)。
初期型168.009(1966年、左)と後期型168.017(1970年、右)の微妙なニュアンスの違い。まず、針とインデックスは初期のリファレンスの方が細身です。第二に、168.017(右)は「サンギョーシェ」仕上げのベゼルを備え、クラシックなフラットベゼルとフルーテッドベゼルの中間に位置します。第三に、後期モデルではリューズがあまり強調されておらず、より多くの溝が見られます。第四に、いくつかのCラインのコンステレーションは、「フロスト加工」されたゴールド文字盤仕上げが特徴です(右)。しかし、このような文字盤のバリエーションは、Cラインのすべての時代に見られます。興味深いことに、当時のすべてのコンステレーション・デイト・モデル(パイパンダイヤル・バージョンも含む)は、同じ面取りが施された日表示窓が特徴でした。写真 @goldammer.me
数値について
しかし、実際にはどれくらいのバリエーションがあるのかを見て見ましょう。
市場に出回っている時計を調査し、どのようなオプションがどれくらいの頻度で見つかるかをさらに数値化しました[6]。
ここでは特に、使用されている素材、ベゼルのスタイル、文字盤のテクスチャー、そしてカラーに注目しています。
図1. オメガ・コンステレーションCラインの定量的ガイド。左側に市場全体の在庫状況(Cラインはゴールド、パイパンはグレー)、ケース素材(左中)、文字盤カラー(右中)、ベゼル・スタイル(右)の分布を示しています。
168.017 1966-72 D 564 平面 ステンレス、シルバーリネンダイヤル、シルバー中央ブラックインデックス 168.027 1966-72 D 564 フルーテッド 太いバトン針、シルバーリネンダイヤル 168.019 1967-72 D D 751 平面 先端夜光針、シルバーリネンダイヤル 168.029 1967-72 D D 751 フルーテッド 先端夜光針、シルバーリネンダイヤル 168.0056 1972-78 D 1011 フルーテッド 先端夜光針、6時位置にOMEGAのフォント、カラーダイヤル 168.0057 1972-77 D D 1021 フルーテッド 先端夜光針、6時位置にOMEGAのフォント、カラーダイヤル
絶対数については、2つの非常に興味深いパターンが浮かび上がってきます。
第一に、ほとんどのCライン・コンステレーションは1960年代後半から入手可能であり、後期リファレンスは現在それほど求められていないか、単にそれほど生産されていないことを示しています。
第二に、Cラインはその前身であるパイパンダイヤルのモデルよりも入手しにくいです。
このことと、現時点でのヴィンテージの価格を組み合わせると、パイパンモデルの方が、コレクターや愛好家により高く評価されていることがお分かりいただけるでしょう。
素材とカラー
全体的に、クリーンなデザイン要素が支配的であることがわかります。
素材別では、Cラインの53%以上がスチールであるのに対し、パイパンダイヤルは約38%に過ぎません。
また、61%が明るい文字盤(シルバーまたはホワイト)であるのに対し、ゴールドは34%、ブラックとブルーを合わせても7%です。
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オメガは、当時の顧客が少し趣向を凝らしたものを求めるのものであれば、新しいデザインとしてテクスチャーを取り入れました。
これらのCライン・コンステレーションの約34%はフルーテッドベゼル、約36%はこの見事なフロスティダイヤル・パターン、そして22%はベゼルとダイヤルのテクスチャーの両方を備えていました。
まとめ
これらすべての情報を考慮すると、Cラインがオメガの歴史における独立したピースであることは間違いありません。
パイパンダイヤル・コンステレーションという傑出したデザインの後継というだけでなく、独自のストーリーを築きまったく新しいものなのです。
ベゼルの質感...チェック 文字盤の質感 ... チェック 手首の存在感......ダブルチェック 写真 @goldammer.me
どちらかといえば、この第3世代は、パイパン・コンステレーションズの弟分というべき、シャイでミニマルなモデルです。
控えめなマーカー、針、そして超スリムなベゼルは、ケースとともに手首の存在感を引き立てながら、文字盤の多くをこれらの作品に委ねています。
デザインの観点からは、オメガがこのモデルでとった極めて斬新で現代的なアプローチです。
最後に、パイパンダイヤルモデルとCライン・コンステレーションをつなぐものは、デザイン以外に何があるのでしょうか?
それは簡単で、高精度と正確さというコンセプトです。
そして、過去のデザインにとらわれることなく、このアイデアをまったく異なるフレームに落とし込んだことは、この基本原則を如実に物語っています。
ブランドにとって重要な1つの次元に忠実であり続けることが、これらのタイムピースを他とは一線を画すものにしているのです。
参考文献
[1] C-Shape Omega Constellation; Desmond, Omega Constellation Collectors;
http://omega-constellation-collectors.blogspot.com/constellation-c-shape
[2] A History Of The Omega Constellation, From 1952 To Today; Jack Forster, Hodinkee;
https://www.hodinkee.com/articles/stellar-history-of-the-omega-constellation
[3] History of the Omega Constellation Collection - In-Depth; Rebecca Doulton, Monochrome;
https://monochrome-watches.com/history-of-the-omega-constellation-in-depth/
[4] The Pursuit of Timekeeping Accuracy: Omega Constellation; Anthony Tyme, Vintage Portfolio;
https://www.vintage-portfolio.com/de/the-pursuit-of-timekeeping-accuracy-omega-constellation/
[5] When Did Watches Start to Get So Big?; Marcus Siems, Goldammer Vintage Watches;
https://goldammer.me/blogs/articles/history-watch-size
[6] ~50,000 Watches + 520 Constellations from Chrono24, extracted 2020 Nov. 29th and Jan. 6th 2022; Karlsruhe, Germany;
[7] An Overview of Omega Reference Codes for Wristwatches; Old-Omegas;
http://www.old-omegas.com/omrefcod.html