クロノグラフ腕時計の文字盤(ダイアル表示)について -2-

クロノグラフ腕時計の機能をご紹介

テレメーター

単に1/5秒に分割されただけの正確さだけではすぐに満足のいくものではなくなり、後には、全ての出来事の計測には数学的な手法が必要となりました。そこで、その煩雑な数学の手順を必要とせず、すぐに目で見てわかる目盛り/物差しが発展しました。

私たちが最もよく目にするものとしては、特定の状況下にてキロメーター(km)での距離が計測できる目盛りです。

文字盤 またはそのそばに、kmで刻まれた目盛りがあり、”TELEMETER”(テレメーター)と書かれています。はじめのテレ-とは距離を表し、メーターと組み合わせることで、”距離を測るもの”という意味です。距離の計測は、空気中を音が進む速さを元にして計測されます。

例えば、遠く向こうに雷の光を見たとして、実際に雷の音を聞くまでの時間を測ります。この時の秒数と光の速さである333m/秒(s)を掛け合わせると、雷までの距離がわかります。

 

1892年には、La Chaux- de- Founds社のTheodore Schaedeliが51メートル(m)刻みの正確な計測が可能な懐中クロノグラフの特許を取得しました。距離は30秒用のクロノグラフ針が、メートルで示される細かい目盛りを直接指し示すことで確認できます(Z14)。印字された目盛りは、音速340.67m/秒である気温16度の環境での結果です。Schaedeliはその他の気温における距離の計測も可能にするため、修正値も整えました。

気温により、計測された距離はこのように修正されます。

気温 20度 +0.50m/100m

気温 16度 +0.00m/100m *音速340.67m/s

気温 10度 -0.56m/100m

気温 5度 -1.50m/100m

気温 0度 -3.00m/100m

20度の気温の時の1秒間に音の進む距離は、340.67m+(3.467×0.5)m=342.37mという計算になり、342.37m進みます。一方、0度の時には340.67m-(3.467×3)m= 330.47mしか進みません。これらの修正値には、空気の湿度は考慮されていますが、気圧は考慮されていません。

 

Z15に見られるように、ほとんどの腕時計クロノグラフは音速333.33m/sを基本としたテレメーターが付いています。したがって、ダイアル上には、最高20キロメートルまでは正確に読み取れるように、ひと目盛0.1kmから0.5kmの刻みで表示されます。音速333.33m/sというのは、気温約5度から10度の環境での修正値です。したがって、通常の気温である20度から30度での正確な距離の計測には、すでに述べたような修正が必要です。

通常の気圧760トルの時には、音速(m/s)はこのように変化します。

-40度 306.5m/s

-20度 319.3m/s

-0度   331.8m/s

+20度 343.8m/s

+40度 355.3m/s

+100度 387.2m/s

テレメーター用の目盛りは通常、ダイアルの一番外側にあります。

”Telemeter”もしくは”Telemetre”と記され、青色の文字がよく使われます。

読み取れる最大の距離(20km)は、クロノグラフ針の一周は60秒であることから、333m/s×60s=19980mまたは20km と算出されます。

輸出用としての時計は、マイル(mile)で表示されます。このような時計のダイアルには、ドイツ語の”Telemeile”または12.62miles と記してあります。これは、1マイルが1609.3mに相当し、音速333m/s=0.2069マイル/s、60秒では12.415マイルと計算されるからです。

ダイアルには12.625やこれに近い数が示され、これには修正因子もすでに考慮されています。12.625マイルという値は、気温15度の音速338.59m/sから算出されます。

タキメーター

腕時計クロノグラフの文字盤によく見られる第2の目盛り表示は、車や自転車、歩行者にも使えるタキメーターです。タキ(tacho/tachy)という接頭語は、その他のスピードを表す用語にもよく用いられます。この目盛りから、対象物の動く速さv(v=s/t)を読み取ることができます。sは距離 、sの移動にかかった時間がtです。200mから1000mの短距離であれば、直接目盛りから読み取ることができます。例えば、車が一定速度で60kmを1時間走ったとすると、その時のスピードは60kphまたは60,000m/3600sです。1000mの距離では3600s/60=60sかかります。

