ロレックス デイトナ "ポールニューマン" ってどんな時計?第1世代Ref.6239と6241

動画でポールニューマンの腕時計について、ご覧になる方はこちらから↓

ロレックスのデイトナの中で最も、注目と興奮を集める腕時計は『ポールニューマンモデル』と言って良いでしょう。

しかし、ロレックス愛好家たちをこれほどまでに熱狂させる、この時計の魅力は一体何なのでしょうか?


ポール・ニューマン・デイトナは、多くのコレクターの予算には届きませんが、それでも調べたり学んだりするには楽しい時計です。

この記事では、多くの人が地球上で最も素晴らしい腕時計と認知しているデイトナについて、もう少し明確に説明することを目的としています。

デイトナref.6239が、ポールニューマンロレックスである理由は何なのか。

その特徴とは?

などなど解説して参りますが、この記事を見終わったころにはポールニューマンについて、ある程度の理解ができてると思いますのでどうか最後までお付き合いください。

 

ロレックス デイトナ "ポール・ニューマン"とは

ポールニューマンとは、デイトナの中から派生してできてたデザインであり、後ほど詳しく解説しますが俳優であり、レーサーでもあったポールニューマンという人物がその腕時計をつけて、レースに挑んだことでその名前がつけられました。

ちなみに、ポールニューマンはニックネームであり、ロレックス社は当時はこの特殊な文字盤のことを『エキゾチックダイヤル』と読んでいました。

そんなポールニューマンですが、今でも作られてるかというとそうではありません。

このモデルは、1963〜1972年頃まで生産されたものの、それ以降の生産はありません。

ですので、ヴィンテージウォッチだけの文字盤ということなんですね。

この期間の間に、第3世代まで誕生したのですが正確にいうと、派生もあるのですがここでは分かりやすいように、それらの2種類のパターンに分割します。

その2種類のパターンは、ベゼルの素材の違いです。

1つ目がステンレススチールケースで、2つ目が黒のプラスチックベゼルです。

こちらの画像をご覧ください↓

 ロレックス デイトナ リファレンスの分類 ステンレススチールとプラスチックベゼル

上がスチール製のベゼルで、下がプラスチック製のベゼルになります。

そして、左から右にかけて1〜3世代目へと移っていきます。

こちらはポールニューマンモデルが作られていた、第3世代までのモデルを載せていますが、それぞれの世代でベゼルは2つ準備されていました。

では、レギュラーモデルとポールニューマンモデルにはどのような違いがあるかを見てみましょう。

ロレックス デイトナ ポールニューマンモデルとレギュラーモデルの違い Ref.6239

左がポールニューマンモデルで、右がレギュラーモデルになります。

ぱっと見では、その違いはほとんど分からないと思いますが、レギュラーバージョンのデイトナと比較して、簡単に区別できるところが4箇所あります。

こちらの画像をご覧ください。

 

ロレックス-ポールニューマンダイヤルの文字盤の特徴.jpg

まず一つ目が、インダイアルの内側にラインから伸びたキューブ型のメモリが入っています。

2つ目が、インダイヤルの中の数字はアールデコ時代に流行った、一般的なアラビア数字とは違う特徴的なデザインになっています。

3つ目が、外周にこれまたキューブ型のインデックスが取り付けられており、インダイヤルと統一性があります。

4つ目が、インダイヤルの表示が20,40,60ではなく15,30,45,60になっています。

大きな違いは、上記の4つになりますがそこを知っていればレギュラーモデルとは、簡単に区別することができると思います。

生産年は1963年~1972年であり、短い期間でありますがさらにこのポールニューマンモデルはその中でも、3割程度しか生産されていません。

搭載されてるムーブメントは、1〜3世代目までは機械式ムーブメント Valjoux社製 Cal.72をコンバートしたもので、第4世代からはゼニス社のエルプリメロが搭載されることになります。

ムーブメントについては、後ほど詳しく解説しますね。

エキゾチックな文字盤は、以下の6つのヴィンテージ・ロレックス・デイトナ・クロノグラフで見ることができます。

 

この第3世代までのリファレンスをまとめると下記になります。

 

第1世代
- ロレックス デイトナ ref. 6239

- ロレックス デイトナ ref. 6241

第2世代

- ロレックスデイトナref. 6262

- ロレックスデイトナref. 6263

第3世代

- ロレックスデイトナref. 6264

- ロレックスデイトナref. 6265

 

