ノルウェー探検隊やイスラエル軍の腕時計!エテルナから発売されたコンチキ(スーパーコンチキ)って何が凄いの?
エテルナ社製コンチキについて、動画でご覧になる方はこちらから↓
エテルナ コンチキの由来と防水時計
※トール・ヘイエルダール
1947年、ノルウェー人の探検家『トール・ヘイエルダール』は5人の乗組員とともに、木製のいかだで南米からポリネシアへの旅に出発しました。
彼は、古代にこの2つの地域の文明が接触していた可能性を証明するために、出発したのです。
そのイカダの名前は「コンティキ号」でした。
そして、このコンティキ号の乗組員はエテルナ社の時計をつけていました。
当時のエテルナは、防水ケースを含め、あらゆる機能を備えた数少ないブランドであり、その結果エテルナの時計が選ばれたんですね。
そして、そのイカダの名前をそのまま時計のネームに採用したことによって、エテルナ社から『コンチキ』というモデルが誕生したのです。
このようなイカダなので、かなりの確率で水に晒されるので防水であることは必須でした。
エテルナは防水というイメージはそこまでないと思われますが、実は他社に先駆けて防水時計に力を入れていた会社なんです。
1930年代、エテルナの防水時計への着手は、他のメーカーよりも早くねじ込み式リューズを採用したモデルを発表し、その一部は顧客の手に渡ったものの、あまり売れませんでした。
この頃は、一般市民は時計のことをドレスウォッチとして捉える傾向が強く、機能が搭載された時計というのは、プロフェッショナル向けとして認知されていたので、出すタイミングが早すぎたのかもしれませんね。
その反面エテルナは、防水時計の将来性に確信を持っており、着々と防水時計についての研究を続けていました。
そして、当時としては最先端である防水ケースの基本であった、信頼性の高いねじ込み式裏蓋と、ねじ込み式ではない密閉式リューズを採用することを決定したのです。
よって、防水時計とは言いつつも実際のところはほとんど防水性はなかったんじゃないかなぁと思います。
また、この時の乗組員がつけていたコンチキはどのモデルかが明確になっておらず、色々調べてみたのですが詳細な情報がなかったのでこの時の時計は、この記事でも不明ということで納めさせて頂きます。
ちなみに、オスロにあるコンティキ博物館には、初期の軍用スタイルのロンジンの腕時計が 1 本だけ置かれているそうです。
エテルナの時計について、あまり詳しくないという方はこちらの動画をご覧ください↓
1958年 スポーツモデルのコンチキ発表
探検から11年後の1958年、エテルナは探検を記念して新しいスポーツモデル「エテルナ コンチキ」を発表しました。
文字盤にはラジウム夜光塗料が使用されており、盛り上がったスチールの中には数字が入っており、大型で視認性に優れた三角形のインデックスと大きな針が特徴です。
ケースサイズは、36.5 mmのステンレス製防水ケースに収納され、エテルナのサイン入りゲイ フレアー社製のリンク ブレスレットが標準で付属されていました。
このデザインはコンチキが起源であり、その後数十年にわたり多くのブランドから絶え間なく似たようなデザインが発表され、現在に至っています。
ここでですね、ゾディアックのシーウルフははどうですか!
という声が聞こえてきそうですが、ゾディアックは1953年に初代シーウルフ(Seawolf)を発表しています。
しかし実際には、エテルナのコンチキより前に作られたシーウルフ(Seawolf)のモデルには、そのようなスタイルのダイヤルはなかったようです。
三角形のマーカーを持つ、ゾディアックのシーウルフのデザインは1960年代から完成しており、その頃からカタログで出てくるようになっているんですね。
話をコンチキに戻しますね。
エテルナの防水ケースは、見た目はスタイリッシュでスマートですが、それなりにずっしりとした感じがあります。
裏蓋は「段差」があるのが特徴で、スクリューの工具が入る溝を深くするために、角度のある傾斜があり中央部はフラットになっております。
裏蓋には、コンチキ号を象徴とするイカダのマークが入っております。
ムーブメントは自動巻、エテルナ社製Cal.1414UDが搭載されております。
エテルナマチックが凄いのは、当時の他の自動巻きキャリバーとは異なり、摩擦を減らすために5つのボールベアリングを搭載した構造であり、この設計はスイス時計業界の自動巻の標準設計になったことなんですね。
エテルナのロゴマークも、5つの点があるんですがそれは、5つのボールベアリングに由来するものなんですね。
リファレンス番号
1940年代から1970年代にかけてのエテルナには、T、DT、BDTといった文字列が入るリファレンスナンバーがあります。
TとDTは防水ケースを、BDTは防水ケースとブレスレットを表していました。
そして今回の1958年のエテルナ・コンチキには、130 TTというリファレンスナンバーが付いていました。
これをリファレンスの表に当てはめると、まず「1」はステンレス鋼ケースの意味になります。
2 番目と 3 番目の数字は表には示されていませんが、「30」は特定のケーススタイルを指してます。