もし、2倍のスピードである120kmを1時間で走ったとすると、1000m移動するのに3600s/120=30s かかります。タキメーターの目盛りには、60、80、120kphなどの数値が簡単に読み取ることができます(Z17)。

 

1900年ごろ、スイス Brenets 社のLeon Guinandがタキメータークロノグラフの特許(No.21709)を取得しました。このクロノグラフでは、短時間から長時間に渡る幅広い計測時間に対応できる10kphから150kphのスピードを、直接ダイアル上に表示することができます(Z16)。当然ながら、このクロノグラフ針は6分で1周する必要がありました。当時の慣習として、秒針の目盛りが1/5秒ごとでなく1秒ごとの目盛りでしたが、これはとても不便だったことでしょう。現代のタキメーター付きクロノグラフは、60kphから1000kphまで目盛りから直接読み取ることができます。

 

1907年には、Geneva社のF. Amez- Droz は、渦巻き状のいわゆる”スネイルタキメーター”(カタツムリの物差し/目盛り)(Z18)の特許と取得しました (no.39276)。これは、文字盤が裏表の両サイドについている懐中時計に使われていました。秒針は1周を2分で周り、渦巻き状に5.5周できます。針の進行方向は、タキメーターが懐中時計の裏側についているので時計回りとは逆方向です。計測可能範囲は5kphから60kphです。このスネイルタキメーターは、後の腕時計クロノグラフに広く用いられることとなったため、表の文字盤に表示されることになりました。それに伴い、一番外側の目盛りは最高1000kphから60kphへと小さくなり(60秒=1周)、渦巻き状の目盛りは2周または3周までになりました。これにより、測定は20または15kphまでに限られました。

 

一般的に言うと、タキメーターの目盛り、さらに正確に言うと、タキメーターに表示されていて読み取り可能な最高スピードは、そのクロノグラフが制作された時代を反映しています。1920年代に作られた腕時計クロノグラフは、300kphまたは360kphまでの目盛りで、1930年代には400kph、1940年代頃には、500kphが印字されているのがわかります。1950年までには、750から800kphのスピードまで上がり、1950年代中頃までには、1000kphまで上がります。車や飛行機の速度が上昇するに従い、計測可能なスピードも上昇していきました。クロノグラフの製作技術の進歩はメカニズムを変えるだけでなく、単にダイアル表示までも変えたのです。

当然ながら、このような小さな目盛りからの読み取りは、専用に作られた大きな懐中時計から読み取るよりも正確ではありませんでした。それでも、タキメーター付きクロノグラフは最長1000mの距離の速さを計測が可能で、これは通常、目盛りに”BASE 1000”または“”KM1000”と印字されていることでわかります。これらは、輸出用にマイルで示されているものもあります。しばしばテレメーター目盛りとタコメーター目盛りは同じ文字盤上に表示されますが、これらは一見とてもテクニカルなようですが、特に使い勝手が良いというわけではありません。

パルスメーター

腕時計クロノグラフの文字盤によく見られる第3の目盛り表示は、”doctor’s watch” (ドクターズウォッチ)と呼ばれるもので、患者の心拍数の計測に使われました。一般的に、心拍数は患者の健康状態や疾患により左右されます。専用の時計がない場合、一定時間(20秒から30秒)のパルス数をカウントし、1分間のパルス数を計算します。特に難しい計算ではありませんがパルスメーター(Z19)はこの作業をさらに簡単に、もしくは計算そのものを不要にしました。ダイアルには、通常、”Calcule sur 30 pulsations”、”gradue pour une observation de 20 pulsations”、または”Gradue pour 30 pulsation”とか書かれています(Z20)。この、20や30という数字は数えるべき脈拍数を表します。当然ながら、心拍数が高い人では脈拍が20回や30回に達するまでの時間は、心拍数が低い人に比べて短くなります。

 

つまり、パルスメーター付きクロノグラフのスタートボタンを押し、20回または30回の脈拍に要する時間を測定すると、クロノグラフが指す目盛りにより1分間の心拍数が読み取れます。

ブレスカウンティングクロノグラフ(アズモメーター)

アスリートや医師にとって、呼吸数を計測することは重要です。呼吸数の計測のために文字盤上にパルスメーターに似た目盛りがあることがあります。これでは、数回の呼吸(5呼吸)に要する時間を計測し、1分間の呼吸数を文字盤から読み取ることができます。

