動画でタンク アメリカンの歴史をご覧になる方はこちらから↓
このコレクションでは、男性視点での『歴代タンク アメリカン進化論』ということについて、解説して参ります。
カルティエのメンズウォッチの中でも、サントスに次ぐ人気を誇るのがアメリカンだと思われますが、アメリカンの歴代コレクションを見ていくと、現行にはない素晴らしいモデルがたくさんがあります。
この動画をご覧頂くことで、アメリカンの知識が深まると思いますし、廃盤になってしまったモデルも含めることで、幅を持って時計を選べるようになると思いますので、是非とも最後までお付き合いくださいませ。
タンク アメリカンの進化の歴史
「タンク」や「サントス」など、カルティエのデザインの多くが20世紀前半に誕生したのに対し、「タンク アメリカン」の誕生は1989年と新しいモデルなのです。
しかし、アメリカンの原型であるサントレも含めて見ると、また見え方が変わってきます。
こちらがムディバニ王女のために描かれたデッサン画なのですが、実はアメリカンの前に、サントレというモデルが存在しそのサントレは1921年に誕生しています。
では、サントレと現行のアメリカンの違いを見てみましょう。
ベースとなる形は同じなので、基本的に変わりはありませんがサントレは、針がブレゲ針であるのに対して、アメリカンはペンシルハンドになっています。
リューズのカボションの形状も、アメリカンはカットしてあるのに対してサントレは砲弾型のリューズが取り付けられています。
そしてこちらは1950年代に誕生したサントレなのですが、針とリューズのデザインが変更されかなりアメリカンに近づいてるのが分かりますよね。
元々のデザインは「タンク・サントレ」をモデルにしていますが、当時は大型時計の人気の高まりに伴い、より大胆なサイズで作り直されたのでした。
そして、サントレ、アメリカンともに共通しているのがケースが湾曲して作られていることです。
タンク アメリカンはケースの延長によって得られた長さを使い、手首の形にフィットするようにケースは湾曲された形になっています。
このように、『タンク』に出来なくて『タンク サントレ』や『タンク アメリカン』に出来ることはこの『湾曲』だったんですね。
デザインは何年もかけて微調整され、様々なムーブメント(クォーツ、手巻き、自動巻き)が搭載されましたが、アメリカンの基本的な形は変わっていません。
ではここからは、歴代のアメリカンの進化の歴史を見ていきましょう。
1990年代のタンク アメリカン
「タンク アメリカン」が発表された当時は、クォーツ・ムーブメントを搭載した2モデルがイエローゴールドとホワイトゴールドで市場に送り込まれました。
90年代の終わりくらいまで続いていた、クオーツウォッチのブームのために、クオーツムーブメントが搭載されているんですね。
では、下記の画像をご覧ください↓
Ref.811905(スモールセコンド、3時位置に日付表示窓、クォーツ・キャリバー)
1つ目は、スモセコ&日付表記のあるモデルになります。
90年代に流行ったデザインで、シンプルさを追求するカルティエでさえも、文字盤の中にスモセコとデイトが配置されています。
しかし、クオーツムーブメントが搭載されているので、自動巻を乗せた時のように厚さはなく、アメリカンであったとしてもスタイリッシュにまとまっているんですね。
Ref.819908(ポインターデイト、ムーンフェイズ、クォーツキャリバー)
こちらが2つ目のムーンフェイズモデルですが、こちらも90年代に多く見られたデザインで、様々なブランドから出されていました。
3針で構成されており、1つの針は日付を表示するように設計されています。
今ではあまり見かけることがなくなりましたが、当時は文字盤で月相の様子が分かるムーンフェイズはおしゃれな腕時計として認識されていたんですね。
このように初代の『アメリカン』は私たちが知るアメリカンの原型とは少し違いますが、タンクより長い長方形のスタイルは、タンク アメリカンであることを感じさせますよね。
そして、ここから本格的にアメリカンの実力が発揮されていくことになります。
1990年代初頭の特別なタンク アメリカン
1998年から2008年まで、カルティエの歴代モデルを再度現代的にアレンジしたコレクションとしてCPCP(コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ)のラインが発表されるのですが、その前にアメリカンはベースモデルが誕生します。
では実際の時計を見てみましょう↓
1990年代に入ると、クオーツ一辺倒だった市場のニーズからだんだんと、機械式が求められるようになってきました。
そして、そのニーズに答える形で誕生したのがホワイトゴールドのケースで作られたタンク アメリカンでした。