また、これらの文字盤には、ホワイトと黒の文字盤の2種類が存在します。

価格: (最低) 10万ドル以上~1780万ドル未満

為替レート1ドル100円換算の場合1000~1800万円程度

コンディションによって価格が変わってきますので、その幅も広いということですね。

 "ポール・ニューマン "モデルが少ない理由

ロレックス社は1960年代からデイトナクロノグラフに、一味違ったダイヤルのバリエーションを提供するようになりました。

ロレックスのカタログでは「エキゾチックダイヤル」と呼ばれ、通常のデイトナダイヤルとは一線を画す美しさで、ステップ状のミニッツトラックやアールデコ調のフォントがクロノグラフレジスターに採用されているのが特徴です。

現在、これらのエキゾチックダイヤルは「ポール・ニューマン」ダイヤルと総称され、これを搭載したロレックスのクロノグラフは「ポール・ニューマン・デイトナ」と呼ばれています。

ここでは、そのように呼ばれるようになった由来を解説します。


実はこの時代、こうしたエキゾチック文字盤は、あまり好まれていませんでした。

そのため、デイトナを購入する顧客は、レギュラーダイヤルのデザインを選ぶことが多かったのです。

よって、前述した通りロレックス社は、エキゾチックダイヤルの生産数を減らしレギュラー文字盤をメインに製造していくこととなります。

その結果、これらのエキゾチックダイヤルは現在では入手が著しく困難となっており、ヴィンテージロレックスコレクターにとっては、文字盤だけであっても高額取引の材料になっています。

その数の少なさと、現在の需要の高さから、エキゾチックダイヤルを持つ本物のヴィンテージロレックスデイトナを、良いコンディションで入手することは簡単なことではないでしょう。

しかし、レギュラーモデルのデイトナと、エキゾチックダイヤルのデイトナとの価格差は非常に大きいですが、両者の違いは純粋に外観の違いだけであることも理解しておかなけれればなりません。

 

ポール・ニューマンが使っていたデイトナ Ref.6239

ポールニューマンとロレックス ポールニューマンモデル

では、ここからはポールニューマンモデルではなく、ポールニューマンが実際に使っていたRef.6239についてお話をして参ります。

ポールニューマンが実際に腕につけていたのは、1963年に発表された、ref. 6239はロレックスデイトナの最初のモデルです。

左がポールニューマン自身が着用していたモデルと同じもので、右が反対色の黒文字盤のモデルになります。

ロレックス デイトナ Ref.6239 ポールニューマンモデル

ポール・ニューマン自身が着用していたロレックス ref. 6239は、ホワイトダイアルにブラックのクロノグラフレジスタと、レッドのアクセントが対照的な「トライカラー」でしたが、ブラックエキゾチックダイアルにホワイトレジスタとダイアル外周を囲む、レッドのミニッツトラックのモデルも生産されました。

ロレックス Ref.6239 ポールニューマン 黒文字盤

出典:クリスティーズ

両ダイヤルのバリエーションで、6時上のDAYTONAロゴにも赤色が使用され、固定式のメタルベゼルにはタキメータースケールが刻まれています。

1〜3世代のデイトナに搭載されたムーブメント

デイトナですが、当たり前ですが今では自社製キャリバーが搭載されており、その前はゼニス社のエルプリメロを搭載していました。

そして、1〜3世代目までは機械式キャリバーValjoux Cal.72をコンバートしたものが搭載されていました。

この記事をご覧の方は、すでにご存知だと思うのですが一応解説しておくとバルジュー社はクロノグラフムーブメントを作る名門であり、機械式クロノグラフをさまざまなブランドに提供していました。

それはパテックフィリップも含まれます。

このように、ムーブメントはエボーシュメーカーから供給を受け、自社でちょっといじくるというのが、機械式時計時代のクロノグラフの一般的な作られ方だったんですね。

それで、バルジューの2レジスターバージョンの代表作は、Cal.23でありこの23を自社でコンバートされた代表作はパテックフィリップ社のcal.13です。

パテックフィリップ社製 Cal.13

出典:REVOLUTION

だいぶ高級機に仕上がってますが、ベースはCal.23なんですね。

それで、このCal.23に12時間積算計を追加したものがCal.72であり、ロレックス社もこのムーブメントにコンバートを加えて、自社の新しいCal.72Bを作ったんですね。

ではこちらの画像をご覧ください↓

バルジューCal.72とロレックスcal.72Bの違い

ぱっと見ではほとんど一緒なのですが、Cal.72と何が違うのかと言いますと、テンプ受け上に設置されている緩急針を外し、 その代わりテンワに付いているチラネジに歩度調整用のマイクロステラスクリューを加えたものです。 