計測範囲は通常、人間の呼吸数として健常な60回-14回/分と40-10回/分の間です。多くの場合、文字盤上にブレスレジスター用目盛りとパルスメーターが共に示されますが、これは呼吸数と心拍数は関連することが多いからです。

プロダクションカウンティングクロノグラフ

産業化は様々な品物の大量生産へと導きました。これは需要が高まった結果というだけでなく、大量生産のための実践的な製作プランが必要となりました。このプランを立てるため、個々のパーツの製作時間が算出されなければならず、また全ての過程を精査する必要がありました。

これはたった1つのパーツの製作時間の把握であれば簡単で、例えば30分ほどでしょう。しかし、同時に幾つもの小さなパーツの生産が、同時に手動または自動で1分かけて作られたとしても、個々の正確な所要時間はもはや簡単な計算では通用しません。このような状況で、プロダクションカウンティングクロノグラフ(Z21)が使われます。

 

プロダクションカウンティング用の目盛り は 一連の生産過程において、個々のパーツの生産容量を決定するのに役立ちます。大量生産のパーツの生産のはじめに、クロノグラフをスタートさせ、生産終了時にストップさせます。クロノグラフの針はプロダクションカウンティング用の目盛り上で、計測時間が60秒以内の場合、1時間に生産された数を示します。 Z22では、クロノグラフ針は最終的に750ピースを示しており、これは、特定の部品が1時間に750個作製可能であることを意味します。

もし、1つの生産時間がほぼ1秒もしくはそれ以下だった場合、連続して数個の部品(例えば10個)の合計生産時間を用いるのが良いでしょう。この場合、1時間の生産数は10×750=7500個となります。もし、1つのピースの生産にかかる時間が60秒以上であった場合、例えば、80秒とすると、1時間(3600秒)を80秒で割ると45になります。この数は、1時間に45個生産可能であることを意味します。

文字盤上での表示方法は様々です。クロノグラフZ22では、60から3000までの範囲です。Z23では、60から1800、さらにその内側にある目盛りはクロノグラフ針の2周目用に、30から59が印字されています。これらのクロノグラフは産業用であり、例えば、1分は100秒、1時間は100分のような小数点表示が併記してあることもよくあります。このような表示は、通常の60進法のすぐ横に記してあります。

テレフォンユニットカウンター

古くには、特に海外への通話は、郵便局から3分単位で料金を支払うシステムが長い間主流となっていました。クロノグラフの分積算計は、通常の分のカウントだけでなく、通話の際には3分毎表示があればとても便利でした。一般的に、最初の3分、6分、9分の目盛りはそのほかの目盛りよりも長く伸びた線で示されていました(Z24)。したがって、あとどのくらい通話ができるか一目でわかるのです。その後、通話料の算出法が変わると、このタイプの時計は不要となり、時計の文字盤で見ることはなくなりました。

テレフォンユニットカウンター Z24

タイドクロノグラフ(ヨッティングクロノグラフ)

このクロノグラフZ25では2つのことなった表示が示されています。補助の分積算のダイアルXは、5分ごとの6つの領域に分けられ、それぞれ色付けされています。色の濃い部分は青、薄い部分はダイアルそのもの色であるシルバーです。

 

ヨットレースのレガッタでは、1度目のスタートの合図の後、正確に5分後に鳴る2度目の合図で初めてスタートラインを越すことができます。この2つの合図の間の5分間に、正しいタイミングでスタートを切るために必要な準備をします。色のついた領域は、このクロノグラフにはなくてはならない表示なのです。

左の補助ダイアルは、水位(潮の干満)を表します。特定の港や海岸線における満ち潮、引き潮の発生を教えてくれます。今では、特定の海岸でのいわゆる潮の干満表が、あらかじめ決められたマークによって表されます。継続的な潮汐を観測するために、時計は潮の満ち引きの時間を事前に知らせるよう作られました。

