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タンク バスキュラントの歴史と魅力
カルティエには、タンクやサントスなど有名なモデルがありますが歴史を振り返ってみていくと、様々な素晴らしいデザインのものに出会えます。
そして、ここでお話しさせて頂くのは、『バスキュラント』というモデルでありカルティエの代表的な時計ではありませんが、独創的でスタイリッシュな知る人ぞ知る最高傑作と言えるでしょう。
エレガントでありながらも、ミステリアスなこの腕時計の魅力はどこにあるのでしょうか。
この記事を読み終わった頃には、バスキュラントの歴史や種類、魅力を充分にご理解して頂けると思いますので、是非とも最後までお付き合いください。
タンク バスキュラントとは?
バスキュラントが誕生したのは、1932年とかなり昔からこのモデルは存在していました。
当時のカタログでは、「タンク・カブリオレ」、「リバーシブル・バスキュラント」などとも呼ばれており、正式に『バスキュラント』と命名されたのは復刻版として誕生した1999年になってのことでした。
バスキュラントとはフランス語でコンバーチブル (英語: convertible) を意味し、傾くやひっくり返すという意味を持ちます。
文字盤を上下反転させる機構を持っていることから、このように名付けられました。
その構造は、12時位置にある青いカボション部分を上に引っ張ると、アームが伸び、文字盤を縦方向に回転させることが出来ます。
なぜこのような時計が誕生したのかと言いますと、腕時計はこの頃はまだ貴族やブルジョワジーなどの富裕層が身につける特権的なアイテムでした。
そんな貴族の上品なスポーツは『ポロ』『テニス』『ゴルフ』であり、スポーツをしてる最中に腕時計の文字盤にある風防(ガラス面)が壊れることを防ぐために、プレイ中は反転させて使用することが出来る腕時計が求められていた背景があるからなんですね。
この頃に使用されていた、ミネラルガラスはかなり強度が弱かったために、文字盤を衝撃から守る必要があったのです。
文字盤の反対側は、平面になっておりその部分には貴族の家系を表すイニシャルなどが彫られていました。
バスキュラント誕生の秘話
しかし、ここに出てくる疑問がこの形は別ブランドでも見たことがある様な。
ということだと思います。
そうですジャガールクルトのレベルソも、同じようなスタイルになっていますよね。
ちなみにレベルソはラテン語になります。
反転する向きは違えど、カルティエ社がレベルソを真似て作ったわけではありません。
実はカルティエとジャガールクルトには、密接な関係が昔からあり1907年には時計に関する独占契約を結び、1909年には2社でデプロワイヤントバックルの特許も取得しています。
デプロワイヤントバックルについての詳細はこちらから↓
このような深い関係があった2社でしたので、1931年にレベルソが誕生した翌年にカルティエ社からも、リバーシブル機能が搭載された腕時計が発売されたのです。
よってケースはレベルソと同じ会社が製造していました。
※ここまでの内容はフランコ・コローニ氏の著書 カルティエ伝説の時計タンクからの引用になります。
そんなバスキュラントですが、1999年に復刻されるまでに製造は続けられていましたが、このような複雑な機構を持つために、簡単に製造出来るはずがなく残っている数もかなり少ないのが現状です。
復刻される前のモデルでは、18Kのゴールドでケースは作られていました。
特別な復刻モデルの誕生
1997年のカルティエ創業150周年を記念して、バスキュラントの限定モデルを発表しました。
ルビー・カボションと文字盤中央のギョーシェ彫が特徴で、カルティエの標準的なサンバーストタイプのギョーシェ彫文字盤とは異なります。
こちらのモデルは18Kゴールドのケースで作られ、150本限定でしか作られていないなかなかお目にかかることの出来ないモデルとなっております。
その後、CPCP(コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ)の中でも2種類が復刻され伝統的なスタイルを残しつつも現代的なサイズで復活されました。
CPCPのことについては、こちらの動画で詳しく解説しておりますので気になる方は、こちらの動画もご覧ください↓
では、それぞれの時計を見てみましょう。
(左)365本限定で製作されたRef.2391 (右)ディスプレイケースバックRef.2499C
Ref.2391は18Kイエローゴールド製で、1999年に365本限定で発表されました。
Ref.2499Cも18Kイエローゴールド製で、2000年代初頭まで製造されておりケースバックがスケルトンになっています。
CPCPですので、すべてのケースバックに個別の番号が付けられています。
では、それぞれの違いを見てみましょう。
一見すると違いが分かりにくいですが、文字盤の裏が1999,2000,2001のイニシャルになってるか、ムーブメントが見えるようになってるかの違いです。
バスキュラントは、文字盤も回転するしその外枠も回転します。
外枠はCartierの刻印と個別No.が入ってる方の背面ですね。
これらのCPCPで展開されたバスキュラントに共通する点は、それぞれ同様のサイズであり38mm x 25mm x 厚さ5.8mmで、フレデリックピゲ社によって製作された超薄型ムーブメントCal.610(カルティエ社の場合はCal.060 MC)を搭載していることです。
ムーブメントには装飾もあり「ダブルC」のモチーフが連続して施してありますし、ケースの土台にも同じ装飾が入っており非常に手が込んで作られているのが分かります。
どちらも素晴らしくカッコいい時計なのですが、やはり男性目線でいくとムーブメントが見えてる方に軍配が上がるのではないでしょうか。
1999年にステンレス素材を使いメインラインへ展開
1999年になるとバスキュラントを特別なコレクションだけでなく、通常商品のラインナップに追加されその時に、誰もが手が出せるよう素材を見直しオールステンレスで製造されました。
搭載ムーブメントは、CPCPで展開されたゴールドモデルと同様、フレデリックピゲ社のムーブメントが搭載されています。
CPCPでは手巻きムーブメントだけでしたが、ステンレスモデルにはクオーツムーブメントモデルも準備され、サイズもレディースサイズが展開されました。
1999年から始まったバスキュラントですが、メインラインのステンレスモデルも2006年頃に生産が終了し、今では廃盤となっております。
まとめ
機械的な動きでミステリアスで、見た目もスタイリッシュなカルティエらしい素晴らしいモデルです。
腕時計としても使えますし、長時間のデスクワークをする時には文字盤を起こして、卓上時計としても使用することが出来ます。
なかなかそのような使い方は、現代ではないのでしょうがデジタルが進んでいるこの現代において、アナログな部分を大きく締めるこのバスキュラントは、大人の男性の嗜好を満たしてくれるのではないでしょうか。