ベンラス!メイドインアメリカを代表する最強ミリタリーウォッチカンパニーの歴史

動画でベンラスの歴史をご覧になる方はこちらから↓

 

この記事ではですね、私たちが憧れるメイドインアメリカのミリタリーウォッチ『ベンラス』の歴史と魅力について解説させて頂きます。

 

最後まで記事を読み終わった頃にはベンラスの時計がいかに素晴らしいかが分かると思いますので、どうか最後までお付き合いください。

 ベンラスの歴史


出展:https://www.benrus.com/

 

 

1921年 ニューヨークにて創業

ベンラス社はベンジャミン・ラズルスと、彼の2人の兄弟がニューヨークで創業し、その社名はベンジャミンの「ベン」、ラズルスの「ルス」をとって名付けられました。

3人は、5,000ドル(100円の為替レートで50万円)の貯金を出し合い、スイスの時計ムーヴメントを輸入し、ニューヨークでそれらを組み立て始めたことから会社の歴史が始まります。

そんな時計業界においては、かなり後発スタートであったベンラス社なのですが、なぜアメリカでここまで急成長することができたのでしょうか。

それは、有名人と契約し知名度を一気に押し上げる、マーケティング戦略にありました。

 

ブランド力の向上に貢献したのは、2人の人物がいます。

ベンラス社と契約した1920年代のアメリカの有名人

1人目が、1920年代前半のチャールズ・リンドバーグ(大西洋横断に初めて飛行機で成功した人物)でありその後、創業から5年後の1926年に、プロ野球選手であるベーブ・ルースとの契約でした。

これらの広告が成功を収め、1930年代、ベンラスは男性用と女性用の美しい高級時計モデルを発表し、これらは当時大きな成功を収めました。

ですが、この後も更なる繁栄期を迎えます。

 

 


1940年代 スカイチーフの誕生

ベンラス社製 スカイチーフのクロノグラフと1940年代のポスター

広告でヒットしたベンラス社でしたが、実際の実力はどうだったのかを見ていきましょう。

40年代に入ると、パイロットや航空業界からクロノグラフの需要が高まり、彼らがプロフェッショナルとして使用できる時計が、求められるようになります。

スカイチーフは、ベンラスの経験とパイロットのニーズを掛け合わせ、ベンラス初のクロノグラフを実現したモデルです。

スカイチーフの誕生はあらゆる航行作業を、時計を頼りに行うパイロットにとって欠かせないツールを提供したのです。

スカイチーフは当時の主要航空会社で人気を博し、「有名航空会社のオフィシャルウォッチ」というスローガンを掲げ、パイロットたちの誰もがそれに異を唱えることはなかったほど作り込まれたものでした。

では、そんなスカイチーフの詳細を見てみましょう。

スカイチーフには、黒文字盤と白文字盤が存在するのですが、スタイルがはっきり分かれています。

ベンラス スカイチーフ ムーブメント バルジューCal.72

黒文字盤のモデルは、ステンレススチールケースと黒文字盤がセットでありカレンダーデイト表示機能は搭載されてません。

針はペンシル針でインデックス部分も、夜光塗料が使われています。

表示機能は3レジスターで配置され3時位置が30分積算計、12時位置が12時間積算計、9時位置にはスモセコが搭載されております。

ベンラス スカイチーフ 白文字盤 カレンダー 搭載ムーブメント バルジューCal.72C

白文字盤の方は、針は細長いバーの針でありカレンダーデイトポイント機能搭載の14金ゴールドと白文字盤がセットになっております。

それぞれのムーブメントは、これまた高級ムーブメントであるバルジュー社の代表作のCal.72が搭載されており、カレンダー機能が追加されるとCal.72Cになります。

 

そんな勢いのあるベンラス社ですが1950年代に入ると、その資金力を使ってハミルトンの買収を仕掛けますが失敗に終わります。

失敗に終わってしまうものの、当時はそれだけ勢いがあったということでしょうね。

 

