ダイバーズウォッチケース EPSA社のスーパーコンプレッサーとはどんなケースなの?
EPSA社のケースをご存知ということは、もうヴィンテージウォッチ愛好家と言って良いでしょう。
その特徴的なケースから生み出される、デザイン性や機能性はどれだけの月日が経とうとも、普遍的なかっこよさがあります。
本日の記事では、そんなスーパーコンプレッサーについて解説して参ります。
目次はこのようになっております。
1.EPSA スーパーコンプレッサーとは
2.スーパーコンプレッサーはどう見分けるの?
3.デュアルクラウンのケースのサイズは何種類?
4.コンプレッサーとコンプレッサー2とスーパーコンプレッサーの違いは?
最後にまとめとなっております。
それでは早速やって参りましょう。
EPSA スーパーコンプレッサーとは
「スーパーコンプレッサー」は時計ケースメーカーであるErvin Piquerez(エルヴィン・ピケレス) S.A.社(以下EPSA)が製造したダイバーズウォッチ用のケースの商標名です。
『特許の内容』
これは水深にともなってケースにかかる水圧が上がると、その水圧を利用して裏蓋がOリングに押し付けられるという設計です。
水深が上がると必然的に水圧も上がり、密閉度も上がる仕組みですね。
この仕組みは、水圧のない場所ではケースと裏蓋には完全な圧力がかかっていないので、Oリング(裏蓋のゴム)の寿命が延びるというメリットもあったようです。
EPSA社は、シングルクラウン、外部ベゼル、ベゼルなしモデルのケースなど様々作っていましたが、代表作であるダブルクラウンスーパーコンプレッサーに焦点を当ててお話をして参ります。
ケースの特徴なのですが、ダブル(デュアル)クラウン スーパーコンプレッサーのケースはその名前の通り通常、リューズが2つ付いています。
1つ目は通常のリューズとしての役割であり、4時方向にあるものです。
2つ目は2時方向にあるもので、これはインナーベゼルを回す役割があります。
一般的にベゼルは、時計の表面にありますがダイバーズでは、EPSA社が製造したものの様に風防の内側にあるものも存在するのです。
これは、ダイバーの正確なダイブ時間を計測するのに、間違いがあってはいけないからです。
例えば、ダイブ中に時計をどこかにぶつけてベゼルが回ってしまったとすれば、それは残りのダイブ時間が変わるということなので、酸素が先になくなってしまうと人命に関わるからです。
よって、EPSA社のデュアルクラウン スーパーコンプレッサーは2つのリューズがあるのです。
また、リューズの特徴なのですが潜水中でも操作しやすい様に、大きめのリューズが搭載されております。
EPSA社のケースは、一般的に水深666フィート(約200m)まで耐えられる仕様となっています。
非常に高品質で耐水性も高いと評価され、EPSAは1950年代後半から、1970年代半ばに倒産して閉業するまで、様々なデザインのスーパーコンプレッサーを製造してきました。
当時製造されたものが現在でも使用できることから、その品質の高さがうかがえます。
スーパーコンプレッサー は全てインナーベゼルなの?
それは違います。
コンプレッサーが指しているのはケースを封じる機構のみで、他の特徴は関係ありません。
一般的にはデュアルクラウンが多いですが、スーパーコンプレッサーを備えていながらシングルクラウンであるケースもあります。
「デュアルクラウンモデルの大きなケースが「スーパーコンプレッサー」と呼ばれ、小さなケースの場合は単に「コンプレッサー」と呼ぶのでしょうか?」というのも間違っています。
スーパーコンプレッサーは全てねじ込み式の裏蓋なのか?
多くはその通りですが、そうでないもあります。
エニカ向けに製造されたスーパーコンプレッサーについては、例外的にねじ込み式の裏蓋ではありません。
エニカ向けのものは、カメラのレンズを取り付ける方法と似たバヨネット式の裏蓋です。
エニカについて、あまり知らない方はこちらの動画で詳しく解説しておりますので、興味のある方はご覧ください↓
スーパーコンプレッサーはどう見分けるの?
※ EPSA社のスーパーコンプレッサーを表す刻印(サイン)
EPSAスーパーコンプレッサーの時計は、裏蓋であったり他の場所の場合もありますが、潜水ヘルメットのマークが刻まれているのでそこで見分けがつきます。
ほとんどのデュアルクラウン スーパーコンプレッサーの時計は(全てではありませんが)網目状の線が入ったリューズになっており、これをクロスハッチングマークと言います。
このマークの上に、メーカーのサインが入っているものもあります。
例えば下の写真はエニカのリューズですが、エニカのロゴがクロスハッチングマークの上から描かれています。
下記の画像はIWCのアクアタイマーですが、こちらはクロスハッチングマークがなく、魚のようなマークが描かれています。
また、ねじ込み式の裏蓋であれば、裏蓋の縁の中にばね部品が入っているはずです。
EPSAスーパーコンプレッサーの特許番号も載っており、ねじ込み式の裏蓋の場合はBREVET 317537とBREVET 337462、バヨネット式の(エニカのケースの)裏蓋の場合はCASE 2342 8-65 もしくはBREVET 314962という番号が書かれています。
デュアルクラウンでインナーベゼルの時計は全てEPSAスーパーコンプレッサーか?