ロレックス デイトナのテンワに装着されたマイクロステラスクリュー2箇所

ちょっと分かりにくいかもしれませんが、赤丸で囲んでる2箇所がそれに当たります。

他のと比較して、ねじ山が長いのが分かると思います。

テンプの比重バランスを変えて、進みや遅れを調節する方法になります。

ちなみに、テンプを支えるブリッジのところにROWという刻印がありますがこれは(Rolex Werke)のマークであり、このムーブメントがロレックス社によって特別に作られたことを表しています。

キャリバー72Bの生産は、大体1960~67年ごろまでと言われています。

その次に誕生したのが、Cal.722-1になります。

ロレックス社製 Cal.722-1

※ロレックス社製Cal.722-1

基本設計はCal.72Bと同じですが、違うところは強い衝撃が加わった時にヒゲゼンマイがテンプに絡まるのを防止するために、隣のブリッジとの間にプレートが取り付けられています。

生産期間は1967~69年ごろと言われています。

 

その次に誕生したのが、Cal.727になります。

ロレックス社製 キャリバー727

この時に、リファレンスも変更されデザイン、ムーブメントともに次世代(3世代目のことですね)へと進化していきます。

そして、このCal.727がロレックス社が最後までデイトナに搭載させた、機械式クロノグラフのムーブメントであり最高傑作と言われています。

そんな727なのですが基本設計は、722-1と同じですが大きな変更点が2箇所あります。

まず1つ目が、インカブロック社製からキフ社製のウルトラフレックスに進化しているところです。

2つ目が、ヒゲゼンマイが合金製に変更され耐磁性が向上しているところです。

また、前のモデルにあったゼンマイの絡まりを防ぐプレートも外され、素材の進化によって耐久性が向上したムーブメントに変わったのです。

他にも、画像からはわかりにくいですがテンワの直径を少し小さくし、その分を振動数でカバーするために、毎時1万8000振動だったのを毎時2万1600振動まで増やされています。

生産期間は1969〜88年までです。

一般的に自動巻クロノグラフが誕生したのが、1970年代からなので88年まで搭載されていた機械式クロノグラフムーブメントは、古びた感じがしますがこのように進化を続けていた歴史があり、ロレックス社のデイトナのムーブメントは機能面においても、構造面においても素晴らしいムーブメントなのです。 

17億のロレックス時計

ポール・ニューマン自身が、長年愛用したポール・ニューマン・デイトナと全く同じものが2017年にオークションに出品され、為替レートを1ドル100円で換算した場合、1550万ドル(約15億円)の高値がつきました。

バイヤーズプレミアムを考慮すると1780万ドル(約17億円)という計算になります。

1780万円の間違いでは?

と思われる方もいらっしゃると思いますが、15億です。

ポールニューマン本人が使っていた時計だからですね。

売却当時、この俳優のデイトナはオークションで落札された時計の中で、最も高価なものでした。

伝説によると、ニューマンの個人所有のデイトナは、1980年代に彼が娘のネル・ニューマンの元恋人であるジェームズ・コックスに贈ったそうです。

この時計は、2017年にフィリップス・オークションハウスで売却されるまで、彼が所有していたもので、売却額の一部はネル・ニューマン財団に寄付されたそうです。

出所が分かっているから、ポールニューマン本人が使っていた時計という証明ができたんでしょうね。

 

ロレックス デイトナ 6239の価格とまとめ

すでに述べたように、文字盤の色、状態、オリジナルの箱や書類の有無などの要素が、全体のリセールバリューに大きな影響を与えるため、特定のロレックス6239が中古市場でどれほどの値をつけるかを予想するのは、ほぼ不可能です。

ですが、ちゃんとした形の残っている時計であれば、最低でも億レベルになるのは必至と言えるでしょう。

ヴィンテージ・ロレックス・デイトナのポール・ニューマン・エディションは、これまでのところ素晴らしい歴史を誇っており、険しいスタートであっても最後には勝利して終わるという、ロレックスの力強さ物語っていると思います。

 一般的に誰もが買えるという時計ではないことは、間違いありませんがこのようなロレックスの1つのモデルのストーリーを知り、デザインの特徴を理解するだけでも腕時計の幅が広がりますよね。

所有する喜びもありますが、腕時計業界のトップに君臨するロレックス社の1つの代表モデルのヒストリーを知ることで、より腕時計全体を楽しめるようになるのではないかと思っています。