ダイバーズウォッチ ウルトラディープシリーズ

ベンラス ダイバーズウォッチ 歴代ウルトラディープベンラス社は米軍に採用されたわけではありませんが、3世代に渡って特徴的なダイバーズウォッチも製造していました。

それらは全てが666フィート(200m程度)の防水機能を搭載していましたが、その構造は近代化していくにつれて進化していきます。

60年代のスタイルは、リューズが2つあるスタイルでこれはEPSA社(エルビン・ピケレス社)のスーパーコンプレッサーというケースを採用しているためです。

2時位置のリューズで内部の回転ベゼルを回し、4時位置のリューズが通常の役割を果たします。

EPSA社のケースについて、あまり詳しくないという方はこちらの動画をご覧ください↓


2代目が70年代前半に誕生した、ウルトラディープですがここからワンピース構造になっています。
ベンラス 2代目 ウルトラディープの構造

裏蓋からの水の侵入を完全に防ぐために、ステンレススチールをそのままくり抜いて、裏蓋が必要ない構造になっているのです。

 

文字盤側から、分解することが可能でありそこに幾つかのパーツが設置してありますが、その部分のパーツも水圧がかかるとより密閉されるように設計してあり、簡素化しつつも防水性は維持されているのです。

70年代後半のウルトラディープですが、ケースサイズが大型化したことが特徴です。

それまでは初代が36.5mm、2代目が36mmであったのに対して3代目は40mmとかなり大型化しています。

60年代から40mm前後のケースを使ったダイバーズウォッチは、他社で製造されていましたが、どちかというと深くまで潜る必要があるプロフェッショナル向けのものでした。

その反面、一般の人々の趣味としてのダイブの需要も高まっていたために、市場のニーズに合わせてある程度の防水性が与えられた、ダイバーズウォッチが作られたものだと思われます。


 

1960's ベトナム戦争 陸軍用ミリタリーウォッチ DTU-2A 

ベンラス benrus-DTU-2A(MIL-W-3818B)


1960年代初頭、米軍は既存のミリタリーウォッチ(MIL-W-3818A,これはブローバーとエルジンが作ってました)のデザインを、戦地での兵士のニーズに合わせる必要があるとし、次期型のMIL-W-3818Bをベンラス社に発注しました。

そして1964年から1960年代後半にかけて、ベトナムの戦地にいる兵士のために新しい陸軍用時計が製造されました。

この新世代の時計がDTU-2A(MIL-W-3818B)です。

シンプルなミリタリーウォッチですが、素晴らしい時計です。

ベンラス 陸軍用ミリタリーウォッチ DTU-2A 搭載ムーブメントCal.DR2F2

スペックはスイス製のムーブメント、DR2F2(ETA2372)、アクリルガラス風防、17個の受け石を持つムーブメントにはハック機能が搭載されており、36時間パワーリザーブ、日差±30秒の精度、針にはトリチウム夜光塗料を備えています。

裏蓋の隙間から、汗による水が入らないようにするために、裏蓋も同期しているモノコックケースを使用しています。

風防部分から修理できるように設計してあり、部品を交換しながら使用することを前提に作られています。

ミリタリーウォッチとしてはまだ経過年数が少ないために、コンディションの良い状態で残っています。

 


ベンラス・タイプI&II

1970年代初頭、アメリカ軍はMIL-W-50717の軍仕様のダイバーズウォッチの詳細な設計図を書き上げ、ベンラス社へ製造を依頼しました。

アメリカ海軍特殊部隊 MIL-W-50717

しかし60年代後半になってくると、軍事費予算が削減されそれが時計にも影響を与えます。

これまでの、高品質な時計を作って壊れたら修理をする。という方法では採算が合わなくなったために、新しい発想として使い捨ての時計(ディスポーザブルウォッチ)が誕生しました。

このベンラスのタイプ1,2の特徴は、ディスポーザブルウォッチでありながらも、高機能であるということです。

基本的には、アメリカ海軍特殊部隊に支給された時計ですが、その他にも、陸軍特殊部隊、陸軍レンジャー部隊、CIA海洋部隊にも支給されています。

この時に必要とされたスペックが、大型で耐衝撃性、視認性に優れ、防水性があり、自動巻きの時計で、支給されるCIAや軍の特殊部隊に本当に十分な耐久性を持つものでした。

