機械式手巻きクロノグラフの動作と構造解説

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機械式手巻きクロノグラフの構造解説

どうも、こんにちは。

ヴィンテージウォッチライフの妹尾です。

クロノグラフの腕時計はかっこいいし、ダイバーズと並ぶ人気カテゴリーではないでしょうか。

しかし、その複雑さ故になんでこんなにいろんな針が動いてるのかを理解している方は少ないと思います?

私もクロノグラフを勉強しだした時は、いろんな参考書を何回も読んだり勉強しても、全く意味が分からなかったのでもう知らなくていっか。

という気持ちでした。

しかし、やっぱり時計について深く知ろうとすればするほど、ここは避けて通れなかったんですね。

その難しい理由を自分なりに調べたんですが、2つあると思っています。

1つ目が文字で説明されても、それがどう動いてるかが分からないから、理解できなかったと言うこと。

2つ目がいきなりクロノグラフの動きを理解しようとするからできなかったこと。

だと考えています。

というわけで、本日はそんなめっちゃ難しいイメージのある、クロノグラフがどうやって動いているのか?

というのを、超絶分かりやすく解説して参りますのでどうか最後までお付き合いください。

 

それでは早速やって参りましょう。

 

 

3針時計の構造を理解しよう

いきなりクロノグラフの動きを知ろうとするのは、足し算引き算が分からないのに、掛け算、割り算をするようなものです。

まず3針時計の基本的な動きを理解し、そこからどうクロノグラフにつながっているのかを見てください。

まず3針時計はどのように、動いてるのかを簡単に解説します。

香箱(1番車)の仕組み、構造

まずリューズを回すことによって、香箱の中に入っているゼンマイが巻かれてそれがほどける力を利用して、1番車が動きだします。

3針時計の構造

その動力を歯車の大きさなどを使って、減速したりしながら2〜4番車へ、そしてガンギ車からテンプへ伝えることで時計が動きだします。

ざっくり解説すると時計の構造はこのようになっております。

表面と裏面から見た腕時計の4番車の位置

そして、スモールセコンドを採用している時計は、4番車が1分に1周するように設計されているので、6時位置に配置されたスモセコはそのまま秒針としての役割になるのです。

要するに、ここで分かっていて欲しいことは歯車の終点(4番車)の位置にスモセコを持ってくることが、一般的な時計の構造ということです。

 

クロノグラフの構造について理解しよう

上記の仕組みがわかったところで、これからはクロノグラフの構造について解説して参ります。

今回は、ブライトリング ナビタイマーに搭載されている、ヴィーナス(VENUS)Cal.178を使って見ていきましょう。

まず初めに時計のムーブメントは文字盤側ではどのように、配置されてるのかを見てみましょう。

クロノグラフ 表面 ムーブメントの位置関係

ムーブメントを反転させるとこのように、ピンクの円が文字盤側のスモセコの位置に来るのが分かると思います。

そして、ヴィーナスCal.178は4番車の最終地点がピンクの場所なんですね。

ただし、3針時計のところで解説したのとは少し違ってて、1階に3針の歯車を置いて2階にクロノグラフのホイールを置いています。

ですので、1階の歯車の動きと同じ動きをする歯車を2階にも持ってきてるというイメージが分かりやすいと思います。

 

要するに、ピンクの円の下にももう1つ歯車があって、それは3針時計を動かしている歯車ということですね。

 

では次にムーブメントを反転させて、それぞれの名称と役割について解説します。

機械式手巻きクロノグラフの構造解説 ヴィーナス(VENUS)Cal.178

この図で言うと、右下のボタンがスタートボタンで、右上のボタンがリセットボタンになります。

今回は、動きを優先的に理解して頂きたいので名称は覚えなくても大丈夫です。

しかし、それらの名称がどこを指してるかを理解しておかないと、この先の理解が難しくなるので分からなくなったら、この画像に戻ってきて確認されてください。

 

・オペレーションレバー

スタート、ストップのボタンと繋がっており、コラムホイールを回転させる長細いアームのこと。

 

・ブレーキングレバー

ストップボタンを押した時に、クロノグラフホイールを固定するためのブレーキアームのこと。

 

・スライディングギア

クロノグラフホイールとその隣にある、ミニッツレコーディングホイールを仲介させリセット時には、ギアが外れ動力の伝達を遮断する。

 

・ミニッツレコーディングホイール(分積算計)

分を計測する歯車のこと。

 

・クロノグラフブリッジ(Y)

クロノグラフの歯車を固定するブリッジのこと。(クロノグラフランナーとミニッツレコーディング)

 

・コラムホイール

ストップウォッチを含めた全ての動作を制御する最も重要なパーツであり、柱の下には歯車があり2層式で作られている。

 

・リセットハンマー

クロノグラフホイールとミニッツレコーディングホイールを、カムで叩くことでゼロ地点にリセットするもの。

 

・ドライビングホイール

秒を計測するホイールのこと。

 

・キャリングアーム

コラムホイールの柱の上に乗っかることで、ドライビングホイールからの動力を、クロノグラフランナーに伝えるもの。

 

・クロノグラフランナー(秒積算計)

クロノグラフの針を動かすクロノグラフでは重要なパーツのこと。

 

他にも色々あるのですが、名前がたくさん出てくると分かりにくくなるので、今回はこれらだけ紹介しました。

 

 

クロノグラフはどうやって動いてるの?