潮汐を表すダイアルは、24時間表示のリングで、 その中には4つの領域に分かれた回転する円盤があります。この円盤上で、2本の軸(針)が交わってクロスになっています。。Z25に表わされているように、上下2箇所は青色の部分で、これは満ち潮を表します。左右の2箇所の領域は黄色で着色してあり、引き潮を表します。円盤Yは、月の軌道に沿って動き、クロスが潮汐を示します。このクロスは、正確には90度で交わっているのではなく、反対の位置を指す2つのポイントは、潮汐のサイクルである12時間25分の差があります。ケース側面についている押しボタンZの操作により、特定の場所や海岸での潮汐を設定できます。この潮汐表示は、クロノグラフ機能とは全く関連ありませんが、ヨットなどの船のスポーツではとても役立ちます。

回転ベゼル:時刻設定と世界の時間

セッティングリングや回転パネル、ガラスのベゼルは腕時計では珍しくありません。これらは、時刻を表すためだけでなく、時計を巻いたり、針を設置に役立っています。1941年には、La Chaux- de ?Fonds 社のPhilippe Weiss は、2つの目的のために、セッティングリングに12時間の目盛りを印字した時計の特許を取得しました(特許No. 215450)。Z26の図は、特許申請時に用いられたものです。セッティングリングが波形のバネにより取り付けてあること(Z26,fig.2 and 3)、世界各地の時刻と連携したリングそのものの機能(Z26, fig. 1)に対して、特許が付与されました。クロノグラフは30分の分積算ダイアルで表されます。それと同時に、セッティングリングには、1時間と0.5時間の目盛りがあるため、クロノグラフがスタートした後、12の数字を時間針に合わせれば、時間積算計としても使えます。

 

Z26 fig.1に見られるように、固定されたダイアルの周りには、それぞれのタイムゾーンに属する都市名が記されています。ダイアル上のちょうど反対側に位置する2つの都市の時差はちょうど12時間です。例えば、シンガポールとニューヨークはちょうど12時間の時差があり、ニューヨークが昼の12時の時、ベルリンは夕方6時、シンガポールは夜中の12時です。したがって、例えばオーストラリアのシドニーでの時間を知りたければ、セッティングリングの12をアゾレスまたはシドニーに合わせ、セッティングリングの時計(時)の針を読みます。Z26 fig.1では、現在時刻はほぼ10:30を示していますが、シドニーでは7:30頃となります。

このシステムは24時間表示ではないので、午前か午後を決定するには、多少の地理学の知識が必要です。知りたい地域が、現在地よりも東に位置する場合は、昼の12時から夜へと進む方向に考えます。一方、現在地よりも西に位置する地点の時刻は、昼の12時から朝へと戻る方向に考えます。

回転ベゼル:計算機付きクロノグラフ

テレメーターやタキメーター、プロダクションレジスターなどに代表される多くの計測にでは、数学的な計算を前提として、目盛りにより表示されていました。しかし、計算の基礎(例えば音速についての、音源からの距離)を知っておかなければならないという欠点があります。このような場合でも、スライド物差しのような対数目盛りを用いれば、掛け算や割り算が可能です。

 

このような回転する対数目盛りは固定の物差しの反対側につけられており、このようなモデルは1941年にスイスのLa Chaux- de- Fonds社のGraef & Cie. Fabrique MINOが特許を取得しました(特許No.216202)。Z27,fig. 1から3では、特許申請時のものを再現しています。特許は対数目盛りそのものにではなく、すでにJost Burgi(1552-1632)とJ.Napierによりメカニカル計算機として使われていました。現在のボタンを押すタイプの計算機は1662年頃のS.Partriges によるものです。ケースに固定されているベゼル上に、対数物差しと回転ベゼルが取り付けられており、この方法に対して特許が付与されました。

Figure 2、3はGraef & Cie 社が特許申請した際のデザイン標本です。ここでのセッティングリング5とガラス板7はケース14に覆いかぶさるようについており、これらは回転することができます。1つの物差しは固定されたダイアル10の上にあり、回転する物差し6はセッティングリング5の上についているため、これらはダイアルの上に隙間のないよう設置してあります。Fig.3で見られるように、ダイアル10の表面には、小さな段がついており、そこにセッティングリング6の物差し13がはめ込まれています。物差し13に印字されている1.0から9.9対数目盛りは、ガラス板7により傷や衝撃から保護されています。

