ジン(SINN)のEZM1シリーズってどんな時計なのかを見てみよう!
動画でEZM1シリーズの歴史と実力をご覧になる方はこちらから↓
今日のこの記事では、SINNのEZM1シリーズの腕時計について解説させて頂きます。
EZM1シリーズなのですが、現在では様々なモデルが誕生し復刻モデルも存在するために、微妙な違いを見分けるのが難しいのもあります。
ここでは、そんなEZM1シリーズの歴史や魅力、それぞれのモデルの特徴を解説して参りますので、是非とも最後までお付き合いください😊
それでは早速やって参りましょう。
EZM1シリーズとは?
そもそもSINNという会社なのですが、有名なスイスブランドと比較すると歴史は浅く1961年にパイロットでフライト・インストラクターの、ヘルムート・ジン氏によって設立されたブランドです。
元々がパイロット上がりの人なので、求められる時計の基準も理解しており、質実剛健で無骨な作りになっているのがSINNの時計の特徴です。
SINN社のEZMシリーズは、1997年にドイツ税関刑事局の特殊部隊であるZUZ『Zentrale Unterstuetzungsgruppe Zoll/ツェントラーレ・ウンターシュトゥツングスグルッペ・ツォル』(税関局中央支援グループ)の要請で開発されたEZM1から始まりました。
EUの統合にともなって国境検問所が取り払われ、EU内では様々な国の人々が一つの国のように行き来できるようになったため、ZUZは、より高度な機能を備えた時計を必要としていました。
そんな時に、ZUZがSINN社に要請しドイツ税関防衛に向けてSINN社から発案されたのが『503 EZM1』だったのです。
ただし、ここでEZMを知ってる方も知らない人も、ほとんどが疑問に思うことが、戦場とかなら意味は分かるけどなんで税関なの?
ということだと思います。
私はEZMに興味を持った時、めっちゃかっこいいと思いましたが正直税関の何が過酷なのか全く意味が分かりませんでしたし、ちょっと歴史としては弱いなぁと感じました。
しかし、それは日本の税関しか見えてないからなんですね。
日本の税関ではまず銃撃戦などは発生しませんが、ヨーロッパの税関では様々な人が出入りするために、麻薬組織など凶悪なグループが入ってくることもあります。
関税局職員が検挙や摘発を行う際に、彼らを危険な状況から守るための支援を行うのがZUZという部隊の役割なのです。
ZUZ部隊は、きわめて複雑かつ巧妙な作戦を遂行する際に、正確な時間計測が必須となるため、SINN社へ求めたのは精密機器レベルの頑丈なクロノグラフでした。
スピードが要求される状況のみならず、最もつらい悪条件においても、一瞬で時間を把握できる視認性が絶対条件だったのです。
出典:https://deadliestfiction.fandom.com/wiki/GSG_9
因みに、ZUZ(ツェット・ウー・ツェット)のメンバーは、ドイツ連邦警察の対テロ特殊部隊という、GSG9(ゲー・エス・ゲー・ノイン)から選別された20名で構成されています。
このZUZは麻薬組織もそうですが、どちらかというとテロに対しての抑止力という側面が強いようです。
このように、戦争というミリタリーの出自ではなく現代的な『テロ組織』へ対抗する部隊へ提供された腕時計なので、やはりこのモデルの見え方というのは、大きく変わったのではないでしょうか。
ではここからはEZMの頭文字と実際の時計を見ていきましょう。
503 EZM1の特徴
EZMとはドイツ語の“Einsatz Zeit Messer(アインザッツ・ツァイト・メッサー)”でありこれらは出撃・出動、時刻、計測機器を意味しており、つまり言い換えると“出撃用計測機器”となります。
時計の特徴は、軽量化を実現させるためにケース、ブレス共にチタンが使われていることと、手の甲に圧力がかからない様にする為と、ミッションの妨げにならないように、リューズやクロノプッシャーは左側に配置されています。
文字盤を見てみましょう。
文字盤は、濃いグレーの艶消しであり計時に関わるインデックスと針はホワイトになっています。
ちなみにインデックスと針以外の、ロゴやデイトなどの文字が赤になっているのは、暗闇でも溶け込み少しでも目立たないようにする為です。
搭載ムーブメントはレマニア社製Cal.5100であり、本来は小窓で表示されるスモールセコンド、12時間計、24時間計が外してあります。
なぜこのように、もともと備わっている機能を外してるかを解説します。
ZUZの作戦は通常長くとも15分で終了するため、秒表示と分積算計だけがあれば充分なのです。
必要な機能だけを残し、視認性を特化させた結果、無駄な機能を外した必要最小限のディスプレイになったのです。
針が同軸上に2つありますが、1つは通常のクロノグラフで、もう1つが分積算計になります。
レマニアのCal.5100については、こちらの動画で詳しく解説しておりますので気になる方はこちらもご覧くださいませ↓
では、スペックを見てみましょう。
防水性は300m
製造時に入ってしまうわずかな水分も視認性に影響するとのことで、内部をアルゴンガスで満たした上に、内部の水分を除去する為のドライカプセルが装備されています。
ムーブメントに使用されるオイルは、SINN社製オリジナルの特殊オイルであり、-45℃〜+80℃までの範囲で動作することが保証されています。
では次に、EZM1のそれぞれのモデルを見てみましょう。
EZM1のそれぞれのモデルを見てみよう
3つの時計が並んでいますが、一番左と真ん中が初代で1997年に誕生したものになります。
左側のは民生モデルで、2005年まで生産されその特徴は、6時位置の表記がトリチウムを表す3Hになっているところです。
真ん中のモデルは、1997年だけ生産され実際にZUZに配布されたモデルです。
6時位置の表記がZUZのマークになっています。
一番右のモデルは、2008年に250個限定で生産されたモデルで、6時位置の表記は当時の先端夜光であったスーパールミノバを表すArの表記があります。
では次期型モデルを見ていきましょう。
EZM1.1
次にEZM1が誕生したのは、2017年でありこちらは500本限定で誕生しました。
EZM1誕生から20周年という節目に作られたモデルで、ぱっと見は2008年モデルとほとんど同じなのですが、このモデルは前の3つのモデルと異なりサイズは40→43mmになりました。
素材もチタンからステンレススチールに、テギメント加工が施されたものになっています。
テギメント加工とは、簡単にいうとPVDのような感じでブラックのコーティングになります。
こちら搭載ムーブメントもレマニア社製Cal.5100から変更されており、自社製Cal.SZ01が搭載されています。
このSZ01ムーブメントも、レマニアCal.5100をベースにして設計製造されているのです。
まとめ
今回EZM1シリーズに絞って解説させて頂いたのですが、海上部隊向けのEZM2、ドイツ警察特殊部隊用に開発されたダイバーズウォッチEZM3、消防隊や救助隊のために開発されたEZM4、などなど様々なプロフェッショナルウォッチが存在します。
元々がパイロット上がりの社長なだけに、視認性を追求した必要な機能だけを残すという哲学は、現代的ミリタリーウォッチと評価出来るでしょう。
将来的に、この時計はIWCのマーク11のポジションになりうるのではないかと考えております。