違います。
似たような仕様の時計が多くのメーカーから出ています。
デュアルクラウンかつインナーベゼルの時計で、EPSAの作るケースに非常に似ているものもありますが、他社のものは裏蓋にスーパーコンプレッサーの技術が使われていません。
最近、デュアルクラウンのレプリカの時計が散見されます。
こうした時計には、網目状の線の入ったデュアルクラウンやインナーベゼルといったスーパーコンプレッサーに見られるデザインがたくさん使われていますが、現代の新興メーカーによるレプリカであり、本物のスーパーコンプレッサーではありません。
デュアルクラウンのケースのサイズは何種類?
一般的なサイズとしては、大きいデュアルクラウンのケースは42mmラグは22mm、小さなデュアルクラウンのケースは36-37mmラグは18-19.5mmになります。
こうやってみてみると、小さい方でも充分に大きいですよね。
42mmのケースを採用している代表的なモデルとしては、ロンジン社のレジェンドダイバーやユニバーサルジュネーブのポールルーターサブがあります。
37mmのケースを採用しているのは、IWCのアクアタイマー、ベンラスのウルトラディープ、ハミルトンのアクアデイトがあります。
また少数ですが女性向けの、デュアルクラウン スーパーコンプレッサーもあり、これは26mmです。
デュアルクラウン スーパーコンプレッサーを使用したメーカーは?
デュアルクラウン スーパーコンプレッサーのケースは非常に人気で、JLC、ゼニス、ロンジンといった有名なメーカーから、比較的知名度の低いメーカーまで、数多くの時計メーカーに使用されていました。
下記は、デュアルクラウン スーパーコンプレッサーのケースを使用していたことが分かっている企業のリストです。
Alpina(アルピナ)
Baylor(ベイラー)
Benrus(ベンラス)
Blancpain(ブランパン)
Bucherer(ブヘラ)
Buler(ビューラー)
Bulova(ブローバ)
Clarna(クラーナ)
Consul(コンサル)
Cupillard Rieme
Delvina(デルビナ)
Droz(ドロー)
Duval(デュバル)
Duward(デュワード)
Edox(エドックス)
Enicar(エニカ)
Exona
Felca(フェルカ)
Fortis(フォルティス)
Girard Perregaux(ジラールペルゴ)
Glycine(グライシン)
Hamilton(ハミルトン)
Invicta(インビクタ)
IWC(アイダブリューシー)
Jaeger-LeCoultre(ジャガールクルト)
Lagonda(ラゴンダ)
Le Cheminant(ルシェミナン)
Lip(リップ)
Longines(ロンジン)
Lusina(ルシーナ)
Milber(ミルバー)
Nivada Grenchen(ニバダグレンヒェン)
Olma(オルマ)
Onsa(オンサ)
Orsa(オルサ)
Precimax(プレシマックス)
Renis(レニス)
Rona(ロナ)
Solix(ソリックス)
Titus(タイタス)
Suter(スーター)
Talis(タリス)
Technos(テクノス)
Tissot(ティソ)
Universal Geneve(ユニバーサルジュネーブ)
Unver(アンバー)
Wittnauer Geneve(ウィットナージュネーブ)
Zenith(ゼニス)
ZentRa(ツェントラ)
これらに共通して言えることは、どのブランドの時計も全てEPSA社のケースを使ってダイバーズウォッチを作ってあるのでかっこいいということです。
コンプレッサーとコンプレッサー2とスーパーコンプレッサーの違いは?
コンプレッサーとコンプレッサー2は、ともにスナップによるはめ込み式の裏蓋です。
コンプレッサー2については円形ではなく、角のあるケースになっています(例:四角、クッション型、トノー)。
コンプレッサーとコンプレッサー2も防水ですが、一般的に「ファッション向け」の時計に使われるものであり、ダイバーウォッチとしての防水の設計ではありません。
例外として、トリプルクラウンのコンプレッサーケースを使用した、ジャガールクルトのポラリスがあります。
これに対しスーパーコンプレッサーは、バヨネット式の裏蓋を採用しているエニカの時計を除いて、ねじ込み式の裏蓋を使用します。
スーパーコンプレッサーは、シングルクラウンでもデュアルクラウンでも使用されます。
デュアルクラウン スーパーコンプレッサーのケースの部品はどこで入手可能か?
デュアルクラウン スーパーコンプレッサー専用の重要な部品の多くは、見つけることがほぼ不可能です。
クリスタルはケースのデザインごとに異なりますが、そのデザインが非常に数多くあります。
インナーベゼルはクリスタルとテンションリングで位置を保っていますが、これも専用に作られた部品です。
市販の汎用性の高いクリスタルを合わせることもできるという事例も聞いたことはありますが、満足のいく出来にはならないようです。
ベゼルを回転させるスターギアは入手不可能です。
網目状の線が入ったリューズも入手不可能です。
市販のリューズで代用することは可能ですが、正規のリューズを使用していない時計は価値が下がります。
デュアルクラウン スーパーコンプレッサーの購入を検討する場合には、部が完全に揃っていて正しく動くことを確認するようにしましょう。
部品が足りない購入してしまうと、必要な部品を入手するために、その部品のついた時計を(それも複数)購入しなければならないこともあるかもしれません。
特許番号
スーパーコンプレッサー、ねじ込み式裏蓋、デュアルクラウン/シングルクラウン、全サイズ
BREVET 317537
BREVET 337462
スーパーコンプレッサー、バヨネット式裏蓋、デュアルクラウン、全サイズ
BREVET 314962
コンプレッサー、スナップ式裏蓋
BREVET 313813