時計の革新を導いたブライトリングのミニコンピューター、ナビタイマー

ブライトリングの人気を長年けん引し続けてきたモデル、ナビタイマー。

ナビタイマーの歴史は1952年に始まります。

パイロットの飛行を補助するために開発されたこの時計には時間を正確に刻むだけでなく計算機能など様々なギミックが盛り込まれました。

 

クロノグラフを搭載した時計の中でも長い歴史とその性能の素晴らしさに裏付けされた人気を誇るナビタイマー。

 

その時計の盤面にはなじみ深いロゴが刻まれています。ブライトリングのロゴには頭文字のBの両サイドに大きい翼があります。このデザインからもブライトリングと空の関わりの強さを感じることができます。

ではどうして航空機用の時計特化していったのでしょうか。

 

今回は発表されたモデルと共に歴史を紐解いていこうと思います。

 

 

 

 

1952年 ナビタイマーの誕生


ナビタイマーは1942年にブライトリングが発表した伝説的モデル「クロノマット」の進化形として作られました。スライド・ルール・バゼルを発展させて誕生したのがナビタイマーなのです。このスライド・ルール・バゼルを搭載することで他の器具を使うことなく、この腕時計一つで飛行時の複雑な計算ができるようになりました。この機能は実に画期的なものでした。その結果、アメリカ空軍をはじめ、多くのパイロットたちの間でナビタイマーが流行るようになりました。

 

ブライトリング ナビタイマー/ 1952年


(画像:1952年発表 ブライトリング ナビタイマー)

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では、ここで少し時間をさかのぼり、ブライトリングの歴史を辿ってみたいと思います。

 

1884年には当時のブライトリング創設者レオンは初めてのクロノグラフを作るために時計産業が盛んだったスイスのサン・イメールにやってきました。そして同年にブライトリング社が誕生しました。初期のブライトリングでは航空機のダッシュボードに使用される時計の開発をメインに行っていました。

 

1915年にブライトリングは自社初のクロノグラフを発表しました。この時計には30分カウンターや中心部に秒針を配置したので、パイロットたちの計算を助ける役割を果たしました。

 

1923年にブライトリングはプッシャーという部品をクロノグラフに初めて取り付けました。そして1934年に会社を引き継いだウィリーが今では定番となっているプッシャーが2つ取り付けられた時計を発表します。これによって計測時のスタートとストップが楽にできるようになりました。そして更なる革新を目論んだウィリーは数学者マルセル・ロバートの助けを借りて複雑な対数方程式の計算を簡単にできるようスライド・ルール・バゼルを発明したのでした。

 

ウィリーが各分野の専門家たちと共同で発明したスケールは実に画期的なものでした。パイロットにとって重要なユニットが3つあります。

 

1 機体のマイレージを計測するための基本的な飛行情報

2 キロメートル(km)の表示 

3 ノット(naut)の表示

 

ナビタイマーではこの要望すべてを叶えたことで航空機パイロット専用の時計として人気を博したのでした。

 

 

パイロットのためのミニコンピューター


1952年に発表した初期のナビタイマーには世界最大のパイロット協会Aircraft Owners and Pilots Association(通称AOPA)のロゴが盤面にデザインされています。これは機械時計の性能が世界的に認められた証と言っても過言ではないでしょう。ブライトリングにとっては栄誉でした。

 

「ナビゲーション」と「タイマー」を組み合わせた言葉から名付けられたナビタイマー。初期のエディションはコレクターの間でも人気の高い時計となっていて、ステンレススチールのものでは10,000ユーロ(約130万円)もすると言われています。これらに搭載されているのはヴィンテージロレックスのデイトナと同じバルジュー72です。このムーブメントの素晴らしさもまた、ファンを惹き続ける要因の一つと言えます。

 

 

1950年代後半になるとブライトリングは時計の性能だけでなく広報やマーケティング面にも力を入れ始めます。ウィリー・ブライトリングはスイスの広報のやり手、ジョージス・カスパリと一緒に才能あるパイロット集団と時計を共同開発するという斬新な手法を取りました。さらに航空会社の正式サプライヤーとなったのもこの頃だと言われています。1957年にはボーイング707のダッシュボード機器を担当しました。