物差しを単に動かすことにより、目盛りを正確に読むことができます。この可動式計算物差しは、もちろん普通の腕時計としても使えますが、クロノグラフ腕時計に付属することでさらに有用性が高まります。クロノグラフ腕時計は、現在時刻を見失うことなく、細かな時間間隔を測定できるため、そのためのどこでも計算ができます。

為替相場、紙のサイズ(A4,B5 など)の増減に関わる計算も、この時計ならば簡単にできます。1950年代、1960年代に計算機付き腕時計は一般的には普及しませんでしたが、パイロット用の航空時計には計算機能が備わっていました。

2つのクラウン付きクロノグラフ

Universal Perret Berthoud の特許

時計に備わっているすべての機能は、たった2、3個の押しボタンや1つのクラウンでは操作できません。これに対し、2つの会社がしかも同時に、2つ目のクラウンを付けるというアイディアを出し、短期間に成功を納めました。スイスの”Manufacture des Montres Universal Perret & Berthoud S.A Geneve (Suisse)”社は1940年11月6日 と1941年9月22日に、同じくスイスの”Excelsior Park, Le Fils de Jeannerer Brehm, St. ?Imier (Suisse)”社は1943年2月23日に、計3つの特許が取得されました。おそらく、Excelsior ParkはUniversal Perret & Berthoudの新しい方法に気づいており、類似した方法を模索していたのだと予想されます。

しかし、Universal Perret & Berthoudが特許を取得するには、すでに特許が与えられているものとは異なる手順を生み出す必要がありますが、言うまでもなく、法に触れない範囲ですでに取得してある特許の”裏をかく”ような 方法がありました。注目すべき点は、最後に特許が公表されたのは、1945年2月6日、特許No.23507、その他2つは、1945年4月16日、特許No.235608、1946年3月1日、特許No.239879です。普通の時計と同様に、すでに針の設置方法は開発されていたので、目新しいことはなく、もはや特許を保護する必要はありません。Universal Perret & Berthoudがしたように、2つ目のクラウンを付ける技法は、特許法を獲得するためにデザインされたものでした。しかし、よくある事例のように、公表される前に、2つ目のクラウンを利用して、同じまたは似た目的で彼らの発想は賢いエンジニアたちに裏をかかれました。

Universal Perret & Berthoudは、秒針がリマインダー機能を果たすよう操作できるクラウンの機能(アラーム機能)の特許を取得しました。これらの時計はEbauches S.A.により、”Memento- Chronograph”(メメント クロノグラフ)と名付けられ、この名前を用いて取引されました。Z28 fig.1 は、時間と分を表す針が通常通りの配置で付いています。

 

さらに、12の数字の下には、補足のダイアルがついており、このダイアルの針は2つ目のクラウンW(ケースの左側)により操作され、時計の機能とは独立して動きます。セットされた後も針はその位置に止まったままで、時計の動きとは全く連携しません。この針のセッティングは単に”目で確認するアラーム”なのです。Z28 fig.2ではダイアルの下にあるホイールを示しており、これも特許で保護されています(No.235072)。 ケースの右側にあるクラウンで時刻を設定するのと同じように、これらのホイールは左のクラウンによりセッティングされます。

 

その後の特許(No.235608)は、Z29 fig.1-5にある詳細なデザインとその機能へ与えられました。Fig.1では、ダイアル下(ケースの中)のスペースが十分でないため、ホイール11、12、14からなるホイールトレインのコンバージョンホイール13のそばに、ホイール15、16、17からなるホイールトレインが設置してある様子がわかります。Fig.2 はFig.1の断面図です。Fig.3、Fig.4 は、通常ワインディングステムが突き出ているのと同様にセッティングステム22が突き出ている様子を示しています。この特徴的なメカニズムでは、クラウンが動かなくなるまで引くことで針をセットすることができます。このクラウンの引きにより、ブロック25が”針設定ホイール”24の中にある8角形の穴へ挿入されます。

セッティングホイール22(Fig.2)の中の断面図の26、27が、クラウンの動きを制御します。一旦、クラウン18が押し戻されると、このクラウンは手前にも奥へも回るようになりますが、これでアラーム針が予期せず設定され直すことはありません。Fig.5はFig.2を元にした断面図で、針のセッティングホイール23の中にある8角形の穴 を表しています。