搭載しているムーブメントを見てみましょう。
この頃になると、リシュモングループに種族していた事により、グループ内の技術を提供して貰えるなっていました。
そこで超薄型ムーブメントの製造を得意とするピアジェ社から、Cal.9Pを提供してもらい少しだけコンバートさせてCal.9P2を搭載させたのでした。
ちなみに、こちらのムーブメントは厚さは2mmしかなく、本当に極薄なんですね。
よって、腕時計自体も薄くスリムに作られています。
デザインはシンプルな2針で、文字盤にはギョーシェ彫が施されています。
CPCP時代に作られたアメリカンを見てみよう
では、CPCP時代に作られたアメリカンを見てみましょう。
CPCPコレクションの中では、18Kイエローゴールドとプラチナの素材が採用されました。
CPCPコレクションの中で作られたアメリカンですが、その前に作られていたRef.1736とほとんど変わりはありません。
Ref.1736との違いは、CARTIERのロゴの下にPARISのロゴが入ったことと、ムーブメントがCal.430MCに載せ替えれたことです。
Cal.430MCも手巻きであり、極薄ムーブメントが引き続き採用されました。
一般的にCPCPコレクションで作られた作品というのは、分かりやすいので現在では超高額で取引されていますが、少しずらして見ることで、それ以前に作られたRef.1736は作りはほとんど同じであるのに、あまり知られていない名品だというのが分かるんですね。
2000年代半ば以降のタンク アメリカン
2000年代半ばになると、CPCPコレクションのタンク アメリカンは終わり、一般ラインで誕生します。
その特徴は、外観はデザインはほとんど継承されていますが、唯一違う部分は6時位置に日付表示が入っていることです。
また、ムーブメントに自動巻が搭載され始めます。
では実際の時計を見てみましょう。
ケースのサイズもほとんど同じで、素材も18Kのイエロー、ホワイトゴールドが採用され、文字盤は引き続きギョーシェ彫が継承されています。
1番右の黒文字盤のモデルですが、こちらは限定モデルであり数が2つのモデルと比較して少ないです。
ギョーシェ彫も一般的なサンバーストタイプではなく、ハニカムダイヤルのような装飾になっていますし、インデックスもアラビア数字で表記してあるので限定モデルらしいデザインになっていますよね。
では、搭載されていたムーブメントを見てみましょう。
外観はCPCP時代のモデルとほとんど同じではありますが、CPCPで作られたコレクションとは明確に区別するために、比較的安価に購入することが出来たETA社のムーブメントが搭載されています。
搭載ムーブメントはCal.2000でこのムーブメントを搭載することで、アメリカン自体の値段も抑えることに成功したのです。
とは言っても、今となってはこれらのモデルも廃盤になってしまっており、超高額で取引されているのが現状です。
2017年にモデルチェンジが行われるのですが、この頃に作られたアメリカンは今でいうメンズ版ベニュワールみたいなポジションだったので、素材は全部高級素材でサイズもXLサイズやダイヤモンドモデルなど、かなりのラインナップが展開されていました。
廃盤になってしまったアメリカンについては、こちらの動画で詳しくまとめておりますの気になる方はご覧ください↓
そして、ここから私たちが知る現行のラインにつながっていくことになります。
2017年からのラインナップ
2017年になると、アメリカンの素材が見直されそれまでは高級素材でしか作られてこなかったのが、ステンレスモデルが誕生することになります。
その事により、価格も大きく下がり手が出しやすいモデルへとなりました。
ただし、メンズラインは旧モデルから比べると、サイズも素材も少なくなっており、選ぶ幅がかなり狭まっています。
とは言っても、この前まではLMサイズはステンレスしかなかったものが、つい最近ピンクゴールドが追加されていますので、今後サイズも素材も増えていくのではないかと考えられます。
デザインを見てみると、モデルによって日付表示があったりなかったり、3針だったり2針だったりなど、その時計に合わせて少しづつスタイルを変えてるような印象が見受けられます。
まとめ
最後にまとめなのですが、アメリカンはほとんど原型から崩れることなく、現行ラインを迎えています。
それだけこのデザインが親しまれているということですし、今後もこの流れは続いていくと思われます。
高級モデルから、手が届きやすい価格帯になりましたが歴代のタンク アメリカンを見てみると、中古でも素晴らしいモデルがたくさんあることが分かって頂けたかと思います。
新品も中古も含めて、時計を見ていくとより選択の幅が広がり自分の理想的な腕時計に近づけるのではないかと思いますね。