まず文字盤を見たときのセンターにある、クロノグラフの針がどのように動いてるかを解説します。

ピンクの円のドライビングホイールと、キャリングアームにくっついてる青い中間車は常に同期しています。

先ほども説明した通り、ピンクは1分間に1周する4番車なので、この動力を青の中間車を通してセンターにあるクロノグラフランナーに伝達することで、中央のクロノグラフの針や、そこに同期する分積算計が動き出すと言うことです。

要するに、ドライビングホイール(ピンク)の動力源をもらって、クロノグラフの秒針、分積算計、時積算計を動かしていると言うことですね。

では、その詳細を見ていきましょう。

 

スタートボタンを押した時のムーブメント内の動作

クロノグラフムーブメント オペレーションレバーとコラムホイールの仕組み

スタートボタンを押したときに、オペレーションレバーが動作しコラムホイールの下の山を引っ張り1山分動かします。

クロノグラフ動作前と動作後のキャリングアームとブレーキレバーとクロノグラフランナーの配置比較

そうすることによって、まずコラムホイールを固定していたブレーキレバーが柱の上に乗っかり、ブレーキを解除します。

キャリングアームはコラムホイールの隙間に入り、キャリングアームと同期している歯車がクロノグラフホイールと同期して、クロノグラフが動作を開始します。

それと同時に、赤の中間車も動き出し赤の中間車は黄緑の分積算計に同期してるので、クロノグラフの針が動き出したのと同時に、分積算計も一緒に動き出すんですね。

機械式手巻きクロノグラフ 動作前と動作後のそれぞれのパーツの配置比較

リセットハンマー上部は柱の上に乗っかりクロノグラフの作動中は、リセットの動作が行えないようになっております。

またリセットハンマーの下部は、クロノグラフブリッジ(Y)から外れた場所に移動します。


それぞれのパーツは、先ほど説明したような動きをしていますよね。

では次に、ストップ時の動作状況を見てみましょう。


ストップボタンを押した時のムーブメント内の動作

クロノグラフムーブメント-ストップボタンを押した時のリセットハンマーと規制バネの動き

ストップボタンを押すことで、オペレーションレバーから伝達された動きが、コラムホイールを1山分動かします。

そうすることで、ブレーキレバーは再度、柱の隙間に入りコラムホイールをホールドします。
キャリングアームは再度柱の上に乗っかりキャリングアームと同期してる歯車は、クロノグラフランナーから外れます。


しかし、この時にリセットハンマーも動きそうですが、その後ろにある規制バネがリセットハンマーをホールドしてるので、リセットはされません。

それぞれのパーツは、先ほど説明したような動きをしていますよね。

では次に、リセット時の動作状況を見てみましょう。



リセットボタンを押した時のムーブメント内の動作

前述した通り、ストップボタンを押した時は、リセットハンマーの下部は、クロノグラフブリッジから外れてる状態です。

では、そのクロノグラフブリッジの下はどうなってるのかを解説しますね。

クロノグラフブリッジの下にあるハートカムの構造

左の写真は、クロノグラフブリッジありの写真で、右側がそれを外した時の写真です。

配置を再度確認すると、紫の円はクロノグラフランナーの部分で、黄緑の円は分積算計(ミニッツレコーディング)の円になります。

そして、それぞれの場所には画像で示してるように『ハートカム』があるのがご確認頂けるかと思います。

クロノグラフのストップボタンを押した時のリセットハンマーの配置図

前述した通り、ストップを押した時にはリセットハンマーは、このようにクロノグラフブリッジから離れてますよね。

また、リセットハンマーは規制バネによってその位置がホールドされています。
クロノグラフ-リセットボタンを押した時の配置図

そして、リセットボタンを押すことによって、規制バネをホールドしていたフックが外れ、リセットハンマーがクロノグラフブリッジの定位置に戻ると同時に、2つのカムを叩くことによってクロノグラフランナー(クロノグラフの針)と分積算計がリセットされます。

また、それと同時に、スライディングギアは上に上がり、クロノグラフホイールを止めているブレーキレバーを解除します。

それぞれのパーツは、先ほど説明したような動きをしていますよね。


これがクロノグラフが動作している原理なんですね。



まとめ

結構深めにクロノグラフの動きについて、解説したつもりだったのですがいかがでしたでしょうか。

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