ですので、30という数字のケースの形があるということですね。
よってこのref. 130 TTは(ステンレススチールケース、スーパーウォータープルーフ)の意味となります。
本格ダイバーズ専用 スーパーコンチキ
ではここからは、そんなコンチキの本格派ダイバーズウォッチについて解説して参ります。
1960年代になると、スタンダードバージョンと本格ダイバーズ用である回転ベゼルや減圧バルブを備えたスーパーコンチキが誕生します。
第一世代: リファレンス 130 IPT / A
こんな本格的ダイバーであるスーパーコンチキが誕生したのですが、エテルナ社から出たということで人気が爆発します。
この初代モデルのRef.130 IPT / Aになります。
「I」埋め込み式のリューズを示し、「P」は外部ベゼルが取り付けられていることを意味し、「T」は防水ケースを意味します。
初代モデルは、ケースサイズが36.8mmとダイバーズウォッチとしては少し小さめに設計されており搭載されていたムーブメントは、Cal.1414UDの進化系であるCal.1424UDです。
第 2 世代: リファレンス 130 PTX
1962年から発売されたのは、第二世代に当たるリファレンス130 PTXでした。
2代目になると、だいぶ印象が変わります。
変更点はリューズガードが搭載されたケースになったことと、それによってケースサイズが40mmになりダイバーズウォッチらしいアシンメトリースタイルへと変わりました。
ムーブメントはそのまま、Cal.1424UDが使用されました。
第 3 世代: リファレンス 130 FTP / 130 FTT
1967年に誕生した第3世代の外観は、第2世代とほとんど変わりはありませんが、キャリバーはcal.1489Kが搭載されることとなり、名称がスーパーコンチキからコンチキ スーパーに変わりました。
キャリバーが進化したことによって、性能に変化はなかったのですが厚さが5.85mmから5.2mmへとかなりスマートに進化することができたので、それによって裏蓋の厚みがその分薄くなっています。
画像からは少し分かりにくいと思うのですが初代コンチキと比較して裏蓋の段差がかなり無くなってるんですね。
イスラエル国防軍へ納品
ダイバーズのコンチキの信頼性と耐久性の評判は、時計の堅牢性が重要な軍にとっては採用基準の1つの要素でした。
そこでコンチキ スーパーを採用したのがイスラエル政府です。
納品先はイスラエルの精鋭海軍特殊部隊 Shayetet 13(シャイェテット)とIDF(Israel defender/イスラエル国防軍)であり軍の中でも精鋭部隊になります。
私たち日本人からすると、ちょっと遠い国の凄い人たちなんだろうなぁ・・・って感じなので簡単に解説しますと主な任務は対テロ作戦、破壊工作、情報収集、船舶からの人質救出などです。
"シャイェテット"はヘブライ語で"艦隊"あるいは"船団"といった意味で、"シャイェテット13"を日本語に直訳すると第13艦隊となります。
これらの高度な訓練を受けた特殊部隊は、ほとんどがエテルナの腕時計を着用しその任務に当たっていました。
それだけエテルナ社の時計には、信頼性があったんですね。
時計の詳細を見てみると、それまで進化の過程で誕生したリューズガードがなくなり、スタイル的には第一世代に近いように感じられます。
とは言っても、ケースサイズは41mmと大きく厚さも14mmと厚く、おそらく70年代に流行ったドーム型のケースを意識して作ってあるのだと思います。
また、針も変更されそれまでのリーフ型のものから時針は中間が棒で先端だけがスクエアタイプのもの、分針はペンシル針のスタイルになっておりミリタリーウォッチの中でもなかなか見かけないデザインになっております。
夜光塗料もトリチウムから、暗い海底でもより鮮明に潜水時間を把握できるルミナスが使われるようになり、ライムグリーンの部分がそれにあたります。
このスタイルは市販では販売されていなかったようなので、イスラエル軍専用に作られた特別モデルと言っていいでしょう。
とは言っても、この時計はめっちゃかっこいいですよね。
まぁ、手に入れることはほぼ不可能ですが。
まとめ
初期のエテルナ コンチキ ウォッチ、スーパーコンチキ ダイバーズと同様、非常に高いコレクターズアイテムです。
よって残念ながら、これらの時計は高額で取引され特にスーパーコンチキは他のモデルよりも、高くなる傾向にあります。
日本では知る人ぞ知るブランドになってますが、世界の流れを見てみるとこのブランドも将来的には、日本でも手に入らないブランドとして君臨してるのではないかと思います。
例えば、海外ではワイラーや、ワイラーベッタ、トルノーの時計は物凄い高額で取引されてますが、日本はそこまでそれらのブランドについて需要がないように思われます。
ヴィンテージ時計というのは、やはりその作り込みやその背景にあるストーリーがその時計の価値を生み出していると思います。
エテルナの時計のように、本当に良い時計というのはどれだけの時間が立とうとも、人々に自然と求められてしまうのかもしれませんね。