機械式腕時計の歴史を体現したムーブメント、バルジュー22
バルジュー22について
バルジュー22は、機械式腕時計の歴史を体現したような優れた出来栄えを持つムーブメントです。このムーブメントは、1914年から製造が始まり、1974年に製造が終了するまで60年ものあいだ生産が行われていた、伝説的なムーブメントです。
19世紀までは、技術的な問題もあり、世界的に懐中時計の使用が一般的でした。その後、世界的に腕時計が広まったのは1910年代の出来事であり、バルジュー22の生産もその頃から始まります。バルジュー22とその派生品は、元々懐中時計での使用を想定してデザインされた物であり、当時の一般的な腕時計よりも大きな14リーニュ（約31.1ｍｍ）というムーブメントを持っていました。
バルジュー22は、そのような時代背景のもと、腕時計創成期に作られたムーブメントで、40時間の連続稼働が可能な手巻きのクロノグラフです。また、バルジュー22は、世界で最も古い部類のクロノグラフの動力となったモデルでもあります。1970年代にクォーツ時計が登場して機械式時計と競合するまでの間、腕時計のムーブメントとして最も長い期間に渡り活躍してきた歴史を持つ、大変価値のあるムーブメントです。
このシリーズで最も有名なムーブメントは、バルジュー22と同系列である、バルジュー72と呼ばれるモデルです。バルジュー72は、ロレックスやパテックフィリップにも使用されたムーブメントで、これは、バルジュー22から発展して改良、制作されたモデルであり、1938年から製造が開始されて、合計75万個もの数が製造された伝説的なモデルです。
バルジュー72は、基本的に、バルジュー22の2つの秒数計、分数計に、1時間以上の長期計測機能を加えたムーブメントを採用しており、これは、多くの時計メーカーによって幅広く利用される事になりました。
初期のバルジュー22は、1つのプッシャー（注1）が取り付けられていて、それによって、クロノグラフのスタート、ストップ等の操作を行っていました。しかし、その後、1936年からは2つのプッシャーが取り付けられるようになり、現在の腕時計に採用されているような形になりました。それはバルジュー22が生産終了に至る1974年まで続きます。
ある程度時計に詳しい人は、時計に使用されるムーブメントは、自社製品の物が好ましく、そういった時計にこそ価値がある、と考えるのですが、玄人の中には、あえて外部発注されたムーブメントを使用する事に価値を見出す人たちも存在します。そういった所から注目を集めるようになったのが、このバルジュー22というムーブメントです。
様々な時計に採用されたバルジュー22
バルジュー22は、第一線で活躍する有名な時計メーカーのムーブメントにも採用されていて、例えば1954年にフランス軍の使用する腕時計の制作を担当していたブレゲは、ブレゲType20クロノグラフの生産を行います。その時計に使用されていたムーブメントが、バルジュー22でした。
ブレゲは、フランス空軍、海軍等に向けて腕時計の開発を行い、バルジュー22に変更を加えてフライバック機能（注2）を備えたバルジュー222を制作します。
この他にも、バルジュー22は、ロレックスの時計にも使用されていて、1947年のロレックスクロノグラフ Ref.2508には、バルジュー22が採用されています。この時計は、軟鉄を使用していて、磁力の影響を遮断する優れた機能を持っており、このようなバルジュー22をムーブメントに持つロレックスは、数多くの生産が行われました。
このように、バルジュー22は、懐中時計から機械式腕時計への移行が始まった時期に制作されたムーブメントであり、今でも多くの人に愛されています。バルジュー22の搭載された時計を手に取り、その優れた性能を体験してみてください。
（注1）プッシャー：プッシュボタンとも呼ばれる。クロノグラフのストップウォッチ機能をスタート、ストップ、リセットなど操作するボタンの事。
（注2）フライバック機能：プッシュボタンを1回押すだけで最初の時間測定をストップして針をリセットできる機能。プッシュボタンを放すと針は再び作動する。
参考
Valjoux 22
https://www.watch-wiki.net/index.php?title=Valjoux_22
著名な腕時計に搭載されてきたバルジュー22の軌跡
https://www.deployant.com/fearful-symmetry-customising-the-valjoux-22-chronograph/
Valjoux 22
https://www.uhren-wiki.net/index.php?title=Valjoux_22