新しいスペックとしては、「タイプI」以前には考えられなかった水深150mの防水機能、物理的・温度的衝撃に耐える自動巻きムーブメントが条件に」入っていたことです。

まさに頑丈な時計でなければならず、興味深いことにこの仕様がきっかけに「工具時計はこうあるべき」というスタンダードになりました。

よって、ワンピースケースが採用されており、堅牢性と防水性が高められているのが感じられます。

 

ベトナム戦争は1955~75年まで続いた戦争であり、軍事費に関しては常にコスト削減との戦いでした。

この戦争から、すべての兵士に時計を支給しなければならない、という習慣がなくなり、兵士は自分で時計を調達する必要がありました。

しかし、本当に必要な人物には軍からの支給がありました。

そのため、時計は任務上、頑丈な時計が必要な部隊や隊員にのみ支給されたのです。

タイプIとタイプIIは、ベトナム戦争の間、精鋭部隊にだけ支給され、米軍のダイバーズウォッチの中で最も有名で憧れの存在となっているのです。

 

 

では、それぞれの時計を見てみましょう。

ベンラス タイプ1と2の違い

左がTYPE I で右がTYPE II になります。

共通点は、2つともインデックスと針には夜光塗料が使われており、回転ベゼルが搭載されております。

そしてこれらのタイプは、文字盤を見ればその違いは簡単に見分けられます。

タイプIは12時の位置に三角インデックス、3時、6時、9時にバーインデックス、その他の時刻にドットマーカーが施されています。

それに対してタイプIIの文字盤は、従来の24時間表記で、時刻ごとに小さな三角インデックスが配置されています。

 

Class AとBの違いなのですが、夜光塗料にあります。

Class Bの時計の文字盤や針には夜光塗料が使用されず、微量なトリチウムにも反応してしまう恐れのある、原子力潜水艦のような場所で使用されていました。

ベンラス タイプ2 クラスB

本来であれば、三角マーカーの部分と、針の中央はほんのりイエローなのですが、真っ白になっていますね。

これは原子力潜水艦の中であっても、視認性を確保できるようにということで、黒文字盤の反対色である白が使われています。

 

ベンラス タイプ1と2の裏蓋の刻印の違い

ケースの裏面には

・ミルスペック番号

・メーカー名

・品番

・契約番号

・製造年月日

・シリアル番号

 

が刻印されています。

ベンラス社のタイプIとタイプIIの製造期間は、1972年から1980年の約10年です。

その間に製造されたタイプIクラスAは約6,000台、タイプIIクラスAは9,000台強、タイプIIクラスBは不明、タイプIIクラスBは約1,000台が生産されました。

ですので、クラスBが激レアの時計になるんですね。

このように、アメリカ軍の中でもランクの高い軍人や精鋭と呼ばれる人たちしか手にすることができなかった時計なので、今となっては希少性と合わさって物凄い人気が出てるんですね。

ベンラス・タイプI&II スペシャルエディション

その人気から現在では復刻版が出ており、Type IクラスAの新品が1695ドルで購入できます。

ヴィンテージウォッチはケースサイズが39mmであったのに対して、復刻版は42.5mmと結構巨大化しています。

ヴィンテージにこだわりを持たないのであれば、新品でも充分にその魅力を感じることができると思います。

まとめ

最後にまとめなのですが、ベンラスもクオーツショックの波に逆らうことができず70年代後半に倒産してしまいます。

ですが、今の私たちが見たベンラスの時計というのは、アメリカが反映してきた時代とその後の戦争の時代と重なっており時計がそのまま歴史を映し出してるように感じるのです。

どこの国もそうなのですが、その時にイケイケの時計ブランドが軍用時計として採用されます。

ベンラス社も、ベトナム戦争の前半から後半まで時計を提供していたことを考えると、非常にアメリカという国から信頼されていたのが分かりますよね。

それには、時計に求められたスペックをしっかりとクリアする技術力と、ブランドの信頼性がバックにあったからに他なりません。

DTU-2Aは安価で手にすることができるので、まずはそれを身につけてみて真の魅力が分かった時に、スカイチーフやタイプⅠやタイプⅡを手にするともっと時計のコレクションを楽しめそうですよね。