Cal.11と12の違いは?Cal.12からバルジューCal.7740そしてCal.7750にはどのように変わったの?
Cal.11(12)からバルジューCal.7750への進化を動画でご覧になる方はこちら↓
ムーブメントのことなので、そこまでこだわる必要はないと思うのですがやはり知りたいものは知りたい。
ということで、Cal.11/Cal.12/Cal.7740/Cal.7750の違いと、それらの進化の過程を調べてみました。
関係する代表的な時計は、ホイヤー、ブライトリング連合が採用したクロノマチック、バルジューCal.7750ではNOTO軍、ポルシェデザイン オルフィナ クロノグラフ1になってくるので、それらをお持ちの方は興味深い内容だと思います。
時代背景と、キャリバーの進化を見ていくことでなんでこの時計には、このムーブメントが入っているのか?
というのが分かり、より時計を楽しむ幅が広がると思いますので、是非と最後までご覧ください。
目次はこのようになっております。
1.Cal.11の誕生
2.Cal.12とバルジューCal.7740ムーブメントの関係について
3.バルジューCal.7740からCal.7750へ
4.バルジューCal.7750を補ったレマニアCal.5100とは
Cal.11の誕生
まず初めに、一般的に言われているのがクロノマチックCal.11を開発したのがホイヤー、ブライトリング連合になります。
しかし、そこにはマイクロローターの技術を提供したビューレンもいましたし、クロノグラフ機構の設計を担当したデュボア・デプラもいました。
Cal.11 or 12(とこれに関連するムーブメント)のムーブメントの組み立てにおいて、それぞれの会社の役割を解説します。
・ビューレンはベースムーブメントをホイヤーとブライトリングに供給する
(マイクロローターの使用権を与えるということですね)
・ホイヤーとブライトリングは(バルジューから供給された部品を使って)クロノグラフモジュールを組み立て、クロノグラフモジュールとベースムーブメントと組み合わせて、Cal.11 or 12ムーブメントを製造する
・デュボア・デプラはクロノグラフモジュールの設計と、ベースムーブメントも含めた全体の設計
(このモジュールを設計したのはデュボア・デプラですが、部品の製造まではしていませんでした。)
ではそれらのクロノグラフモジュールの部品を作ってたのは、どこの会社かと言いますと、これがバルジュー社だったんですね。
部品の製造をするだけ、ということでバルジュー社はこのCal.11のプロジェクトに入れて貰えてないみたいですが、バルジューもしっかりと貢献していたのです。
このように4社で、それぞれ得意分野を担当し1つの自動巻クロノグラフムーブメントの開発を行なって完成したのが、Cal.11だったんですね。
そのCal.11が進化して、Cal.12が誕生するのですがそれらは振動数が違います。
11の方は、19,800ビートであるのに対してCal.12は21,600の高速ビートなんですね。
それ以外にも細々とした進化はあるのですが、同じ形のムーブメントでマイナーチェンジのようなポジションと考えていいでしょう。
Cal.12とバルジューCal.7740ムーブメントの関係について
ここで問題となってくるのが、Cal.11(Cal.12)とバルジューCal.7740がそっくりすぎるという点です。
1970年代なのですが、この頃というのはクオーツショック真っ只中でした。
よって、Cal.12が完成したものの先行きが不安定であり、スイスのほとんどの会社はクオーツの開発に大きく舵取りしていた時期なんですね。
それを横目に見ていたのが、製造を担当していたバルジューなのですが、そういった開発を進めないCal.12の特許をデュボア・デプラから買収したことによって、Cal.7740が実現されたのです。
実は、一つの部品(クロノグラフモジュールをベースムーブメントに取り付けるのに関わる部品)とローターのメカニズムは異なりますが、それを除けばキャリバー12と7740は事実上同じです。
よって、クロノマチックCal.11とバルジューCal.7740の表面が激似なんですね。
要するに、Cal.7740は試作品ということですね。
バルジューCal.7740からCal.7750へ
バルジューCal.7740(Cal.11)の問題点というのは、マイクロローターの回転によって、動力源を得る方法だったので巻き上げ効率が悪いことでした。
それを改善するために、完成したのが1973年、次期型であるCal.7750なんですね。
バルジューがCal.7750ムーブメントを作り始めた時、ビューレンのベースムーブメントを使用するのではなく、バルジューは自社でムーブメントを持っていたのですが、これがバルジューCal.7733なんですね。
ですので、ベースムーブメントは自社製Cal.7733であり、クロノグラフモジュールも巨大ローターを搭載した自社製なんですね。
多分なのですが、全体的な構造がどうなってるのか?
そして、重要な部分であるベースムーブメントとクロノグラフモジュールを繋げるところ、が欲しかったんでしょうね。
これは今の時計にも見られるデザインであり、この大きなローターを搭載することによって、マイクロローターよりも高い巻き上げ効率を実現できたんですね。
ただし、バルジュー社はクオーツショックの影響を軽視することができず、デュボア・デプラのようにこのキャリバーの開発の中止を設計士であるエドモンド・キャプトに命じます。
よって、Cal.7750はここで歴史に幕を下ろすことになったのです。
ここからは、そんなCal.7750の穴を埋めた別のムーブメントを見ていきましょう。
バルジューCal.7750を補ったレマニアCal.5100とは
進化の話からは外れますが、時代背景と時計に搭載されてるムーブメントをを理解するのに、分かりやすいストーリーがあるので紹介します。
バルジュー社の方向性としては、Cal.7750の研究開発を中止するという方針でしたが、時計ブランドが全てそれを容認したわけではありませんでした。
今となっては、伝説的なクロノグラフになっておりますがここに出てくるのが、オルフィナ ポルシェデザイン クロノグラフ1です。
元々、このオルフィナの時計にはバルジューCal.7750が搭載されており、現行型が販売している中のバルジューの中止報告だったのです。
一般的に考えれば、オルフィナのクロノグラフもこの時点で、クオーツを搭載させる道を選びそうですがそうではなかったんですね。
オルフィナ ポルシェデザインのデザイナーである、F.Aポルシェはリスクをとって流行に乗らずに動力を自動巻クロノグラフムーブメントのまま、続行する事に賭けたのです。
バルジューCal.7750ムーブメントの供給が止まることを受けF.Aポルシェとマグリオーリはレマニアという、別の時計ムーブメントのメーカーに供給を依頼したのです。
よって、オルフィナ ポルシェデザイン クロノグラフ1には、バルジューCal.7750が搭載されているものと、レマニアCal.5100が搭載されているものが存在するんですね。
レマニアの会社の歴史はこちらの動画で詳しく解説しております↓
後に、1984年にこのバルジューCal.7750は、ブライトリングのクロノマットに搭載されることによって復活することになります。
これはゼニスのシャルル・ベルモがエルプリメロの製造のための工具を隠して残していたように、Cal.7750の開発設計者のエドモンド・キャプトは廃止する代わりに、製作工具を全て隠していたから復活させることができたのです。